秘境に佇む二百名山。佐武流山(さぶりゅうやま・さぶるやま)
標高 | 山頂所在地 | 山系 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
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2192m | 長野県栄村・新潟県湯沢町 | 上信越高原 | 17.3℃ | 8.1℃ |
佐武流山は苗場山と白砂山を結ぶ信越国境稜線上にある最高峰で、日本二百名山・信州百名山にも選ばれている「知る人ぞ知る」山。急登が続くロングコースで、日本二百名山の中でも極めて難しい山とされています。
静かな山行を楽しめる「玄人好み」の山
佐武流山には昭和30年代に大学の山岳部などが足を踏み入れたものの、その後登山道が失われていました。しかし、平成12年にボランティアグループの情熱によって再開通され、再び人が登れるように。以前より苦労せず山頂に立てるようになりましたが、急登が続くコースは人も少なく、玄人好みの山。山頂付近は展望が開け、自然のままに残された山々の眺めを堪能できます。
手付かずの自然が作り出す紅葉は圧巻
登山者の少ない佐武流山がもっとも賑わうのは紅葉の時期。山頂からは手付かずの自然が織りなす紅葉が180度見渡せます。
佐武流山の天気
佐武流山に行く前に現地の天気をこちらでCHECK!
急登の先には脈々と続く山並み。ドロノキ平~佐武流山
佐武流山へ登るにはドロノキ平からのコースか苗場からの縦走しかありません。ドロノキ平登山口の先のゲートからスタートしても途中で合流できますが、ドロノキ平からのほうが20分ほど短縮されます。
ドロノキ平~佐武流山登山コース
最高点の標高: 2171 m
最低点の標高: 1069 m
累積標高(上り): 3776 m
累積標高(下り): -3776 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 日帰り
- コースタイム:約10時間5分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
ドロノキ平登山口(95分)→檜俣川下降点(135分)→ワルサ峰(35分)→西赤沢源頭(60分)→佐部流山(50分)→西赤沢源頭(35分)→ワルサ峰(110分)→檜俣川下降点(85分)→ドロノキ平登山口
ロングコースですが、途中にテント場がないため日帰りになります。コースタイムより早いペースで歩ける上級者向けのコース。自分のレベルに合った山かどうか、きちんと確認してください。
駐車場はありませんが、登山口そばの国道の広い路肩に駐車してスタート。登山届が設置されています。
登山道に入ると白い幹が特徴的なドロノキの森を歩きます。樹林帯は草が刈られていますが、時期によっては草が成長してやや分かりづらいことも。
30分ほどで林道歩きとなり、左手に月夜立岩が見えたら渡渉地点の分岐の道標を見落とさないように進みましょう。
道標に従って林道から離れ、渡渉地点まで降ります。
檜俣川のロープが張られている場所を渡渉します。浅いところでも登山靴の中に水が入る水深なので水量が多い時は要注意。
渡渉が終わると急登となり物思平へ登っていきます。倒木や木の根が多いので足元に気を付けましょう。
物思平は休憩できる少しだけ平らな場所。ここからさらに急登は続きますので、一息ついて進みましょう。
岩がゴロゴロしていたり、木の根で登りにくい場所にはロープが設置されているので助かります。
ひたすらの急登に耐えると、そのご褒美のような景色の良いワルサ峰に到着。
西側は木に隠れていますが、ワルサ峰周辺からは東側に苗場山や、目指す佐武流山も見えてきます。
ワルサ峰からいったん下り、西赤沢源頭へ向かいます。ヤセ尾根ですが展望が良く烏帽子岳や苗場山が見えている気持ちの良い登山道。西赤沢源頭には苗場山への分岐点があります。
西赤沢源頭を過ぎると坊主平に到着。長野県栄村のHPでは緊急時ビバーク可となっていますが、平らな場所はごくわずかです。
進む方向には目指す佐武流山の山頂が見え、その先の白砂山へと稜線が続いています。西赤沢源頭より1時間ほどで佐武流山山頂に到着。
山頂から西側は樹木のため展望なしですが、東側の眺めは良く、人の手の入らない美しい景色が広がっています。苗場山や尾瀬、谷川岳方面まで見渡せる大展望を堪能しましょう。
帰りは来た道で戻ります。木の根の多い急坂は下りでも要注意。
山と高原地図 志賀高原 草津白根山・四阿山
超ロングコースだけど達成感はひとしお。佐武流山~苗場山縦走
佐武流山から苗場までの縦走コースです。雰囲気の違う山を縦走できるロングコースで、山歩きの魅力を存分に堪能できます。
佐武流山~苗場山縦走コース
最高点の標高: 2171 m
最低点の標高: 1069 m
累積標高(上り): 4074 m
累積標高(下り): -3834 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 1泊2日
- コースタイム:約15時間45分
- 【技術的難易度】★★★★★
- ・岩場、雪渓を長時間継続して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術に加え、撤退などの判断能力ができる
【1日目】
ドロノキ平登山口(95分)→檜俣川下降点(135分)→ワルサ峰(35分)→西赤沢源頭(60分)→佐部流山(50分)→西赤沢源頭(120分)→ナラズ山(120分)→赤倉山(145分)→苗場山神社(25分)→苗場山
苗場山にしか宿泊施設がないため、1日で佐武流山~苗場山まで行く超ロングコース。コース中には深い藪こぎが続く箇所もあり、こちらもコースタイムより早く歩ける上級者向けです。
佐武流山までは前項で紹介したコースを通って進み、西赤沢源頭まで戻ったら分岐を赤倉山方面に向かいます。
分岐から急坂を下ると笹藪の藪漕ぎがスタート。笹は刈られていることもありますが、背丈の高い笹で道が分かりにくい場合は地図で確認しながら進みましょう。特にナラズ山手前は分かりにくいので要注意。
ナラズ山から赤倉山までは、山と高原地図では破線ルート。笹藪は赤倉山まで続きます。赤倉山で笹藪は終わり、歩きやすい登山道になるので一安心。
先へ進むと遠くに苗場山の平たい山容が見えてくるでしょう。龍ノ峰手前で小さな沢を通過。池塘の周辺はお花畑がきれいな場所で、ゴールが近いことを感じさせます。
龍ノ峰を過ぎると木道歩きの始まり。ここからは景色を思う存分楽しみながら歩きましょう。苗場山の頂上台地には多数の池塘があり、初夏には多くの花が咲く広大な湿原が広がっています。
長い一日はこれで終了。山頂近くにある苗場山頂ヒュッテに宿泊します。
【2日目】
苗場山(20分)→苗場山神社(115分)→四合目(25分)→三合目
2日目は小赤沢コースを通って下山します。8合目までは緩やかな下りですが、8合目から6合目までは岩がゴロゴロした登山道。ところどころ鎖場も出てきます。6合目から先は泥と岩の混じった道なので滑らないように注意して。3合目で登山道は終わり、ドロノキ平登山口まで徒歩で戻る場合は車道を3時間半ほど歩きます。
宿泊地:苗場山頂ヒュッテ(苗場山自然体験交流センター)
苗場山の山頂からすぐのところにあるログハウス風の山小屋。高層湿原が一望できる位置にあり、景色が最高です。浄化槽による水洗トイレを完備し環境にも配慮しています。
所在地:苗場山標高1,060m
電話番号:025-767-2202(栄村役場秋山支所)
営業期間:6月初旬~10月末
収容人数:92名
料金 | |
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1泊2食 | 8,800円 |
1泊1食 | 7,800円 |
素泊まり | 6,300円 |
お弁当 | 1,000円/人 |
佐武流山登山時の注意点
ロングコースで人の少ない佐武流山。登山をするにあたってぜひ知っておいてほしい注意点があります。
①スパッツを持参
登山道には沢を渡渉するポイントがあります。水深が深いこともあるのでスパッツなど靴の中に水が入らないような工夫をして行きましょう。
▼スパッツのおすすめはこちら
②藪が深い箇所あり(佐武流山~苗場山)
苗場山へ縦走する場合、藪が刈られていないときは背丈以上の藪の中を進む必要があります。ヤマレコ等で直近の山行記録などを見て、最新情報を確認していきましょう。
③熊対策を忘れずに
佐武流山周辺は手つかずの自然が残る山深い地域のため熊も出没します。熊鈴やラジオ等を鳴らし、熊に出会わないような対策を。
▼熊対策についてはこちら
秘境の温泉巡りで体を癒そう
佐武流山のロングコースで疲れた体を癒しに、帰りは温泉に寄って帰りましょう。周辺にはぜひ寄ってみてほしい温泉があります。
切明温泉(ドロノキ平登山口近く)
自分で河床を掘って河原に湧出した温泉の露天風呂を楽しむことができる切明温泉。川の水を引き込んで、自分好みの温度に湯温を調節できます。この野湯以外にも近くの宿泊施設で日帰り入浴が可能です。
小赤沢温泉(小赤沢平登山口近く)
苗場の小赤沢コース登山口近くにある温泉。湧出口では無色透明ですが、浴槽内では酸化して赤褐色になるお湯が特徴的。2階には休憩所があり、食堂では秋山郷の郷土料理をいただけます。
所在地:長野県下水内郡栄村大字堺18210
電話番号:025-767-2297
営業期間:4月~11月中旬
定休日:毎週水曜日(7・8・10月は無休)
料金: 大人¥500、小人¥200
登山口へのアクセス・駐車場情報
佐武流山への登山口であるドロノキ平登山口の情報です。公共交通機関ではアクセスできないため、マイカーかタクシーを利用することになります。
ドロノキ平登山口へのアクセス
関越自動車道 湯沢IC-ドロノキ平登山口(約1時間15分)
<駐車場>
駐車可能台数:約10台(路肩)
料金:無料
トイレ:なし
秘境の山を堪能できる佐武流山
佐武流山は人の少ない「知る人ぞ知る」山。ロングコースで、手つかずの自然にどっぷりと抱かれて秘境を堪能するのはいかがでしょう。苗場山との縦走コースは、ハードながら変化に富んだ山容を見られるのも魅力の一つ。健脚の方はぜひトライしてみてください。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。