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ニホンカモシカのこともっと知ろう!
登山道を歩いていると、偶然ニホンカモシカに出くわした経験がある方もいるでしょう。こちらをじっと見つめる森の住人、今回はそんなニホンカモシカの生態や、出会った時の対処法などをご紹介していきます。小さなツノにモフモフの顔!実はウシ科の生き物

毛色は一般的には黒褐色や灰褐色をしていますが、地域によって変化があることも知られており、黒っぽいものから白っぽいものまで様々です。よく見ると、1頭1頭少しずつ毛の色が異なっています。
オス、メス共に15cmほどの短めの角を持ち、ヒゲが生えたようなモフモフした顔がなんとも愛らしいですね。
カモシカの習性や生態を学ぼう

ときどき2〜3頭でいるところも見かけますが、多くは親子連れで、4頭以上の群れを作ることはほとんどありません。春や夏には、さまざまな低木の葉や芽、花や果実をエサとし、冬場の時期には小枝や木の皮を食べて過ごします。
ウシ同様に胃袋が4室に分かれ「反すう」することで消化しにくいものもでも食べることが可能。4〜6月が出産シーズンになり、子育て期間の1年間を子どもは母親のもとで育ちます。
みんなで守るべき貴重な存在!「特別天然記念物」

それ以前は、良質な毛皮や肉が獲れるので狩猟の対象でしたが、生息数が著しく減少し絶滅が危惧されたため狩猟禁止に。1934年の指定当初は密猟などもありましたが、1954年に全国的に密猟の取り締まりが強化され、1955年には国の「特別天然記念物」に指定された貴重な動物です。
こうした保護の結果、指定当初3,000頭と推定されていたカモシカは徐々に増え、2016年時点では20〜30万頭まで増加したと推測されています。
ただ、九州や四国地方のカモシカについては現在も数が少なく、環境省のレッドリスト(2015)では「絶滅のおそれのある地域個体群」に区分されています。
カモシカの生息地について

カモシカとシカの違いを学ぼう
カモシカとシカ、どこが違うの?

同じシカという名称がつく「カモシカ」と「ニホンジカ」ですが、同じ仲間ではなく、カモシカはヤギや羊と同じウシ科の仲間です。上記の画像や表のように、見た目や生態、行動パターンにおいても両者は大きく異なります。
シカは、オスのみ枝分かれしたツノが毎年生え変わり、2年目(1歳)は2股の角、3年目(2歳)は3股の角というように生え、4年目(3歳)以上では4股の角に成長していきます。対して、カモシカはオス、メス共に短いツノを持ち、生え変わることはありません。
また、ニホンジカは、1頭のオスが複数頭のメスと交尾する「一夫多妻制」の性質ですが、カモシカは「一夫一妻制」です。そのため、カモシカの方がニホンジカよりも数が増えにくい傾向があります。
山に住む大型動物として混同しがちな2種ですが、よく見るとその姿も生態もかなり違うことが理解できるでしょう。
動物園に会いに行こう!

エサには、キャベツ、ニンジン、リンゴなどの野菜や果物、牧草類、草食獣用ペレットなどが与えられています。
もし山中でバッタリ出会ってしまったら
カモシカに出会いやすい場所と時間帯

昔は標高の高いところや、山の奥深いところでしか出会いませんでしたが、現在は山林が近くにある住宅街のほか、エサを求めて田畑に現れることもあります。カモシカは夜間に限らず、日中も活動することが知られているので、出逢う時間帯は昼夜を問いません。
偶然出くわした時の対処方

クマではありませんが、こうした野生動物との事故を防ぐ意味では、熊鈴にも一定の効果が期待できます。あらかじめこちらの気配を伝えることで、向こうから離れていくでしょう。
基本的には、カモシカから人を襲うことはありません。特別天然記念物でもありますので、見つけてもやさしく見守ってください。また、保護の対象動物なので、万が一傷つけたり死なせてしまった場合は、法律により罰せられることもあります。
(誤ってカモシカとの交通事故を起こした場合も、しっかりと届け出をしましょう。ひき逃げとなると罰則が適応させるケースが報告されています。)
◆むやみに近寄らない
◆驚かさない
◆遭遇したらゆっくりと後退り
◆逃げ道をふさがない
◆音を出し、こちらの存在を伝える
カモシカによる被害について
カモシカによる農作物被害とは

しかし、特別天然記念物であるが故に、捕獲することも駆除することも禁止されており、対応の難しさに農家の方々は頭をかかえています。一部の地域では、この様な被害状況から特別許可のもと、カモシカを捕獲して「個体数調整」が行われるケースも出てきています。
人間に対する被害も報告

ただ、過去には罠にかかったカモシカを逃がそうとした男性が、太ももをツノで刺されて死亡するなどの被害も報告されています。カモシカは、大型の野生動物であることに変わりはないです。追い詰められたと感じて反撃されると怪我のもとですので、状況によっては注意すべきケースがあることを認識しておきましょう。
森の哲学者カモシカをそっと見守ろう

農作物の被害なども報告されていますが、保護動物でもあります。基本的には襲うこともありませんので、出会ったらそっと見守ってあげましょう。