登山のスキルを高めたい!そんなときは“山のプロ”にお任せ
登山を続けていると、「もう少し難易度の高い山に挑戦したい」「山のいろんな楽しみを味わいたい」という想いがわいてくるもの。実現のためには知識や技術の習得が欠かせません。
登山に詳しい人が身近にいない場合は、ガイド登山を依頼したり、講習会に参加したりするのもひとつの手です。必要なスキルはもちろん、その山や土地の歴史、植生についても学ぶことができるので、山の楽しみ方が広がります。
そうはいっても、誰にお願いしたらいいのか、どんな講習会に参加したらいいのか悩んでしまうことも。
そこで当企画では、自分の目標や目的、趣味趣向にあったガイドさんを見つけられるよう、さまざまなタイプのガイドさんにフィーチャー。今回は登山専門メディアでライターとしても活躍する、木元ガイドを紹介します。
木元康晴(きもと やすはる)
“お客様のため”のガイドであり、“山のため”のガイドであれ
木元ガイドが所持している「登山ガイドステージⅢ」の資格は、一般登山道のほかに破線で示されたコースも活動エリアに含まれる、登山ガイドの最高ランク。木元ガイドは、その登山ガイドステージⅢの第1号であり、自身のガイドプランでも岩山のルートを得意としています。
岩山のガイドと聞くと「厳しいことを言われそう……」と思うかもしれませんが、木元さんが心がけていることは、お客様とコミュニケーションを取り、山に登る楽しさを最大限に伝えること。その想いからは、真摯にガイド業に向き合う姿が垣間見えます。
お客様を尊重すること
お客様に楽しんでいただくこと
山の基本を守ること
活動の様子を拝見!
岩山コースのガイドを得意とする木元さんは、岩登り講習会やナビゲーション講習会など、登山者のスキルアップを目的としたプランも企画。
さらに、雪山登山に向けたピッケルの使い方やアイゼンワークを学ぶ講習会も開催しています。スキルアップをめざして、ぜひ参加したい内容です。
木元さんが企画したガイドプラン
参加者は2名から5名程度(行き先の難易度によって変わります)で、主に岩場、鎖場がある山を案内します。難易度の高いコースでは、ロープも積極的に使い、参加者の安全を確保して登ります。
また、12月から5月の間は、岩場の少ない雪山を案内するプランも実施。年に数回程度は、サブガイドが1~2名同行した上で、10人程度で山歩きを楽しむプランも計画します。
岩登り講習会
参加者は1名から4名程度で、毎年10月から5月の間、月に1回程度実施。東京近郊の岩場に向かい、ロープワークの講習会も兼ねた、岩場の登り下りの練習を目的とした講習会を行なっています。
ロープで参加者の安全を確保しますが、クライミングではなく、あくまでの登山のための練習です。
ナビゲーション講習会
参加者は2名から5名程度で、毎年10月から5月の間に、全部で2~3回程度実施。東京近郊の低山に向かい、地形図の読み方とコンパスの使い方を練習しつつ、山でのナビゲーションの講習会を行なっています。
雪山技術講習会
海から山、そしてガイドへ。
活動内容や公式サイトのプロフィールを読む限り、木元さんは根っからの山好きのように思えますが、実はもともと海が大好きだったとか。海が好きだった木元青年が、どうして山に登るようになり、果てにはガイドとして独立したのか。紆余曲折の経歴を聞きました。
——山登りをはじめたきっかけは?
しかし、秋になると水は冷たく、クラゲも出てくるので泳ぐのは無理。そこで、海がダメなら山に行こうと考えて、奥武蔵の伊豆ヶ岳に向かったのが最初に登った山でした。
その1年半後。友人に誘われて、今度は雪が残るゴールデンウィークに、八ヶ岳主峰・赤岳をめざしました。
私も友人も雪山の知識は皆無で、装備もほとんどなし。それでも何とか登頂して下山したのですが、その体験は強烈でした。本格的に登山を志すようになったのは、そのときからです。

しかし、そのとき42歳で、転職するには年齢が高いうえ、そもそも鳥取県には求人が少ないという事情もあり、なかば追い込まれるように、ガイドという職業を選択した感じでした。
それから、実際にガイドとして独立したのは2009年4月。最初は苦しい状況が続きましたが、鳥取県の山仲間の皆さんの支えもあって、何とか仕事を続けていけるようになりました。

——転職を決意したとき、ベースとなる山行経験をすでに積んでいたのでしょうか?
それから、ガイドになる前にいくつかの山小屋でも働きました。山小屋の仕事は想像以上に忙しく、そのときお客さんを伴って泊まりにくるガイドさんが自由そうで羨ましく思ったことを覚えています。
ガイドになってからは海外の山にも挑戦しました。2013年7月上旬に向かったマッターホルン(4478m)は、国内のガイド業の繁忙期を避けて計画したため、中途半端な残雪に苦しめられて敗退した悔しい思い出があります。それに懲りて、2015年に向かったアメリカのレーニア山(4392m)は、ガイドの仕事をすべて断って8月に計画し、無事登頂することができました。

このときは、関東や東海地方にお住まいの参加者が、各自で飛行機や列車、高速バスなどを利用して、ベースになる米子市に集合。
前夜は皆さん一緒に山陰の海の幸を味わって、翌日、夏山登山道から大山に登頂。天気は最高、山の手応えも十分、食べ物もとても美味しくて、思い出に残る登山となりました。

ライター業にも勤しみ、たまの休日は猫カフェへ
木元さんは山岳ライターとしても活躍中。登山専門雑誌への寄稿のほか、これまでに自身の著書も多数出版されています。
——どうしてライター業も行っているのでしょう?
コースガイドを中心に、各種How to、遭難分析、書評、インタビュー物など、携わった雑誌記事は多数。書籍も、自分で書いた新書3冊のほか、共著書や電子書籍も含めると10冊ほどに携わっています。
現在も、この夏に出版予定の書籍の原稿執筆をしている真っ最中です。


——ガイド業とライター業を兼務されていて、とても忙しそうです……。

一言で語り尽くせない山登りの魅力
——最後に、木元さんが思う登山の魅力を教えてください。
スポーツとしての魅力もあり、体に負担のかかる地形を、上手く体をコントロールして登っていくことに面白さを感じます。心肺機能のコントロール、岩場での動作、雪山でピッケル・アイゼンをコンビネーションさせて急峻な雪壁を登下降するときなど、動作そのものに心地良さを感じます。
ほかに、ゲーム的な面白さも感じます。例えば名作ゲーム『ドラゴンクエスト』などで、断片的な情報から知られざる街だとか祠だとかを探していくのに近い感じで、地図を読み、コンパスを使って(今はスマートフォンですが)、目的のコースをたどることに喜びを感じます。
そして、登山のもっとも面白いのは、環境の厳しいところで行なうということかと思います。天候、標高、地形などの要因に加えて、自分自身の体調も考えなければならず、さらにある程度は運にも左右されるので、予定通りに計画したコースを登れたときには幸せな気分になります。
登山の対象となる山もコースもたくさんあって、非常に奥が深いという点も魅力でしょう。私は人一倍数多くの山に登ってきたつもりですが、それでも未踏の山はまだまだたくさんあって、初めての場所に行くと今でも新しい発見をすることが多くて驚きます。

木元さんより、山好きのみなさん&登山を始めたい人へ