レインウェア、だけじゃダメ?

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このうち、“着るもの”といえばレインウェア。天候が変わりやすい山において、雨風から守ってくれる大事な服の1つですが、実は『外側から守る』という機能だけでは不十分なんです。登山には、レインウェア以外にどんな服が必要なのでしょうか? そこで登山ウェアのスペシャリスト、石井山専 新宿東口ビックロ店主任・冨田さんにアレコレ疑問をぶつけてきました!
レインウェア=最強、ではない!

冨田さん:そうですね。靴、ザック、レインウェアは登山する上で最低限必要なアイテムといえます。
編:で、「レインウェアをゲットした! よしこれで登山に行けるぞ!」という方結構いると思うんですよ。
冨田さん:なるほどなるほど。もしそういう方がいたら、「いやいやちょっと待って!」と言いたいですね。レインウェアって防水だし、確かに雨風からは守ってくれるんですけど、それだけだと登山は成り立たない。レインウェアは「それだけあれば良い」という最強ウェアではないんです。

冨田さん:ゴアテックス®に限らず、透湿性に特化した素材を使用しているとはいえ、レインウェアは結局ムレます。
編:えぇっ! ムレちゃうの!? それダメじゃないですかっ!
冨田さん:雨風とか、外側からはしっかり守ってくれますよ。でも、内側からはどういう事が起こっているかが結構抜け落ちちゃってる人は多いかもしれません。登山ってずっと動き続けるので、その間ずーっと汗をかいてるんですよ。だから、レインウェアの透湿性が追い付かなくてキャパオーバーになっちゃう。そうすると、ウェアの内部が梅雨時期のムレ感のように…
編:うわぁ~…最悪ですねそれは。
肌に接地するウェアが重要!
編:じゃあ、下に着ていく服も重要ってことだ。でも…正直なところ、レインウェアって結構高いじゃないですか。その他に靴とかもある、って考えると一気に揃えるのは難しいかも…お金的に…!(汗)冨田さん:初期投資、確かにかかりますよね。であれば、まずは手持ちのスポーツウェアで代用しても大丈夫です。速乾性があるポリエステルの化繊Tシャツとかウール素材のものとか。その中で特に「めちゃくちゃ汗っかきなんです!」という方は、せめて機能性アンダーウェアを導入してみるといいですよ。

編:へぇ~、これを着て、家にあるスポーツ用Tシャツを着ればいいんだ! ちなみに、下に機能性アンダーウェアを着ているから上は綿のTシャツでもいい、ということではない?

編:なるほど~…。で、一番下の肌面からあがってきた汗が蒸気になって、最終的にレインウェアの透湿性を介して外に抜ける、ってことですね。
冨田さん:そういうことです。レインウェアは、下に着る服との組み合わせで真価を発揮すると考えましょう。

ここまで来たら…登山用のズボンも覗いてみよう

冨田さん:はい。たまにGパンでもいいですか?って方、いらっしゃるんですよ。Gパンってコットンのものが多くて、さっきも言ったように汗が乾かない。最近だと伸縮性があるものも多いんですけど、何よりやっぱり重いんですよ。


冨田さん:はい。先ほどと同じく汗が乾きやすいという理由です。Gパンや綿のチノパンなんかはおすすめしません。生地が薄いものほど軽くなるので、大体そういったパンツは夏向けになります。
編:そっか。これ、じゃあ春とか秋も行きたいって方だと、選ぶパンツは変わってくるんですか?

タイツってどうなの?

冨田さん:はい。あとは道によってはどこから小枝や岩が飛び出してるかわからないので、肌の保護の目的もあります。ただ、ショートパンツは足さばきが良いというメリットもあるんですよ。
編:ショートパンツの下って、タイツを履いている人も多いですよね。タイツってみなさん、どういうものを選んでるんでしょう?
冨田さん:タイツは特に、関節が気になる方や膝がちょっと不安という方におすすめです。代表的なブランドがCW-X、C3fitの2つ。


編:タイツって、実際人気ですか?
冨田さん:人気ですよ。何度か山に行って膝が不安、という方が買っていくケースが多いです。ただ、お値段は安くないです。1万円から…という感じなので、始める前に買うというよりは、何度か山へ行ってみてから膝の負担を軽減したい方は、検討してみてもいいと思いますよ。
重要! レインウェアに保温力はない

冨田さん:フリースやダウンなどの保温着ですね。これも必ず忘れないでほしいです。登山用の保温着は、汗抜けも良いし軽くて暖かく、コンパクトになるものがほとんどです。いきなり揃えるのが難しい場合はお手持ちのもので、出来るだけコンパクトになるものを使用してください。
編:はぁ…でもなんかピンと来ないですね。ものすごい標高の高い山へ行くって場合は、何となく地上と気温差があって寒い…というのはイメージできるんですけど。夏場にそんなに高くない山に行く場合も保温着って必要ですか?
冨田さん:フリースはせめて持っていきましょう。例えば夏の東京で30℃の時、標高2,500mの富士山5合目で気温はひとケタ前後くらい。であれば、2,000m前後の山でも…
編:あ、それは要る! 初冬の東京ぐらいってことですよね。それは保温着必要ですね…!

編:レインウェアに保温性はないってこと?
冨田さん:その通り。ウィンドブレーカーと同じと考えましょう。なので、動きが止まる休憩の時に急に寒くなってきちゃったら、夏であってもやっぱり暖をとれるウェアは必要なんです。
それぞれがお互いの機能を補完し合うのが登山ウェア

レインウェア以外に、その下に着るウェアも重要ということについてお話をお伺いしてきました。要点をまとめると、
・レインウェアは結局ムレる! その下に着るウェアが重要
・綿はNG。化繊が基本、寒い時期はウール素材のものを選ぶ
・登山用のパンツは軽くて動きやすい! 汎用性が高いのは3シーズン用
・レインウェアに保温性はない。夏の低山でも保温着は持っていこう
以上がポイント。あとは、各メーカーによってサイズ感やデザイン、シルエットなどが異なるので自分の好みと照らし合わせてフィット感が良い物を選びましょう!
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