レインウェアだけじゃダメ!? 登山する時の服装について、ICIの人に聞いてきた

「レインウェアをゲットした! これで登山に行けるぞ~!」とお思いの方、登山はレインウェア以外のウェアも重要という事をご存知ですか? これから登山を始める方は、一気にアレコレと装備を揃えるのは大変…でも、『登山用』と謳われるものはそれ相応の理由があるんです。今回は、登山におけるウェアの重要性と着方について、スペシャリストにアレコレ聞いてきました!

アイキャッチ画像出典:PIXTA

レインウェア、だけじゃダメ?

登山する女性
出典:PIXTA
登山を始める時に準備しなくてはいけないもの、といえば何を思い浮かべますか? いつからか登山者の間では靴・ザック・レインウェア『三種の神器』と言われるようになり、一般的にはまずはこの3つを揃えるのがスタートラインです。

▼レインウェアはどうやって選ぶの? 詳しく見る

このうち、“着るもの”といえばレインウェア。天候が変わりやすい山において、雨風から守ってくれる大事な服の1つですが、実は『外側から守る』という機能だけでは不十分なんです。登山には、レインウェア以外にどんな服が必要なのでしょうか? そこで登山ウェアのスペシャリスト、石井山専 新宿東口ビックロ店主任・冨田さんにアレコレ疑問をぶつけてきました!

レインウェア=最強、ではない!

冨田さん
撮影:YAMA HACK編集部(教えてくれるのは石井山専 新宿東口ビックロ店主任・冨田さん)
編集部(以下:編):今日は、登山の服装について何が必要か、色々とお伺いしていきたいと思います! さて、「これから登山を始めるぞー!」という方って、よく「三種の神器は揃えよう!」って言われるじゃないですか。

冨田さん:そうですね。靴、ザック、レインウェアは登山する上で最低限必要なアイテムといえます。

編:で、「レインウェアをゲットした! よしこれで登山に行けるぞ!」という方結構いると思うんですよ。

冨田さん:なるほどなるほど。もしそういう方がいたら、「いやいやちょっと待って!」と言いたいですね。レインウェアって防水だし、確かに雨風からは守ってくれるんですけど、それだけだと登山は成り立たない。レインウェアは「それだけあれば良い」という最強ウェアではないんです。

透湿性キャパオーバーのイメージ図
作成:YAMA HACK編集部(透湿性がキャパオーバーのイメージ図)
編:最強ではない…。具体的にどういうことでしょうか?

冨田さん:ゴアテックス®に限らず、透湿性に特化した素材を使用しているとはいえ、レインウェアは結局ムレます。

編:えぇっ! ムレちゃうの!? それダメじゃないですかっ!

冨田さん:雨風とか、外側からはしっかり守ってくれますよ。でも、内側からはどういう事が起こっているかが結構抜け落ちちゃってる人は多いかもしれません。登山ってずっと動き続けるので、その間ずーっと汗をかいてるんですよ。だから、レインウェアの透湿性が追い付かなくてキャパオーバーになっちゃう。そうすると、ウェアの内部が梅雨時期のムレ感のように…

編:うわぁ~…最悪ですねそれは。

肌に接地するウェアが重要!

編:じゃあ、下に着ていく服も重要ってことだ。でも…正直なところ、レインウェアって結構高いじゃないですか。その他に靴とかもある、って考えると一気に揃えるのは難しいかも…お金的に…!(汗)

冨田さん:初期投資、確かにかかりますよね。であれば、まずは手持ちのスポーツウェアで代用しても大丈夫です。速乾性があるポリエステルの化繊Tシャツとかウール素材のものとか。その中で特に「めちゃくちゃ汗っかきなんです!」という方は、せめてドライレイヤーを導入してみるといいですよ。

ドライレイヤー
撮影:YAMA HACK編集部(手が透けるくらい薄手のウェア。写真はファイントラックのもの)
冨田さん:ドライレイヤーは、肌面の上、要は1番下に着るウェアです。名前の通り肌面をドライに保ってくれる役割を持っていて、かいた汗をどんどん外に逃がしてくれます。このドライレイヤーの上に着た化繊とかウールのTシャツに水を吸わせることで、汗をかいた時のベタベタした不快感がないんですよ。

編:へぇ~、これを着て、家にあるスポーツ用Tシャツを着ればいいんだ! ちなみに、下にドライレイヤーを着ているから上は綿のTシャツでもいい、ということではない?

ベースレイヤー
撮影:YAMA HACK編集部(ドライレイヤーの上に着るのは、化繊のシャツがおすすめ)
冨田さん:はい、化繊のものを推奨しています。なぜ綿をおすすめしないかというと、吸水力はあるけど、速乾性と保温力がないんです。つまり乾きづらくて、ずっと濡れたままということ。ドライレイヤーは結局次の層に汗を受け渡すので、その受け取る層も早く乾いてくれないと結局ムレるし、濡れた所は冷えを感じるんです。

編:なるほど~…。で、一番下の肌面からあがってきた汗が蒸気になって、最終的にレインウェアの透湿性を介して外に抜ける、ってことですね。

冨田さん:そういうことです。レインウェアは、下に着る服との組み合わせで真価を発揮すると考えましょう。

ドライレイヤー
撮影:YAMA HACK編集部(店頭に置いてあったのは他にミレー、ザ・ノース・フェイス、オンヨネ)

ここまで来たら…登山用のズボンも覗いてみよう

冨田さん
撮影:YAMA HACK編集部
編:今教えてもらった事だけだと…下半身は置き去りですね。ここまで来たら、きっと登山に適したパンツもあるんですよね?

冨田さん:はい。たまにGパンでもいいですか?って方、いらっしゃるんですよ。Gパンってコットンのものが多くて、さっきも言ったように汗が乾かない。最近だと伸縮性があるものも多いんですけど、何よりやっぱり重いんですよ。

パンツのストレッチ性
撮影:YAMA HACK編集部(登山用のパンツはストレッチ抜群!)
冨田さん:例えば人気のモデルが…ザ・ノース・フェイスのアルパインライトパンツ。これすごく軽いんですよ。岩を乗り越える時って膝を上げるので、ストレッチがしっかり効いているものの方がストレスを感じにくい。あとは物によっては膝部分が立体裁断になっていて、しゃがみやすいし膝周りが楽です。

膝の立体裁断
撮影:YAMA HACK編集部(膝部の立体裁断は、足の曲げ伸ばしがしやすい)
編:確かにめちゃくちゃ軽いですね! パンツも化学繊維がほとんどですか?

冨田さん:はい。先ほどと同じく汗が乾きやすいという理由です。Gパンや綿のチノパンなんかはおすすめしません。生地が薄いものほど軽くなるので、大体そういったパンツは夏向けになります。

編:そっか。これ、じゃあ春とか秋も行きたいって方だと、選ぶパンツは変わってくるんですか?

パンツのぶ厚さの違い
撮影:YAMA HACK編集部(左が3シーズン用、右が夏用。生地の薄さが異なる)
冨田さん:そうですね。完全に夏だけに照準を絞ったものが一番薄くて軽いんですが、春や秋も使いたいという場合はいわゆる『3シーズン用』のパンツもあります。一番幅広い季節使えて汎用性が高いのがコレ。冬だと、裏地がフリースだったり地厚のものなど、季節によって様々ありますよ。

タイツってどうなの?

登山する女性
出典:PIXTA
編:日焼けとか、虫対策という意味ではさっきの長袖の話と同じで、長ズボンがいいんですかね。

冨田さん:はい。あとは道によってはどこから小枝や岩が飛び出してるかわからないので、肌の保護の目的もあります。ただ、ショートパンツは足さばきが良いというメリットもあるんですよ。

編:ショートパンツの下って、タイツを履いている人も多いですよね。タイツってみなさん、どういうものを選んでるんでしょう?

冨田さん:タイツは特に、関節が気になる方や膝がちょっと不安という方におすすめです。代表的なブランドがCW-XC3fitの2つ。

CW-Xのタイツ
撮影:YAMA HACK編集部(CW-Xのタイツにはテーピングの機能がある)
冨田さん:CW-Xはワコール社が出していて、テーピングの機能が搭載されています。このテーピング作用が膝、ものによっては腰・股関節の保護をしてくれるんです。下山の時に膝に不安がある方はこういう機能性タイツを履くと、全然違ってきます。あと筋肉のブレも軽減されるので、筋肉痛の軽減にも繋がりますよ。

c3fit そんなに関節に不安があるわけではない、という方はC3fitがいいかと思います。膝の軽い保護をしつつ、段階着圧などの機能もあるので血流が気になる方にもおすすめですね。サポート力が一番あるのはCW-Xです。

編:タイツって、実際人気ですか?

冨田さん:人気ですよ。何度か山に行って膝が不安、という方が買っていくケースが多いです。ただ、お値段は安くないです。1万円から…という感じなので、始める前に買うというよりは、何度か山へ行ってみてから膝の負担を軽減したい方は、検討してみてもいいと思いますよ。

重要! レインウェアに保温力はない

フリース 編:ふむふむ…では、他に「これは重要だよ!」っていうウェアってありますか?

冨田さん:フリースやダウンなどの保温着ですね。これも必ず忘れないでほしいです。登山用の保温着は、汗抜けも良いし軽くて暖かく、コンパクトになるものがほとんどです。いきなり揃えるのが難しい場合はお手持ちのもので、出来るだけコンパクトになるものを使用してください。

編:はぁ…でもなんかピンと来ないですね。ものすごい標高の高い山へ行くって場合は、何となく地上と気温差があって寒い…というのはイメージできるんですけど。夏場にそんなに高くない山に行く場合も保温着って必要ですか?

冨田さん:フリースはせめて持っていきましょう。例えば夏の東京で30℃の時、標高2,500mの富士山5合目で気温はひとケタ前後くらい。であれば、2,000m前後の山でも…

編:あ、それは要る! 初冬の東京ぐらいってことですよね。それは保温着必要ですね…!

フリースを着た男性
出典:PIXTA(フリースを着た登山者)
冨田さん:そう。あと、レインウェアって風を遮ってくれるので、体に風が当たらないだけで冷えは軽減できるんですが、それ以上はないんです。

編:レインウェアに保温性はないってこと?

冨田さん:その通り。ウィンドブレーカーと同じと考えましょう。なので、動きが止まる休憩の時に急に寒くなってきちゃったら、夏であってもやっぱり暖をとれるウェアは必要なんです。

それぞれがお互いの機能を補完し合うのが登山ウェア

仙ノ倉山稜線から見る初夏の谷川連峰縦走路
出典:PIXTA(仙ノ倉山稜線から見る初夏の谷川連峰縦走路)
冨田さん:山登りって登りはしんどいんですが、それをいかに快適にするかがウェアの役目。最初揃えるとなるとお金かかるけど、山を登るうちに徐々に色々と揃えていくのがおすすめです。そうやって自分なりの快適さを実現しつつ、美味しいものを食べたり良い景色を見る! 登山はやっぱりこれが醍醐味です!




レインウェア以外に、その下に着るウェアも重要ということについてお話をお伺いしてきました。要点をまとめると、

・レインウェアは結局ムレる! その下に着るウェアが重要
・綿はNG。化繊が基本、寒い時期はウール素材のものを選ぶ
・登山用のパンツは軽くて動きやすい! 汎用性が高いのは3シーズン用
・レインウェアに保温性はない。夏の低山でも保温着は持っていこう

以上がポイント。あとは、各メーカーによってサイズ感やデザイン、シルエットなどが異なるので自分の好みと照らし合わせてフィット感が良い物を選びましょう!

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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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