登山計画書にある《エスケープルート》って何か、きちんと説明できる?

2019/07/12 更新

登山計画書を作成する時、必ず目にする「エスケープルート」の文字。詳しく知らないからなんとなく空欄にで提出していた、なんて人もいるのではないでしょうか?今回はそんなエスケープルートの意味や選ぶ時のポイントを登山ガイドの木元さんに教えてもらいました。ポイントを抑えてエスケープルートを選ぶことができれば、もっと安全に登山を楽しめるようになりますよ。


アイキャッチ画像作成:YAMA HACK編集部

登山計画書で目にする謎。”エスケープルート”とは?

登山計画書
出典:PIXTA
登る山を決めて、行動計画を考えたら、次に作成するのが登山計画書。エクセルやワード形式、WEBで申請可能なものなど、いろいろな登山計画書のフォーマットがあります。

基本的にはどれを選んでも問題ないのですが、どのフォーマットでも目にする謎の項目が・・・。

”エスケープルート”ってなんだ?

エスケープルート
作成:吉澤英晃(長野県のHPからダウンロードできる登山計画書の一部。どのフォーマットにもエスケープルートを記載する箇所は必ず設けられている)
登山をしていなければ、まず聞かない言葉。今まで目にしていたけど、よく分からないから実は空白で提出していました、なんて人もいるのではないでしょうか?

今回は登山計画書にある謎の項目「エスケープルート」の意味や選ぶポイントを登山ガイドに教えてもらいました。

教えてくれた人:登山ガイド、木元康晴さん

木元ガイド
提供:木元康晴
日本山岳ガイド協会認定、登山ガイドステージⅢ。関東近郊の山から日本アルプスまで、全国各地の山を案内する少人数制のガイドプランに人気がある。登山ライターとしても活躍しており、『山岳遭難防止術』(山と渓谷社)など著書も多数。
木元ガイド公式HP

予定外の状況で行動をスムーズにするエスケープルート

出典:PIXTA(夏のシーズン、日本アルプスなど特に標高が高い山は午後になると天候が急変しやすい)
登山計画をたてる時は、大前提として「登山中は天候不良や体調不良などのトラブルが起こりうる」ということを頭に入れておきましょう。
登山中のトラブル
作成:YAMA HACK編集部
腹痛や捻挫などの身体的トラブル、雷などの天候トラブル、クマの出現やスズメバチの巣などの動物との遭遇、その他にも道具の故障や水分不足、登山道の崩壊などキリがないくらい様々なケースが考えられます。
木元ガイド
このような何らかの理由で予定のルートを歩くことを中断し、すみやかに下山したい状況が発生する場合があります。

そういう状況を想定して、計画の段階であらかじめ下調べを行い、予定していたルート上から分岐する下山路となり得るルートを決めておくことが大事です。そしてこの下山路となるルートがエスケープルートになります。

計画時の下調べが素早い判断につながる!

登山 現地判断
出典:PIXTA(現場ではルートの状況までは把握できない)
予期せぬ事態は、いつどこで起きるか分かりません。現場でその都度判断してはいけないのでしょうか?
木元ガイド
現場で適宜判断して予定ルートから外れて下山するということもあり得ます。ですがルートの状況を把握しづらく、道迷いなどの危険性も高まるのであまり望ましいことではありません。

計画時にエスケープルート決めておけば現場で容易に判断することができるため、計画時に設定しておくことがベストです。

遭難時の発見の可能性をグンと高める

遭難救助
出典:PIXTA(エスケープルートが登山計画書に記載されていないと、捜索範囲が広域になってしまう)
素早い判断を下すため、さらに遭難時の早期発見の可能性を高めるためにもエスケープルートは計画段階から下調べを行い、登山計画書に記載することが大切なようです。
木元ガイド
計画の段階で決めて登山計画書に記載しておけば、万が一エスケープルートを下っている際に遭難して、連絡がとれない状況に陥ったとしても、早期に発見される可能性が高まります
 
【まとめ】エスケープルートを決めることはメリットしかない!
▼ルート変更が必要な時も、安全な下山ルートを素早く選択することができる
▼行動の予測ができるので、遭難時の捜索もスムーズになる

ポイントを押さえてエスケープルートを選んでみよう!

「エスケープルート」について理解したところで、次に選び方についてポイントを紹介します! ここをしっかり押さえて、適切なエスケープルートの選び方を学びましょう。

参考にするのは登山地図やガイドブックがおすすめ!

登山地図やガイドブック
撮影:吉澤英晃(山と高原地図やガイドブックが参考になる)
木元ガイド
①登山地図を見て予定ルートをたどり、スタート地点から下山地点までを見渡す。
②分岐ルートをチェックして、その中からエスケープルートを選択する。
この時には併せてガイドブックや、ヤマレコなどの登山記録も見てルートを確認するといいですね。

「登山地図を見て」とありますが、「地形図」ではダメなのでしょうか?

地形図
出典:国土地理院(北八ヶ岳、根石岳付近の地形図。徒歩道以外の線も細かく記されているのでエスケープルートを選ぶには不向き)
木元ガイド
地形図だと、登山者が歩くのには向かない私道や作業道、廃道なども「徒歩道」として記されている場合があります。なので、エスケープルートを選ぶ資料としては地形図は不適です。

山頂や峠、宿泊先の前後が選定ポイント

エスケープルート選びのポイント
作成:吉澤英晃
スタートからゴールまでの間でやみくもにエスケープルートを選ぶのではなく、選定にあたって適した地点あります。それが上記の3つ。順番に詳しく見ていきましょう。

①顕著な山頂(ピーク)の前後
山頂
出典:PIXTA(丹沢、塔ノ岳の山頂。四方に登山道がつけられている)
木元ガイド
はっきりと目立つ山頂には複数の登山道がつけられていることが多く、エスケープルート選びに向いています。
特に身体のトラブルや悪天候の場合、体力の消耗を防ぐために山頂へ向かう手前でエスケープできると現場では楽に感じることができます。


②峠(コル、鞍部)
峠
出典:PIXTA(北アルプス、針ノ木峠。長野県と岐阜県に下山するルートがつけられている)
木元ガイド
峠にはそれを越える道が左右につけられていることが多く、エスケープルートを選びやすいポイントです。
③宿泊先(山小屋、テント場)の前後
山小屋

出典:PIXTA(上越国境、平標山の家。平元新道で平標山登山口まで下山することができる)
木元ガイド
体調や天候は夜間に悪化することが比較的多いので、宿泊先からすみやかに下山できるルートを設定しておくといいです。

ルートの状況と行き先に注意しよう!

エスケープルート選びのポイント
作成:吉澤英晃
木元ガイドはエスケープルートを選ぶ時に上記の2つの注意点があると言います。選んだルートが注意点をクリアしているか、しっかりとチェックしましょう。

①ルートの状況について
沢沿いの登山道
出典:PIXTA(沢を渡る登山道は、大雨の場合には増水して通れなくなることもある)
木元ガイド
まずは難路でないことが望ましいです。岩場があったり、道迷いの注意マークがついているようなルートは、できれば除外しましょう。もちろん破線コースも不適。
また大雨に遭遇した場合には、沢沿いや沢を横断するルートは危険が増す場合もあるので、沢の有無もチェックします。沢が出てくるルートをエスケープルートとして設定したとしても、大雨や雷雨の場合には避けるようにしましょう。

②ルートの行き先
人里
出典:PIXTA(下山後のバスなど、移動手段まで調べておくと万全だ)
木元ガイド
下山したらできるだけ帰宅しやすいルートを選びたいですよね。ただし帰宅に不利であっても、すぐに人里に下りれるようなルートであれば、身体のトラブルの際には有効なのでエスケープルートとしてチェックしておくとよいでしょう。

下山時に林道を長く歩くルートも除外したくなりますが、悪天候で稜線が暴雨風のときにはエスケープルートに適している場合もあるので、状況に合わせて適宜判断しましょう。

場合によっては来た道を戻るのもアリ!

出典:PIXTA
木元ガイド
行程のなかで、この地点までにアクシデントが発したら往路を引き返すことにする境目を決めておきましょう。

また分岐がほとんど存在しないコースもあるので、そういった場合にもアクシデント発生時に引き返すのがいいか、先に進んだほうがいいかの、判断が分かれるポイントになる地点を計画時に検討して、登山計画書に記載しておくといいです。

エスケープルートを設定して、登山をもっと安全に!

新緑の登山
出典:PIXTA
エスケープルートは有事の際の避難経路。事前に選んで登山計画書に記載しておくことが大切です。今回教えてもらったポイントを復習しながら、まずはエスケープルートを選定してみましょう。

最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてくればポイントを見つけるのもスムーズになってきます。

そして、いろいろと調べることで山のことが分かってきて、より楽しく登山ができるようになりますよ。

教えてくれた人:木元康晴さん(登山ガイド)

木元ガイド公式HP

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エスケープルート
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吉澤英晃
吉澤英晃

群馬県出身。大学時代に所属した探検部で登山を開始。以降、沢登り、クライミング、雪山、アイスクライミング、山スキーなど、オールジャンルで山を楽しむ。登山用品の営業職を経て、現在はフリーの編集・ライターとして活動中。

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