「自分の後ろに渋滞が…。」山でゆっくり歩くことは、周りの人に申し訳ないこと?

2018/10/29 更新

「歩くペースが遅くて、周りの人に迷惑かけてないかな…。」みなさんは登山中に、こんなことを思った経験はありませんか?のんびり歩く人も、トレランなどで山を走る人も、同じ道を通らなければならない登山。どんな人でも安全に気持ちよく山を歩く方法はないのでしょうか?実は、この問題の解決に役立つある「マーク」が登山者の間でジワジワと広がってきているんです。

アイキャッチ画像出典:PIXTA

「歩くの遅くて、迷惑かけてないかな…」

登山する男性グループ
出典:PIXTA
YAMA HACK読者のみなさんは、登山中にこんなことを思ったことはありませんか?

「自分の歩くペースって遅いんじゃないかな…」
「歩くのが遅くて、一緒に登る人や周りの登山者に迷惑かけちゃうんじゃないかな…」

複数人で登山をする場合、「一番遅い人にスピードをあわせること」が必要とされています。隊がバラバラになって遭難してしまうのを防ぐため、というのがその理由。

登山のグループ
出典:PIXTA
とは言え実際に、自分が一番遅くて他の人に合わせてもらう状況になったら、申し訳なく思ってしまうこともありますよね。

せっかく大好きな山に行くのだから、できるだけそんな気持ちになるのは避けたいものです。何かいい方法はないのでしょうか?

まずは現状を知るために、YAMA HACK読者のみなさんにアンケートを取って聞いてみました。(回答数:1100)

①ゆっくりペースで歩いている人は、どのくらいいるんだろう?

アンケートの回答グラフ
作成:YAMA HACK編集部 ※
初級レベル:登山を始めたばかり、低山ハイクの経験あり
中級レベル:2000m以上の登山や、テント泊、2泊以上の縦走経験あり
上級レベル:危険箇所を含むコース、バリエーションルートや雪山の経験あり
「標準ペースだ」と思っている方が最も多く、続いて4割弱の方が「ゆっくり歩いている」ということがわかりました。

また、「ゆっくり歩いている」と答えた方の登山経験を見てみると、半数が初級レベルの方ですが、思った以上に中級レベルの方も多いようです。

ゆっくりペースで歩いている登山者
撮影:YAMA HACK編集部
実際に「安全に下山することが第一」の登山では、自分が最後まで歩き続けやすいペースで歩くのがよいと言われています。コースタイムはあくまで目安。登山経験に関係なく、自分のペースで歩くことを心がけている方が多いのかもしれません。

②「迷惑かけたかな…」と思ったことがある人は、どのくらいいるんだろう?

アンケート回答グラフ
作成:YAMA HACK編集部
2人に1人の方が「迷惑をかけたかも」と思った経験があるようです。こちらも登山レベルを見てみると、中級レベルの方が半数、続いて初級レベル方が多いという結果になりました。

急な体調不良や怪我など予期せぬトラブルを含めると、登山レベルに関係なく「思ったペースで歩けなかった、周りの人に迷惑をかけてしまった」という経験はよくあることなのかもしれません。

「そうは言っても、やっぱり申し訳なく思ってしまう…」

登山するグループ
出典:PIXTA
読者アンケートから「ゆっくり歩いている人も多い」「自分のペースで歩くのが大事」ということがわかりました。

とは言え、実際に山で
「自分の後ろが大渋滞に…!」
「計画したペースで歩けなかったから、一緒に登った人も山頂まで行けなかった…。」
なんて経験をしたら、やはり周りに申し訳なく思ってしまう人もいるような気がします。

トレラン
出典:PIXTA
また、最近ではトレランやスピードハイクを楽しむ人も増えています。ゆっくり歩く人もランの人も、どちらも自分のペースで気持ちよく山に登れるのが理想的。

ですが登山道には明確な交通ルールがありません。「マナーを守って歩こう」「譲り合って歩こう」と言われていますが、実際には歩くペースが違う人同士でのトラブルや事故は少なくないのが現状です。どんな人でも安全に山を楽しめる方法はないのでしょうか。

みんなが安全に歩くために「あるマーク」がジワジワと広まっている?

「ゆっくり歩く人も、速く歩く人も、どちらも安全に山を歩ける環境にできないものか。」そんな想いから生まれた、「あるマーク」が登山者の間でジワジワと広がってきています。あなたは、このマークを見かけたことがありますか?

ゆっくり山マイマイのバッジ
撮影:YAMA HACK編集部

「私はゆっくり歩いています、道を譲ります」

それがこの「ゆっくり山マイマイ」というマーク。

車の初心者マークのように「私はゆっくり山を歩いています。道を譲りますのでお先にどうぞ。」ということを周りの人に知らせるしるしです。登山系SNSから広まり、今では登山用品店や山小屋でも手に入れることができるんです。

今回、この「ゆっくり山マイマイ」を企画・制作しているangelinaさんにお話を伺うことができました。

angelinaさん
提供:angelinaさん
山ニックネーム:angelina
趣味:登山、料理
山好きな両親の影響で小さい頃から多くの山に親しむ。
日本アルプス、丹沢、奥秩父など、ハイキングから雪山まで色々な山を楽しむ生活の中、がんの宣告を受ける。
14時間におよぶ手術、治療とリハビリを行い、山に復帰。術後初めて訪れた山の狭い登山道ですれ違い時の不安を感じ、自身と同じような気持ちを抱えている人が多くいるはず、と思い「ゆっくり山マイマイ」の活動を始める。

乳がん手術後に経験した「山で人とすれ違うのが怖い」という気持ち

anigelinaさん
撮影:YAMA HACK編集部
angelinaさん(以下、a):以前の私は1年通して登山を楽しむ健康体でした。ですが突然『乳がん』を宣告され、2017年に手術。かなり大きな手術だったので、今でも腕の麻痺が残っています。
術後ようやく大好きな山に行けたとき、今まで感じたことのない不安を感じました。人とすれ違うのが怖い、という不安です。
『手術箇所をぶつけたらどうしよう、急に誰かが走ってきて、避けられずに転んだらどうしよう…。』
登山ウェアを着てしまえば誰もが元気そうに見えるので、ゆっくり歩いていることを知らせる必要性があると感じたんです。」

自分と同じような思いをしている人が他にもいるかもしれない。道を譲る人も譲られる人も、気持ちよく歩ける環境を作りたい。そんな思いから、angelinaさんは山の殻を背負ったカタツムリ、「ゆっくり山マイマイ」のマークを考案しました。
ゆっくり山マイマイ

SNSを通じて徐々に広がる、「お先にどうぞ」の想い

a:最初は自分のヤマレコに画像素材をアップして、自由に使ってくださいという感じでした。欲しい方には無料でプラ板にしたものを送りますよ~と書いておいたら、多くの人が『欲しい!』と言ってくださって。」

ゆっくり山マイマイ
撮影:YAMA HACK編集部(最初はangelinaさんお手製のプラ板ストラップを配布していたそう)
a:「実際にマイマイを手にしてくださった方たちが、ご自身のヤマレコやYAMAPなどで投稿してくれ、またそれが広まって…。SNSのおかげで認知がどんどん広がり、ゆっくり山マイマイのホームページを立ち上げることになりました。

ゆっくり山マイマイ 公式サイト

今年の2月にはクラウドファンディングという形で支援を募りましたが、予想を遥かに越える反響をいただき、目標200%達成という形でプロジェクトを終えることができたんですよ。今は缶バッジの形にして、ご希望の方に無料で配布させていただいています。」

山マイマイバッジ
撮影:YAMA HACK編集部(バッジの形になって送られてきます)
a:「最初は自分と同様、病気をされた方を対象に考えていましたが、健康な方でも『ゆっくり歩きたい』という人が意外と多いんです。
写真を撮りたいからお花をゆっくり眺めたいから子供と一緒に登りたいから、などさまざまな理由から『ゆっくり山マイマイをつけたい』と言ってくださる方が増えています。」

活動を始めてちょうど1年、トータルで5000個以上のゆっくり山マイマイが、ゆっくり歩きたい人の元へ旅立っていったとのこと。

「ゆっくり歩くことが申し訳ない」と思っている人が本当に多い



ゆっくり山マイマイに賛同してくださった方からは、たくさんのお声をいただいたそうです。

「延命治療中だが、『病気を治してから登れば?』と言われて悲しい思いをした。」

「子連れ登山中、子供とランナーがぶつかって子供が怪我をしてしまった。」

「登山を始めたばかりだが、人の多い山だと迷惑をかけてしまうかもと思い、行くのを躊躇してしまう。」

anigelinaさん

撮影:YAMA HACK編集部
a:「見た目は元気でも、いろんな事情を抱えて山に登っている人が実はたくさんいます。そういった方々が一様におっしゃるのが『ゆっくり歩くことで他の登山者に迷惑をかけそうで、申し訳なくて山に行けない』ということ。
ですが、病気と戦っている方は『好きな山に登ること』が闘病の支えになることも多いんです。健康な方であっても、「ゆっくり歩くこと」に対して後ろめたく思ってしまったら、山を続けることが難しくなってしまいますよね。」

ゆっくりでも、「また山に行こうかな」と思ってもらうことが一番の目標

ゆっくり山マイマイのバッジ ホームページに寄せられたお声はなんと500通以上。

「山でマイマイ見かけて、声をかけたら喜ばれました。」

「ゆっくり歩きたいのは自分だけじゃないと気づき、励まされました。」

「いつかマイマイをつけている人に出会いたいな。」

こういったお声をいただくと、「ゆっくり歩く楽しみ方」が広がっているように感じられて、とても嬉しく感じるそうです。

マイマイバッジとメッセージ

撮影:YAMA HACK編集部

あなたの山頂を決めればいい

a:「『申し訳ない』なんて思わないで、自分のペースでゆっくりとでもいいから『また山に行こうかな』と思ってもらえるキッカケを作っていくのが一番の目標です。もちろんゆっくり歩く人以外にも、『お先にどうぞ』のしるしを知ってもらえたら嬉しいですね。」

ゆっくり山マイマイバッジを付けて登山
撮影:YAMA HACK編集部
a:「ゆっくりとしか歩けない人は、とにかく無理をしないで欲しい。無理して山頂まで行かなくても、自分の山頂を決めて、そこまで登れればいいと思うんです。無理をしてトラブルが起こったら、きれいな景色よりも嫌な思い出が残ってしまうから。
どんな人でも笑顔で下山できることが何より大事です。」

「歩く行為そのもの」をもっと楽しめるように

登山者
出典:PIXTA
今回のYAMA HACK読者アンケートでは「あなたが登山に求めるものは?」という質問にも答えてもらっていました。
なんと半数以上の方が「歩く行為そのもの」という項目を選択。登山者の多くが「山を歩くこと自体を楽しんでいる」ということがわかりました。

「もしゆっくり歩いている人がいたら、自分が思うよりちょっと早めに声をかけてもらえたら嬉しいです。『こんにちは~』とか、『先に行きますよ~』とか簡単な一言で大丈夫。そうすれば、安心して道を譲れると思うので」
そう語るangelinaさん。

マイマイバッジ
提供:angelinaさん
ゆっくり歩いている人がいたら自分から声をかけてみる、ゆっくり歩きたかったら「マイマイ」をつけてみる。そんな小さなことでも、少しずつの積み重ねで、誰もが「歩く行為そのものを楽しめる」山が作れるのではないでしょうか。

ゆっくり山マイマイ入手方法

ゆっくり山マイマイ公式サイトのプレゼントフォームよりお申し込みください。
ゆっくり山マイマイ公式サイト
※活動を続けていくための、温かいご支援も受け付けています。詳しくは公式サイトをご覧ください。

angelinaさん闘病の取材記事はこちら

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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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