「私はゆっくり歩いています、道を譲ります」
それがこの「ゆっくり山マイマイ」というマーク。
車の初心者マークのように「私はゆっくり山を歩いています。道を譲りますのでお先にどうぞ。」ということを周りの人に知らせるしるしです。登山系SNSから広まり、今では登山用品店や山小屋でも手に入れることができるんです。
今回、この「ゆっくり山マイマイ」を企画・制作しているangelinaさんにお話を伺うことができました。
乳がん手術後に経験した「山で人とすれ違うのが怖い」という気持ち
angelinaさん(以下、a):「以前の私は1年通して登山を楽しむ健康体でした。ですが突然『乳がん』を宣告され、2017年に手術。かなり大きな手術だったので、今でも腕の麻痺が残っています。
術後ようやく大好きな山に行けたとき、今まで感じたことのない不安を感じました。人とすれ違うのが怖い、という不安です。
『手術箇所をぶつけたらどうしよう、急に誰かが走ってきて、避けられずに転んだらどうしよう…。』
登山ウェアを着てしまえば誰もが元気そうに見えるので、ゆっくり歩いていることを知らせる必要性があると感じたんです。」
自分と同じような思いをしている人が他にもいるかもしれない。道を譲る人も譲られる人も、気持ちよく歩ける環境を作りたい。そんな思いから、angelinaさんは山の殻を背負ったカタツムリ、「ゆっくり山マイマイ」のマークを考案しました。
SNSを通じて徐々に広がる、「お先にどうぞ」の想い
a:「最初は自分のヤマレコに画像素材をアップして、自由に使ってくださいという感じでした。欲しい方には無料でプラ板にしたものを送りますよ~と書いておいたら、多くの人が『欲しい!』と言ってくださって。」
a:「実際にマイマイを手にしてくださった方たちが、ご自身のヤマレコやYAMAPなどで投稿してくれ、またそれが広まって…。SNSのおかげで認知がどんどん広がり、ゆっくり山マイマイのホームページを立ち上げることになりました。
今年の2月にはクラウドファンディングという形で支援を募りましたが、予想を遥かに越える反響をいただき、目標200%達成という形でプロジェクトを終えることができたんですよ。今は缶バッジの形にして、ご希望の方に無料で配布させていただいています。」
a:「最初は自分と同様、病気をされた方を対象に考えていましたが、健康な方でも『ゆっくり歩きたい』という人が意外と多いんです。
写真を撮りたいから、お花をゆっくり眺めたいから、子供と一緒に登りたいから、などさまざまな理由から『ゆっくり山マイマイをつけたい』と言ってくださる方が増えています。」
活動を始めてちょうど1年、トータルで5000個以上のゆっくり山マイマイが、ゆっくり歩きたい人の元へ旅立っていったとのこと。