アイスキャンディに登ろう!憧れのアイスクライミングチャレンジへのイロハを教えます

2020/03/23 更新

南八ヶ岳・赤岳鉱泉の人工氷瀑「アイスキャンディ」。アイスクライミングデビューには格好の存在ですが、まだまだわからない事だらけ…そんな登山者も多いでしょう。今回プロガイドの手引きで、アイスキャンディにチャレンジするため手引きをご紹介!


アイキャッチ画像撮影:washio daisuke

アイスキャンディ…写真で見たことはあるけれど

撮影:washio daisuke(アイスキャンディでのアイスクライミングの様子)
この写真、SNSや登山雑誌などで一度は見たことがあるのでは。そう、これこそが南八ヶ岳の山小屋・赤岳鉱泉の人工氷瀑「アイスキャンディ」。アイスクライミングデビューには格好の存在ですが、何をどうすれば良いかわからない…そんな登山者も多いでしょう。

今回は石井スポーツ登山学校校長でもあるプロガイド・天野和明さんの手引きで、アイスキャンディにチャレンジするためのあれこれをご紹介します。

まずはアイスキャンディを知ろう!

撮影:washio daisuke
写真で見ただけではスケールや構造が理解しにくいアイスキャンディ。実は、壁面に応じて斜度や特徴が異なるんです。
チャレンジする前に、まずは東西南北の壁を探訪してみましょう!
*気象や氷の発達度合によって各面の特徴は変化する場合もあります。最新の情報を入手して登攀しましょう。

南面

撮影:washio daisuke
日当たりが良く氷が柔らかい南面は、通常クライミングには使用されません。後述するトップロープの支点構築のために、アイスキャンディの屋上に登る階段が設置されています。

東面

撮影:washio daisuke
傾斜が緩い部分もあり、手がかり・足がかりにしやすい凹面がある東面は、アイスクライミング初心者にも比較的チャレンジしやすい壁です。

北面

撮影:washio daisuke
日当たりが悪く、氷が硬く締まっていることが多い北面。アイゼンの前爪やアイスアックスが刺さりにくいので、アイスクライミングの基本をマスターしてから挑みましょう。

西面

撮影:washio daisuke
氷柱が折り重なっている西面。登攀の際に崩れたり落氷が起きることもあるため、慎重に挑むことが必要です。

アイスキャンディに登る前に…

アイスキャンディの概要を知ったところで、登攀前に知っておいてほしい事柄をご紹介。安全にアイスクライミングを楽しむための、ルールや装備を理解しておきましょう。

アイスキャンディの登攀ルール


提供:赤岳鉱泉・行者小屋ホームページ(画像をクリックすると大きな画像が見れます)
こちらは赤岳鉱泉・行者小屋ホームページに掲載されている、アイスキャンディの使用規定。かなり細かく見えますが、とても重要内容が書かれています。必ず熟読しましょう。

アイスキャンディの登攀前には、必ず赤岳鉱泉のフロントに申し出て使用料(1日=1,000円・12月〜3月の1シーズンパス=3,000円)を支払い、注意事項を記した誓約書を熟読して署名。利用日を記載したテープをもらえるので、ヘルメットに貼っておきましょう。
赤岳鉱泉・行者小屋ホームページ アイスキャンディ使用規定

アイスキャンディ登攀に必要な装備

アイスキャンディの登攀は、基本的にクライマー(登攀者)・ビレイヤー(確保者)の2人1組で行い、それぞれに必要な装備があります。

【1】両者とも必要な装備
*ヘルメット・サングラス
撮影:washio daisuke(赤岳鉱泉ではヘルメット・アイゼン・アイスアックスのレンタルも実施)
アイスキャンディに限らず、アイスクライミングでは氷を叩いて登攀するため、氷の塊が飛散・落下してきます。頭部や顔を負傷しないために必ず着用しましょう。

*アイゼン(クランポン)
撮影:washio daisuke(アイスクライミングに適した前爪のアイゼン)
アイスキャンディ自体はもちろんですが、周囲も地面は氷に覆われています。登攀する時だけでなく、エリア内での行動中に転倒しないためにアイゼンの装着は必須。
氷に蹴り込みやすいように前爪が1本になっていたり縦になっているタイプのアイゼンがオススメです。

*ハーネス
撮影:washio daisuke(ハーネスを装着して安全確保)
アイスクライミングはクライマーとビレイヤー双方にロープを連結して安全確保を行います。万一の落下時に外れないよう、ウェストをしっかり締めて装着しましょう。

*グローブ
撮影:washio daisuke(クライミング用グローブが便利)
クライマーはもちろん、ロープの摩擦から手を保護するためにビレイヤーもグローブを装着しましょう。テムレス(防水透湿性のある作業用手袋)をビレイヤーが使用することは禁止です。

【2】クライマー・ビレイヤーそれぞれに必要な装備
*アイスアックス(クライマー)
撮影:washio daisuke(2本ワンセットで使用します)
両手に持って氷に刺しながら登攀します。通常のピッケルより短く、シャフトがくの字に曲がっているのが特徴。握りやすさ・振りやすさなど自分に合ったモデルを探しましょう。

*確保器具(ビレイヤー)
撮影:washio daisuke(クライマー側とビレイヤー側のロープを通す位置がイラストで明示されています)
クライマーがバランスを崩したら即座に止められるよう、ロープが常にピンと張った状態を保持するのがビレイヤーの役目。ここで使用するのが確保器具です。

道具まとめ
クライマー(登攀者)ビレイヤー(確保者)
ヘルメット
サングラス
アイゼン(クランポン)
ハーネス
グローブ
アイスアックス
確保器具

レンタル装備もあります

撮影:washio daisuke(たくさんの種類から選べるレンタルのアイスアックス)
ちなみに、以下の装備は赤岳鉱泉でレンタルも可能です。

・アイスアックス:500円(1日)
・アイゼン(クランポン): 500円(1日)
・ヘルメット:500円(1日)

特にアイスアックスは、アイスクライミング初心者がいきなり購入するのはハードルが高い装備。様々なブランドが揃っているので、まずはレンタルして使ってみてから、自分に合ったモデルを見つけるのも良いでしょう。

アイスキャンディに登ってみよう!

ではいよいよアイスキャンディにチャレンジ!写真と動画を交えながら、基本的は登攀方法や疑問点について紹介していきます。

トップロープのセット

一般的なアイスクライミングには“リードクライミング”など数種類の登攀方法がありますが、アイスキャンディは“トップロープ”と呼ばれる登攀方法のみ許可されています。
まずは、トップロープをアイスキャンディにセットしましょう。
※写真の両サイドにある矢印を押すか、横にスワイプすると写真が変わります。


撮影:washio daisuke

(1)南面の階段から、アイスキャンディの屋上に登ります
(2)建物にすると5階建の構造です
(3)赤色の単管パイプにソウンスリングを巻き付け、スクリューゲート式安全環付カラビナをセットします
(4)バックアップとして別の赤色の単管パイプにスリングとカラビナをセットします
(5)2つのカラビナ(安全環は締める)にロープを通して、下に垂らします

これで、トップロープのセット完了。階段を降りて、垂らしたロープに戻りましょう。

クライマー・ビレイヤーへのロープのセット

ロープの両端をそれぞれクライマー・ビレイヤーにセットします。正しく実践しないと事故に直結、写真をしっかりご覧ください。
※写真の両サイドにある矢印を押すか、横にスワイプすると写真が変わります。


撮影:washio daisuke

(1)垂らしたロープの両端をクライマー・ビレイヤーに連結します
(2)2枚のスクリューゲート式安全環付カラビナを使用してクライマーのハーネスにロープをセットします
(3)確保器にロープを通します
(4)確保器と共にビレイヤーのハーネスにロープをセットします(クライマー・ビレイヤーともカラビナの安全環はしっかり締める)
(5)確保器にロープを通す向きを間違えないようにしましょう

これで、登攀準備は完了です。

いよいよアイスキャンディに登攀!

ロープを着実にセットしたら、いよいよアイスキャンディに登攀です。クライマー:天野ガイド/ビレイヤー:筆者のコンビでアイスキャンディにチャレンジします。
※写真の両サイドにある矢印を押すか、横にスワイプすると写真が変わります。


撮影:washio daisuke

(1)ビレイヤーは常にロープがピンと張った状態になるよう、確保器へロープをたぐり寄せます
(2)クライマーは着実にアイスアックスを氷に打ち込みます
(3)クライマーは足をなるべく小刻みに動かしてアイゼンを氷に蹴り込みます
(4)クライマーは最上部まで登攀したら「降ります」とビレイヤーに声をかけます
(5)ビレイヤーは少しずつロープを送り出し、それに合わせてクライマーは氷を足底で蹴るように下降します

クライマー・ビレイヤーのそれぞれの動きを見ながら、登攀から下降まで一連の流れを動画でご覧ください。

撮影:washio daisuke(ビレイヤー=筆者はアイスクライミング初体験のためロープさばきに不慣れな部分があります点、ご了承ください)

アイスクライミングの注意点

撮影:washio daisuke(アイスクライミング特有の危険を理解しておきましょう)
最後に、アイスクライミングの注意点を解説。アイゼン・アイスアックスなどの装備を使って氷に登攀するというこの登攀ジャンルならではのリスクを、動画で理解してください。
撮影:washio daisuke

あなたもチャレンジしてみませんか?

撮影:washio daisuke
さて、今まで漠然としていたアイスキャンディ登攀のイメージが湧いたでしょうか。とは言え、トップロープの支点構築やロープでのビレイなどはミスの許されない専門領域。
赤岳鉱泉では、小屋番がビレイヤーを努める初心者体験会やプロガイドを招聘しての鉱泉道場などイベントも実施しています。SNSをチェックして、まずは参加してみましょう。

赤岳鉱泉・行者小屋|公式Instagram
赤岳鉱泉・行者小屋|公式Facebook
ブログ|鉱泉日誌

 監修:天野和明ガイド

撮影:washio daisuke
クライマー・国際アスピランガイド。2009年にインドヒマラヤ・カランカ北壁のアルパインスタイル初登攀により、 登山界のアカデミー賞と呼ばれるピオレドール賞を日本人として初めて受賞。現在は石井スポ ーツ登山学校校長として、スタンダードな登山技術、知識の伝達や後進の育成に努めている。201912月に は、著書『ヤマケイ登山学校 雪山登山』(山と渓谷社)を刊行。
石井スポーツ登山学校|ホームページ

取材協力:赤岳鉱泉・行者小屋 柳沢太貴さん

撮影:washio daisuke
赤岳鉱泉・行者小屋の4代目若旦那。アイスキャンディの組立てや解体の際には、自ら危険な最上部に登って作業を指示しています。様々なブランドや企業とコラボしたイベント「アイスキャンディフェスティバル」など、次々と新しい取組みを実践している若き小屋番です。
赤岳鉱泉・行者小屋|ホームページ

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washio daisuke
washio daisuke

*登山の総合プロダクション・Allein Adler代表* 登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。 得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。 山と人をつなぐ架け橋をめざしています。

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