実は牛の仲間!?貴重な特別天然記念物「カモシカ」の生態と出会ったときの注意点

2022/02/08 更新

かつては「幻の動物」と呼ばれていた山の住人「カモシカ」。山行中に偶然どこかでバッタリ出会うこともあるかもしれません。好奇心旺盛で、じっとこちらを見つめる姿に思わず見入ってしまう人もいるでしょう。今回は、そんなカモシカの生態や習性、シカとの違いや遭遇時の注意点などについてお伝えしていきます。

制作者

ライター

emi

21歳の時に初めて登った北岳に感動!その後地元山梨や長野などの山々を仲間と登り、すっかり山好きになりました。鳳凰三山や穂高岳の様な有名な高山も大好きですが、現在は、近場の低山をのんびりハイクがちょうどいい感じ。これからは、簡単で美味しい山ごはんにチャレンジしたいです!

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アイキャッチ画像出典:PIXTA

ニホンカモシカのこともっと知ろう!

登山道を歩いていると、偶然ニホンカモシカに出くわした経験がある方もいるでしょう。こちらをじっと見つめる森の住人、今回はそんなニホンカモシカの生態や、出会った時の対処法などをご紹介していきます。

小さなツノにモフモフの顔!実はウシ科の生き物

ニホンカモシカ
出典:PIXTA
ニホンカモシカ(以下:カモシカ)は、古くは「日本書紀」や「万葉集」にも記載される日本の固有種で、実はシカの仲間ではなく 偶蹄(ウシ)目のウシ科に属する動物。
毛色は一般的には黒褐色や灰褐色をしていますが、地域によって変化があることも知られており、黒っぽいものから白っぽいものまで様々です。よく見ると、1頭1頭少しずつ毛の色が異なっています。
オス、メス共に15cmほどの短めの角を持ち、ヒゲが生えたようなモフモフした顔がなんとも愛らしいですね。

カモシカの習性や生態を学ぼう

ニホンカモシカ
出典:PIXTA
“氷河期からの生き残り”ともいわれるカモシカは、体重が30〜45kgほどあり、寿命は15年ほどとされています。オス、メス共に縄張りを持ち、通常は単独で行動しています。
ときどき2〜3頭でいるところも見かけますが、多くは親子連れで、4頭以上の群れを作ることはほとんどありません。春や夏には、さまざまな低木の葉や芽、花や果実をエサとし、冬場の時期には小枝や木の皮を食べて過ごします。
ウシ同様に胃袋が4室に分かれ「反すう」することで消化しにくいものもでも食べることが可能。4〜6月が出産シーズンになり、子育て期間の1年間を子どもは母親のもとで育ちます。

みんなで守るべき貴重な存在!「特別天然記念物」

ニホンカモシカ
出典:PIXTA
1925年に狩猟法が改正された際、カモシカは狩猟獣から除外され、1934年に天然記念物に指定されました。
それ以前は、良質な毛皮や肉が獲れるので狩猟の対象でしたが、生息数が著しく減少し絶滅が危惧されたため狩猟禁止に。1934年の指定当初は密猟などもありましたが、1954年に全国的に密猟の取り締まりが強化され、1955年には国の「特別天然記念物」に指定された貴重な動物です。
こうした保護の結果、指定当初3,000頭と推定されていたカモシカは徐々に増え、2016年時点では20〜30万頭まで増加したと推測されています。
ただ、九州や四国地方のカモシカについては現在も数が少なく、環境省のレッドリスト(2015)では「絶滅のおそれのある地域個体群」に区分されています。

カモシカの生息地について

ニホンカモシカ
出典:PIXTA
カモシカは、本州・四国・九州に分布しており、山地の森林や丘陵地帯に多く生息しています。垂直分布としては、低標高地に多い傾向となっており、500m未満の標高で見られることの方が多くなっています。人里に近い低標高地に多いこともあり、一部地域では植林地や農産物の被害に悩まされています。

カモシカとシカの違いを学ぼう

カモシカとシカ、どこが違うの?

カモシカとニホンジカの違い
出典:PIXTA
同じシカという名称がつく「カモシカ」と「ニホンジカ」ですが、同じ仲間ではなく、カモシカはヤギや羊と同じウシ科の仲間です。上記の画像や表のように、見た目や生態、行動パターンにおいても両者は大きく異なります。
シカは、オスのみ枝分かれしたツノが毎年生え変わり、2年目(1歳)は2股の角、3年目(2歳)は3股の角というように生え、4年目(3歳)以上では4股の角に成長していきます。対して、カモシカはオス、メス共に短いツノを持ち、生え変わることはありません。
また、ニホンジカは、1頭のオスが複数頭のメスと交尾する「一夫多妻制」の性質ですが、カモシカは「一夫一妻制」です。そのため、カモシカの方がニホンジカよりも数が増えにくい傾向があります。
山に住む大型動物として混同しがちな2種ですが、よく見るとその姿も生態もかなり違うことが理解できるでしょう。

動物園に会いに行こう!

ニホンカモシカ
出典:PIXTA
なかなか登山中に出くわすことが少ない野生のカモシカですが、実は動物園でその姿を観察することができます。全国で飼育している動物園は18箇所(2019年時点)と少なめですが、首都圏では「多摩動物公園」「井の頭自然文化園」「大島公園動物園」「埼玉県こども動物自然公園」などで会うことが可能。
エサには、キャベツ、ニンジン、リンゴなどの野菜や果物、牧草類、草食獣用ペレットなどが与えられています。

もし山中でバッタリ出会ってしまったら


カモシカに出会いやすい場所と時間帯

撮影:YAMAHACK編集部
カモシカは、山岳地帯や森林を住処にしているので、登山中に偶然出会う可能性も否定できません。登山道でバッタリ遭遇したり、樹木の茂みからじっとこちらを見つめる視線で気づくなんてことも。
昔は標高の高いところや、山の奥深いところでしか出会いませんでしたが、現在は山林が近くにある住宅街のほか、エサを求めて田畑に現れることもあります。カモシカは夜間に限らず、日中も活動することが知られているので、出逢う時間帯は昼夜を問いません。

偶然出くわした時の対処方

雪の中のカモシカ
出典:PIXTA
登山中に偶然カモシカに遭遇した場合は、必要以上に近寄ったりせず、後退りしながら静かにその場を立ち去りましょう。至近距離で突然出会ったり、刺激を与えたりして興奮させなければ、多くはそのまま逃げて行きます。
クマではありませんが、こうした野生動物との事故を防ぐ意味では、熊鈴にも一定の効果が期待できます。あらかじめこちらの気配を伝えることで、向こうから離れていくでしょう。

基本的には、カモシカから人を襲うことはありません。特別天然記念物でもありますので、見つけてもやさしく見守ってください。また、保護の対象動物なので、万が一傷つけたり死なせてしまった場合は、法律により罰せられることもあります。
(誤ってカモシカとの交通事故を起こした場合も、しっかりと届け出をしましょう。ひき逃げとなると罰則が適応させるケースが報告されています。)

◆むやみに近寄らない
◆驚かさない
◆遭遇したらゆっくりと後退り
◆逃げ道をふさがない
◆音を出し、こちらの存在を伝える

カモシカによる被害について

カモシカによる農作物被害とは

田んぼのニホンカモシカ
出典:PIXTA
特別天然記念物のカモシカですが、現在は地域によって食害をもたらす害獣と化し、被害報告も増えています。植林地の幼木の枝先を食べたり、30種類近い野菜や果樹を食べ荒らす被害も。
しかし、特別天然記念物であるが故に、捕獲することも駆除することも禁止されており、対応の難しさに農家の方々は頭をかかえています。一部の地域では、この様な被害状況から特別許可のもと、カモシカを捕獲して「個体数調整」が行われるケースも出てきています。

人間に対する被害も報告

ニホンカモシカ
出典:PIXTA
先ほどお伝えしたように、カモシカを見つけても至近距離だったり、下手に刺激をしたりしなければ、基本的に襲われるようなことはありません。
ただ、過去には罠にかかったカモシカを逃がそうとした男性が、太ももをツノで刺されて死亡するなどの被害も報告されています。カモシカは、大型の野生動物であることに変わりはないです。追い詰められたと感じて反撃されると怪我のもとですので、状況によっては注意すべきケースがあることを認識しておきましょう。

森の哲学者カモシカをそっと見守ろう

カモシカ
撮影:YAMAHACK編集部
もしも山でカモシカに出会うことがあったら、少しだけその姿を観察しながら、ゆっくり立ち去ってあげましょう。
農作物の被害なども報告されていますが、保護動物でもあります。基本的には襲うこともありませんので、出会ったらそっと見守ってあげましょう。

今回教えてくれた方

\教えてくれた専門家/
セルズ研究所 西海氏
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
 
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍にすごく危険な毒せいぶつ図鑑(世界文化社)。 著書に、身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本(明日香出版社)など。

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