編:最強ではない…。具体的にどういうことでしょうか?
冨田さん:ゴアテックス®に限らず、透湿性に特化した素材を使用しているとはいえ、レインウェアは結局ムレます。
編:えぇっ! ムレちゃうの!? それダメじゃないですかっ!
冨田さん:雨風とか、外側からはしっかり守ってくれますよ。でも、内側からはどういう事が起こっているかが結構抜け落ちちゃってる人は多いかもしれません。登山ってずっと動き続けるので、その間ずーっと汗をかいてるんですよ。だから、レインウェアの透湿性が追い付かなくてキャパオーバーになっちゃう。そうすると、ウェアの内部が梅雨時期のムレ感のように…
編:うわぁ~…最悪ですねそれは。
肌に接地するウェアが重要!
編:じゃあ、下に着ていく服も重要ってことだ。でも…正直なところ、レインウェアって結構高いじゃないですか。その他に靴とかもある、って考えると一気に揃えるのは難しいかも…お金的に…!(汗)
冨田さん:初期投資、確かにかかりますよね。であれば、まずは手持ちのスポーツウェアで代用しても大丈夫です。速乾性があるポリエステルの化繊Tシャツとかウール素材のものとか。その中で特に「めちゃくちゃ汗っかきなんです!」という方は、せめて機能性アンダーウェアを導入してみるといいですよ。
冨田さん:ファイントラックのドライレイヤーなどが有名ですが、このウェアは肌面の上、要は1番下に着るウェアです。名前の通り肌面をドライに保ってくれる役割を持っていて、かいた汗をどんどん外に逃がしてくれます。この機能性アンダーウェアの上に着た化繊とかウールのTシャツに水を吸わせることで、汗をかいた時のベタベタした不快感がないんですよ。
編:へぇ~、これを着て、家にあるスポーツ用Tシャツを着ればいいんだ! ちなみに、下に機能性アンダーウェアを着ているから上は綿のTシャツでもいい、ということではない?
冨田さん:はい、化繊のものを推奨しています。なぜ綿をおすすめしないかというと、吸水力はあるけど、速乾性と保温力がないんです。つまり乾きづらくて、ずっと濡れたままということ。機能性アンダーウェアは結局次の層に汗を受け渡すので、その受け取る層も早く乾いてくれないと結局ムレるし、濡れた所は冷えを感じるんです。
編:なるほど~…。で、一番下の肌面からあがってきた汗が蒸気になって、最終的にレインウェアの透湿性を介して外に抜ける、ってことですね。
冨田さん:そういうことです。レインウェアは、下に着る服との組み合わせで真価を発揮すると考えましょう。
ここまで来たら…登山用のズボンも覗いてみよう
編:今教えてもらった事だけだと…下半身は置き去りですね。ここまで来たら、きっと登山に適したパンツもあるんですよね?
冨田さん:はい。たまにGパンでもいいですか?って方、いらっしゃるんですよ。Gパンってコットンのものが多くて、さっきも言ったように汗が乾かない。最近だと伸縮性があるものも多いんですけど、何よりやっぱり重いんですよ。
冨田さん:例えば人気のモデルが…ザ・ノース・フェイスのアルパインライトパンツ。これすごく軽いんですよ。岩を乗り越える時って膝を上げるので、ストレッチがしっかり効いているものの方がストレスを感じにくい。あとは物によっては膝部分が立体裁断になっていて、しゃがみやすいし膝周りが楽です。
編:確かにめちゃくちゃ軽いですね! パンツも化学繊維がほとんどですか?
冨田さん:はい。先ほどと同じく汗が乾きやすいという理由です。Gパンや綿のチノパンなんかはおすすめしません。生地が薄いものほど軽くなるので、大体そういったパンツは夏向けになります。
編:そっか。これ、じゃあ春とか秋も行きたいって方だと、選ぶパンツは変わってくるんですか?
冨田さん:そうですね。完全に夏だけに照準を絞ったものが一番薄くて軽いんですが、春や秋も使いたいという場合はいわゆる『3シーズン用』のパンツもあります。一番幅広い季節使えて汎用性が高いのがコレ。冬だと、裏地がフリースだったり地厚のものなど、季節によって様々ありますよ。
タイツってどうなの?
編:日焼けとか、虫対策という意味ではさっきの長袖の話と同じで、長ズボンがいいんですかね。
冨田さん:はい。あとは道によってはどこから小枝や岩が飛び出してるかわからないので、肌の保護の目的もあります。ただ、ショートパンツは足さばきが良いというメリットもあるんですよ。
編:ショートパンツの下って、タイツを履いている人も多いですよね。タイツってみなさん、どういうものを選んでるんでしょう?
冨田さん:タイツは特に、関節が気になる方や膝がちょっと不安という方におすすめです。代表的なブランドがCW-X、C3fitの2つ。
冨田さん:CW-Xはワコール社が出していて、テーピングの機能が搭載されています。このテーピング作用が膝、ものによっては腰・股関節の保護をしてくれるんです。下山の時に膝に不安がある方はこういう機能性タイツを履くと、全然違ってきます。あと筋肉のブレも軽減されるので、筋肉痛の軽減にも繋がりますよ。
そんなに関節に不安があるわけではない、という方はC3fitがいいかと思います。膝の軽い保護をしつつ、段階着圧などの機能もあるので血流が気になる方にもおすすめですね。サポート力が一番あるのはCW-Xです。
編:タイツって、実際人気ですか?
冨田さん:人気ですよ。何度か山に行って膝が不安、という方が買っていくケースが多いです。ただ、お値段は安くないです。1万円から…という感じなので、始める前に買うというよりは、何度か山へ行ってみてから膝の負担を軽減したい方は、検討してみてもいいと思いますよ。