<ザ・ノース・フェイス>の新素材を使ったレインウェアが気になる!
レインウェアは山登りの必需品。現在は、雨水の侵入を防ぎつつ内側で発生した湿気は排出するという防水透湿性を持っているものがほとんどです。
いまや当たり前になった防水透湿性ですが、2019年秋冬シーズンに、人気ブランド<ザ・ノース・フェイス>から、その透湿性を上回る“通気性”を持った新素材“フューチャーライト”がリリースされました。2020年には“フューチャーライト”を使った新しいモデルが続々と登場しています。
「なんだか凄そうだけど、一体どんな素材なの?」「通気性って透湿性と何が違うの?」 まずはそんな疑問を解明していきましょう。
群を抜く通気性を提供する注目素材“フューチャーライト”
“フューチャーライト”とは、レインウェアの要ともいえるメンブレン(フィルム)の一種。一般的なメンブレンと構造が大きく違い、繊維状のポリウレタンをシート状に吹き重ねた、例えるなら網戸のような形をしており、これによって水は通さずに空気は通す(=通気性)という画期的な性能を実現しました。その通気性は、従来の防水透湿性とは違う仕組みで蒸れを軽減します。
もうひとつの特徴が、さまざまな生地との組み合わせが可能で、さらにメンブレンの厚みも自由に調整できるということ。これにより、運動量が異なるアクティビティーごとに最適な性能を持つレインウェアを作ることができるようになったのです。
これで違いが丸わかり! 3シーズン対応の2モデルを徹底比較
そんな気になる新素材“フューチャーライト”を使ったレインウェアは、2020年現在、3つのモデルがリリースされています。そのうち代表となる2モデルが『FLドリズルジャケット(左)』と『FLスーパーヘイズジャケット(右)』です。
今回はこの2モデルを、近所の公園、夕暮れ時の低山、突然のゲリラ豪雨などで実際に使い、カタログ上のスペックだけでは分からない実用感を比較してきました。
テストモデル1:『FLドリズルジャケット』
75デニール(中厚手)のハリがある表地にフューチャーライトを組み合わせた一枚。守られているような堅牢性を感じることができます。重量は450g(Lサイズ)。タウンユースにも溶け込む落ち着いたデザインも特徴です。
テストモデル2:『FLスーパーヘイズジャケット』
20デニール(薄手)のフューチャーライトを採用したストレッチ性の高い一枚。とてもしなやかで、まるでソフトシェルを着ているような感覚です。重量は390g(Lサイズ)。持った瞬間に違いを感じる軽量性も魅力的。
4つの項目に絞ってテストしてみた!
テストしたのは、
の4項目。
レインウェアの購入を検討している人も、2つのモデルでどちらを買おうか悩んでいる人も、これから紹介するそれぞれのテスト結果をぜひチェックしてみてください。
①ストレッチ性|いずれも伸縮するけど、その差は歴然!
ストレッチ性は行動中の動きやすさを大きく左右する大切な要素です。腕を振ったり伸ばしたりしたとき生地が突っ張ると、ストレスに感じてしまいますよね。
まずは、そんなストレッチ性から比べてみました。
最初は『FLドリズルジャケット』。表地は75デニールのポリエステルから作られており、やや硬めの生地感が特徴ですが、丈夫になればなるほどストレッチ性が気になります。
実際に着用して腕を曲げてみると、突っ張らずに生地が伸びました。ただし「ストレッチ性に優れます」と書くほどではないというのが正直な印象。ストレッチしないレインウェアと比べたら動きやすい、という感じです。
では『FLスーパーヘイズジャケット』はどうでしょう。こちらの表地は20デニール。触ってみると薄さが指先で感じ取れます。しかし素材にはポリエステルよりも耐摩耗性に優れるナイロンを使っているので、耐久性に不安はありません。こういう隙がない作りがさすがですね。
実際に着用して肩から捻ってみると、生地が体の動きに追従してグイグイ伸びる。突っ張る感じがないどころか「これはソフトシェル!?」と錯覚するほど着心地が良く、まったくストレスを感じませんでした。
クライミングなどには『FLスーパーヘイズジャケット』がおすすめ!
②フードの使い心地|同じヘルメット対応フードでも使用感が大きく異る
次にテストしたのがフードの使い心地です。特にヘルメットとの相性をチェックしました。「クライミングはしないので関係ない」と思う人もいるかも知れませんが、いまや北アルプスなどヘルメット着用推奨山域でのヘルメット使用率は100%に近いのが事実。
登山道を歩くだけでもヘルメットが必要になったこのご時世、ヘルメットとの相性は外せないチェックポイントです。
まずは『FLドリズルジャケット』から。結論から言うと、ヘルメットをしたまま被れるけど、突っ張る感じがありました。着用するときは首元のファスナーを一度下げる必要があり、フードを被ってからファスナーを上げると、首周りが少々苦しい。ストレスがない、とはいえない感じです。
その点『FLスーパーヘイズジャケット』は首周りに余裕があって、突っ張る感じは皆無。ファスナーを上げたままでもフードを被ることができました。ストレッチ性の項目でも感じましたが、やはりこちらのジャケットはクライミングなどでの使用を強く意識しているのかもしれません。
ちなみにヘルメットを被らない状態もチェックしてみたのですが、これは両者とも遜色なく、頭も形にピタッとフィットしました。それを可能にしているのがフードの後ろにあるドローコード。ここと首元の両側についているコードを引くことでフィット感を調整できます。
『FLドリズルジャケット』のフードで長時間行動は苦しいかも
④通気性|ノンストップで熱が逃げる。これがフューチャーライトの通気性!
冒頭でフューチャーライトの特徴である“通気性”について触れました。ここがいちばん気になるポイントですよね。その真価を確かめるために、太陽が沈む夕暮れ時、いくぶん気温が下がったのを確認してから山の中を歩いてきました。
まずは『FLドリズルジャケット』からテストします。歩き始めは熱が逃げていく感覚があったのですが、さすがに登り坂が連続すると通気性が追いつかなくなり、腕からは汗が出てきました。しかし、ペタペタする不快な肌触りがなかったのは評価ポイント。着心地は悪くないと言えます。
『FLスーパーヘイズジャケット』も内側に熱がこもるのですが、そこに至るまでの時間が長い。歩き始めはスースーするような感覚もあり「これが通気性か!」と声が漏れそうになるほど、ドライな着心地を実感できました。
2モデルでは『FLスーパーヘイズジャケット』の方がより通気性が高いということが分かりましたが、他の素材と“フューチャーライト”の違いも気になるところ。
ゴアテックスのジャケットと比べると、その違いが明確に
そこで下山時、今度は試しに“ゴアテックス”を使ったレインウェアを着てみました。するとどうでしょう。内側にまるで空気の保温着を着ているような感覚があり、これは“フューチャーライト”を使ったレインウェアでは感じなかった熱のこもり具合です。
ベンチレーションにも注目してみた
ちなみに内側の熱を逃がしたいときは、ベンチレーションがあると役立ちます。しかし『FLドリズルジャケット』には、そのベンチレーションがどこにも存在しません。“フューチャーライト”の通気性に対する自信がひしひしと感じられます。
それとは対象的に『FLスーパーヘイズジャケット』は胸ポケットの内側がメッシュ生地になっており、ここがベンチレーションの役目を果たします。山中で全開にしてみると熱が逃げて空気が循環するのを感じることができました。
しかしその反面、「雨の日に全開にしたら浸水するのでは?」という疑念も…。 これは実際にフィールドで試す必要がありそうです。
④撥水&防水性|両者とも満足できる性能を体感!
ということで、最後に撥水性と防水性についてチェックしました。いままでテストしてきた項目がどれだけ高評価でも、これがダメだとレインウェアとしては欠陥品といえるでしょう。
連日晴れマークが続いたので、自宅の風呂場でシャワーを浴びせて確かめてみました。
『FLドリズルジャケット』はメインファスナーの表と裏にストームガードがついており安心感が半端ない。もちろんシャワーをかけても内側に浸水することはなく、水は生地の上をコロコロ滑り落ちてきます。
ただしストームガードが付いているとファスナーが操作しづらいというデメリットも。これは好みが分かれるところです。
その点『FLスーパーヘイズジャケット』は裏側にストームガードがあり、メインファスナーは止水ジッパーという仕様。この方がファスナーは操作しやすいですが、今度は逆に防水性に不安を感じるかもしれません。しかしシャワーをかけても、もちろん浸水することはなく、しっかり水を防いでくれました。
ただし気になっていた胸ポケットを開けてシャワーをかけると、やはりここからは水が侵入。残念ですが雨の行動中にベンチレーションとして使う方法はおすすめしません。
グッドタイミングで大雨の中も歩いてみた
これで一通りテストは終わったので一休みしていると、急に外からゴロゴロという不穏な音が。様子を見ていると突然大雨が降ってきたので、これはチャンス! 急いで『FLスーパーヘイズジャケット』を着込み雨の中を歩いてきました。
近隣住民に怪しまれながら雨の中を歩くこと約20分。生地が薄いので雨水の冷たさをダイレクトに感じ、「もしかしたら浸水している?」と不安にもなったのですが、もちろん中にまで水が入ってくることはなく、自信をもって「問題なし!」と評価することができました。
それぞれの特徴を見極めて、高次元のドライ感を実感してもらいたい
検証結果を踏まえ、それぞれの特長や適した使用シーンをまとめると以下の通り。
そして両者が備える抜群の通気性は「凄い!」の一言。その実力を着用して体感してみてください!
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