「汚れます。が、方法はある」

餅は餅屋ということわざがあるように、アウトドアギアについて聞きたいならばアウトドアメーカーに取材するのが一番です。
ということでやってきたのは、世界中の登山愛好家やアウトドアアスリートに愛されているMOUNTAIN HARDWEAR(マウンテンハードウェア。以下MHW)。
アルパインライトをはじめとして、幅広い白色ギアを世に送り出しているメーカーのひとつです。

今回教えてくれたのは商品部の近藤伊織さん。きっとメーカーさんなら汚れ防止の方法や、汚れを確実に落とす方法を知っているはず……!
藁にもすがる思いで、色々と質問してみました。

──さっそくですが、白ギアの汚れってどうにか落とすことはできますか?
近藤さん
ある程度までは落とすことはできます。が、100%落としきるというのは…難しいかもしれません。
──そうですよね(あぁ〜っ、そんなぁ)
MHW的白いザックのメンテナンス方法
まずはマウンテンハードウェアの推奨する「汚れの落とし方」を聞いてみました。
近藤さん
MHWのギアは、本来の強度や機能性の維持の為に、基本的に丸洗いは推奨しておりません。
汚れた箇所を固く絞ったタオルで叩いて落とす方法を試してみてください。
- 汚れた箇所をタオルで叩く(このとき強く擦らない!)
- 水で薄めた中性洗剤をタオルやスポンジなどに取り、こすって落とす。
- 汚れを落とした後は、洗剤が残らないよう濡れたタオル等でしっかり拭き取る。
- メンテナンス後は風通しが良く、湿度の低い場所で保管する
近藤さん
ザックの汚れやすい箇所は主に底面と背面、ショルダー部。底面は休憩時に地面に置くため泥や土汚れが目立ちます。
他にも、背面やショルダーは汗などによる皮脂汚れが付着しがちですね。
他メーカーのザックの中には丸洗いOKのアイテムも。
具体的な洗い方は各アウトドアメーカーの推奨に従うのがオススメです。
「え、土って汚いですか?」
と、メンテナンス方法を聞きながらも、次の瞬間、近藤さんから鮮烈なひと言が飛び出しました。
近藤さん
あの……山での土汚れってそんなに嫌ですか?

近藤さん
これはごく個人的な考えですが、私、山での土汚れが汚いと思ったことはないんですよね。
そりゃあ街で地面に座るのは抵抗がありますけど、不思議と山ならパッパッと払えば平気なんですよね。
そうはいっても、できるだけ汚したくないという気持ちもとてもわかります。
雲の切れ間から光が差すような言葉でした。物は使い込めば使い込むほど味わい深くなります。
山を楽しむためのギアが山の色に染まっていくことは、むしろあるべき姿なのかもしれません。
近藤さん
そしてですね、デメリットだけではなく、白色のギアにもたくさんメリットがあるんですよ。
結果的に永く使える。白ザックのメリット4つ

白ザックに対するコペルニクス的転回が起こりました。「汚れる=悪」ではなく、「使い込むことでより味わい深くなる」という発想の転換です。
捉え方を変えると、あら不思議。今まで気付けなかった白ザックの特長がどんどん発掘されたのです。
①汚れるからこそ大切に使う不思議な人間心理
近藤さん
人間の心理を逆手にとったメリットがひとつ。
汚れてしまいそうだからこそ、常に緊張感を持って丁寧に扱えるんです。
ずっと初心が続くような感覚ですね。
近藤さんが指摘する通り、買ったばかりのギアは丁寧に扱いますが、時間が経つにつれて徐々に雑な扱いになってしまうのが人間の心理でしょう。
しかし白いザックならば、汚れを許容したとはいえ、やはりカラーリングされた製品と比べて緊張感を持って使うことができます。
それが結果として、ひとつのものを大切に永く使うことに繋がるのです。
②山でも他の人と被らず、目立つ


近藤さん
白ザックは雪山以外なら山中でよく目立ちます。
さらに他の人と被ることの少ないカラーなので、被りが嫌な人にとってはぴったりでしょう。
土曜早朝の山へ向かう電車の中で、自分と同じアイテムを持った登山者を発見したことはないでしょうか。「あ、あの人私と同じだ」が苦手な人にとっては白アイテムで逆張りをするのもアリでしょう。
近藤さん
そして白いザックは山中でもよく声をかけられるんですよね、珍しいわねって。それもなかなか面白いですよね
③街でもおしゃれに背負える

近藤さん
アウトドア用のザックを街でも使いたい人へもおすすめ。カジュアルに垢抜け感が出るので日常シーンにも溶け込んでくれるのです。
ザックは決して安い買い物ではありません。せっかくお気に入りのザックを入手したのならば、山以外でもたくさん活用したいもの。
白ザックは見た目も日常的に使いやすいものが多いため、結果として街や山で活躍する傾向にあるといいます。
④コーディネートが楽、時代を選ばない

近藤さん
やはり白はコーディネートがしやすいですよね。
どんなウェアにも合うため、飽きることなく長年愛用できますよ。
特徴的なカラーリングのザックならば、主張が強いだけに合わせられるウェアのカラーが限られてきます。一方、白ザックならばどんなカラーとも合うため、幅広いコーディネートを楽しめるのです。
流行り廃りに左右されることなく、どんな時代も使えるのが魅力です。
実はその白ザック、地球の救世主なのかも…?

近藤さん
そして実は、
白いザックを持つことが”地球を救う”ことに繋がる可能性もあるんですよ。
──えっ(何がはじまるんだ)
近藤さん
向かって左のザック(アルパインライト)で使用している生地は無染色*。つまり素材そのままのカラーを採用しているのです。
MOUNTAIN HARDWEARでは地球環境を保全するために「earth to humans…」という取り組みを行っています。
実践している多くの事のひとつとして挙げられるのが、無染色の製品開発なのです。
※MOUNTAIN HARDWEARで現在発売されている白色のザックのすべてが無染色ではありません。

近藤さん
繊維を染色をすることで、大量の水を使用したり、染色工場で大量のエネルギーを消費したり、環境に負担をかけてしまうのも事実です。
その部分を見直し、敢えて「染色をしない」という選択肢を選んだのがアルパインライトです。
一方で、アウトドアギアだからこそ求められるカラーリングも存在します。
そのためにMHWでは、今までの染色法とは異なるソリューションダイという方法での染色も推し進めているのです。

近藤さん
合成糸を染める既存の方法とは異なり、ソリューションダイは糸の原料であるプラスチックペレットと顔料を直接混合して糸を作る方法。
水や化学物質、二酸化炭素の排出を削減してくれるほか、従来品と比べて色落ちしにくいのも特徴なんです。
──確かに今、環境問題について色々なところで意識が高まっていますものね。まさか白ザックが環境を守る考えに繋がっているとは思ってもいませんでした。おしゃれな上に環境に優しいって……なんとなく嬉しいなぁ。
白ギアで「こんにちは」のその先へ

近藤さん
山ってすれ違うと挨拶するじゃないですか。
白いザックを持っていると「こんにちは」だけではなく、その先の会話が生まれやすいんですよね。
私たちの願いは山での偶然の会話が弾むこと。白ザックやギアをきっかけにもっと登山が楽しくなると思います。
「汚れが目立つから白ザックを買う勇気が出ないのよね」から始まった取材は、思わぬ着地点に到達しました。
汚れは忌避するものではなく、味わいとして愛するもの。
そしてひとつの製品を永く大切に使うことは、巡り巡って環境を守ることに繋がるのかもしれません。

近藤さん
ザックがきっかけで始まった会話が、最終的に
「実はこのザック、地球に優しくてですね〜」という話になれば、
メーカーとしては嬉しいです。
汚れるから避けていた、なんてもったいない。
もしかすると、今まで手にしたことのなかった白ザックが、新しい登山の楽しみ方を教えてくれるかもしれませんよ。
現在マウンテンハードウェアで販売している「白いザック(リュック)」
マウンテンハードウェア アルパインライト30バックパック
サイズ | ワンサイズ(高さ/幅/奥行:57 cm x 29 cm x 25 cm) |
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素材 | 210D ナイロンリップストップPUバッカー(ナイロン100%) |
背面長(目安) | 41 cm - 56 cm |
重量(目安) | 640g |
容量(目安) | 30L |
マウンテンハードウェア スクランブラー25
サイズ | - |
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素材 | 400D TPU コートナイ849 gロンリップストップ(ナイロン75%,TPU25%) |
背面長(目安) | 41 cm - 56 cm |
重量(目安) | |
容量(目安) | 25L |
マウンテンハードウェア スクランブラー35
サイズ | ^ |
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素材 | 400D TPU コートナイロンリップストップ(ナイロン75%,TPU25%) |
背面長(目安) | S/M: 41 cm - 48 cm , M/L: 46 cm - 53 cm |
重量(目安) | S/M: 1180 g , M/L: 1202 g |
容量(目安) | 35L |