【アルミ vs チタン vs ステンレス】一番”おいしいご飯が炊ける”メスティンはどれ? 素材ごとの旨味成分を調べてみた

2022/09/21 更新

メスティンの素材によってご飯のおいしさは変わるのでしょうか? 今回はアルミニウム、チタニウム、ステンレスのメスティンを素材別に徹底比較。お米マイスターと専門機関の協力を得て、炊きやすさと食味値を調査。メスティン選びに「米の食味」という新たな評価基準が生まれる企画です。

さらに、美味しく炊けるメスティンの炊飯方法も教えていただきました!これであなたもメスティンマスターに?!

制作者

フリーランスライター

大城 実結

フリーランスライター。自転車や登山など野山にまじりて日々生きている。温泉とお酒がある場所へ行きがち。アウトドア雑誌やWebにて執筆中。

大城 実結のプロフィール

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アイキャッチ画像撮影:筆者

メスティンの素材でお米のおいしさが変わる?!

スリーコインズ メスティン詳細
撮影:筆者
山ごはんを作る時に便利な調理器具のひとつ、メスティン
簡単に米を炊くことができるのはもちろん、煮たり焼いたり、燻したりと、多様な調理法ができる万能ギアです。近年では100円均一などでも販売されたり、キャンプでも使う人が増えたりと、一度は目にしたことが登山者も多いのではないでしょうか。

そんなメスティン。熱伝導率も良く、軽量で持ち運びしやすいアルミニウム(以下、アルミ)のものが一般的です。
……が、中にはチタニウム(以下、チタン)やステンレスなど別素材のアイテムも。もちろん、素材が変われば重さも異なるため、使うシーンが変わってきます。

しかし気になったのが……、どのメスティンが一番おいしく調理できるのかということ。素材によっておいしさは変化するのでしょうか…?

メスティン炊飯と固形燃料用の五徳
出典:PIXTA
そこで今回は、「メスティンといったら、まずは炊飯!」という事で、お米に注目。

お米の専門家、さらに食味分析の専門機関である『サタケ穀物分析センター』の協力のもと、メスティンの代表的な素材であるアルミ、チタン、ステンレス3種の炊きやすさ&おいしさ調査してみました。
メスティン選びに「米の食味」という新たな評価基準が生まれる、大調査企画が始まります!

お米のおいしさは何で決まる?

生米と炊飯したお米
出典:PIXTA
まずはお米をおいしく感じる仕組みについて見ていきましょう。
教えてくださったのは、お米の専門家「五ツ星お米マイスター」の渡辺米穀店・渡邊正明さんです。
\教えてくれた専門家/
お米マイスターの渡邊正明さん
提供:渡辺米穀店
五ツ星お米マイスター・渡邊正明さん
創業107年目を迎えた愛知県岡崎市にある渡辺米穀店の4代目。定番米から量販店にはないニッチなお米まで合計80種類ほどを販売する。
アウトドア飯にぴったりなお米をブレンドした「キャンプ米」など、独自のブレンドサービスも展開。個人的に最近気になるお米は、高知発の「にこまる」と愛知発の「女神のほほえみ」。
「渡辺米穀店」公式サイト
──私たちが感じるお米の「おいしさ」は、どんな成分によるのですか?
お米のおいしさには「食味」と呼ばれる3つの要素
・水分値
・たんぱく値
・でんぷん値
が深く関係しています。

──それぞれの要素に、”理想の数値”とかはあるのでしょうか?
ありますよ!
まず水分値は14.5~15%が良く、たんぱく値の平均値は6.8%でそれよりも低い方がおいしいとされています。

また、でんぷんにはアミロースとアミノペクチンという2種類があり、アミロース値が低いとモチモチになります。
例えばもち米だとアミロースは0%、インディカ米のようなパラパラとしたお米になると、アミロース値は高いんですね。

──でんぷん値に関しては、それぞれの好みによって選び方が変わりそうですね。
そうですね。
もっちり系が好きな人もいれば、ぱらっと系が好きな人もいるので、一概に「これがおいしいですよ!」とは言えませんが、知っておくことで好みに合うお米を選びやすくなるかと思います。

素材別の食味予想は、専門家にも難しい

炊飯器で米を裏打ちする
出典:PIXTA
一般的な炊飯の場合、土釜と羽釜による炊き上がりの違いは熱伝導率によるものと言われています。

土釜は熱伝導率が低いため、温まりにくく冷めにくいのが特徴。炊飯には時間がかかりますが、余熱によって余計な水分を飛ばしてくれるためふっくらとした仕上がりに。
対する羽釜は熱伝導率が高く、熱しやすく冷めやすいのが特徴。短時間での炊飯が可能で、均一に加熱されるため炊きムラが発生しづらいのもポイントです。

この熱伝導率の観点から各素材を比較してみると、このような数値に。
  • アルミ:239(W/m.k)
  • チタン:22(W/m.k)
  • ステンレス:16(W/m.k)
*数値は高ければ高いほど熱伝導率が良い
そのため、おいしく炊き上がる順としては、
アルミ>チタン>ステンレス
もしくは、
チタン>アルミ>ステンレス
と私は予想します。
ですが、実は”チタン”については未知数で……。

軽量なチタンでこれでおいしく炊けるのなら、登山にもかなり良いですよね!しかし実際に炊いてみないと何ともいえません。

使用したメスティン3種

今回、調査に使用したメスティンはそれぞれこちらです。

▼アルミメスティン:トランギア
アルミニウム製メスティン
撮影:筆者
メスティンの生みの親こと王道トランギアをノミネート。筆者も日々お世話になっております。

▼チタンメスティン:Boundless Voyage
チタン製メスティン
撮影:筆者
Amazonで発見したチタンメスティンで、お値段は6000円ほど。エバニューのチタンマルチボックスよりもリーズナブルだったので、今回はこちらでチャレンジ。

▼ステンレスメスティン:LIOOBO アウトドアクッカーセット
ステンレス製メスティン
撮影:筆者
意外と見つからなかったのがステンレスのメスティン。こちらもAmazonで発見したアウトドアクッカーセットです。
メスティンとは少々形状が異なるものの、容量と加熱OKとのことから選びました。

「専門機関」に調査を依頼。結果は……?!

お米マイスターでさえ、難しいと首を傾げる「メスティンの素材別の味わい」。個人の好みではなく、”数値”としてこの旨味を分析するため、食味分析の専門機関「サタケ穀物分析センター」に調査を依頼しました。
今回は実際に3つのメスティンで炊いたご飯を、5つの観点から総合的に評価
▼外観(10点満点)ごはんの外観を、照り具合(反射光)で判定する。
照り具合とは、ご飯中のデンプン糊化度合によって変化し、ご飯のα化が進んでいるほどキラキラ輝いて見える。
▼硬さ(10点表示、5点が最良)主に、米中のたんぱく質含有量によって変化する。ご飯の硬さを光学的に測定する。
▼粘り(10点満点)アミロース含量によって変化する。ご飯の粘りを光学的に測定する。
▼バランス度(10点満点)硬さと粘りのバランス度合い。
粘りを硬さの数値で割り、計数化している。この数値が高い方が食感が良いことになる。
▼食味値(100点満点)ご飯のおいしさを総合的に評価する。
反射光光量が少なく、透過光光量が多い、つまり光沢があり透明に近い状態のものが糊化が良く進んでおり、良食味と判定する。
高まる鼓動を抑えつつ、待つこと数週間……。まずは気になる結果を発表!

サタケ穀物分析センター、食味分析の結果
画像:サタケ穀物分析センター「食味分析結果」より
どのチャートグラフも良いバランスで示されていますが、僅差ながら抜きん出ているのがなんと「チタンメスティン」という結果に。この結果を見て、渡邊さんはこう考察します。
それぞれの数値やバランス度の数値も見ても、チャートグラフが均等になっていますので、どれもお米の味や特徴を壊すことなく炊けていると思います。
その中でもチタンは、少し柔らかめに炊け照り具合もよく、お米の持つ特徴をよく引き出すことができたのではないでしょうか。

美味しさなら”チタン”、でも”炊きやすさ”では?

美味しさの観点からはチタンが一歩リードという結果に。しかし、サタケさんからは”チタンは焦げ付きやすかった”というコメントも。
そこで、3種のメスティンを同一条件で、なおかつ固形燃料バーナーの2通りの加熱方法にて調理してみました。その結果……。

完全無欠な【アルミメスティン】

アルミニウム製メスティンの底はほぼ焦げ付きなし
撮影:筆者
固形燃料、バーナーともに「良く炊けました」とアルミメスティン。
固形燃料で加熱したら、底にうっすらとお焦げができる程度でおいしく炊けました。バーナーでも問題ありませんね。
強いて言うのならば、ふわっとした感じ、少し柔らかめに炊けた気もします

固形燃料は焦げ付くも、バーナーでは良好!【チタンメスティン】

チタン製メスティンの底はほぼ焦げ付きなし
撮影:筆者
そしてチタンはというと、固形燃料だと底が焦げ付く。バーナーで火加減調整すれば炊ける」
固形燃料だと、熱された部分がかなり焦げてしまいました
バーナーパッドを敷き、火力を分散させつつ火加減を調整しながら加熱してみると、アルミと同じくおいしく炊くことができました

固形燃料だと炊飯中止【ステンレス メスティン】

ステンレス製メスティンの底には焦げ付きが
撮影:筆者
「固形燃料だと勢いよく吹きこぼれてしまい、炊飯ができませんでしたという結果になってしまったステンレスのメスティン。
バーナーで火加減を調整しても、底に焦げ付く仕上がりに。お米は炊けるものの、少々難ありという結果になりました。
固形燃料バーナー
アルミ
チタン
ステンレス×
「なかなか興味深い結果となった」と、渡邊さんも言います。
アルミであれば火加減も関係なく炊き上がるので楽ですね。他は弱火でないと焦げてしまうため、固形燃料での炊飯には向きません。

そのため『炊きやすさ』という観点ではアルミメスティンに軍配が上がる結果に!

広がる素材別メスティンの選び方!

バーナーとメスティン
出典:PIXTA
今回の調査から判明したのは、
・食味重視なら、「チタン」メスティン
・炊きやすさ重視なら、「アルミ」メスティン
ということ。
チタンメスティンがどうして少し柔らかめに炊けたのか、科学的な理由は分かりません。
お値段や取り扱いやすさならアルミメスティン、バーナーで調理+バーナーパッドを活用すればチタンメスティンは究極の味に辿り着けると思いました。

なお、どの素材のメスティンの食味指標も微細な差です。もちろん手軽にそしておいしく炊けるメスティン。
その上でもっとこだわりたい人は、ぜひ素材別の比較&試食に挑戦してみてくださいね!

 

最後に、お米マイスター・渡邊さんに、メスティンを使った炊飯方法を教えていただきました。

「お米マイスター・渡邊式」おすすめのメスティン炊飯方法

米の重さはスケールできちんと計る
撮影:筆者
お米マイスター曰く、おいしく炊き上げるポイントは
①計量
②洗米
③浸水
④炊き上がり
の4点。それぞれのコツを渡邊さんに教えてもらいます。

①米と水の量は的確に

生米150gを計量する
撮影:筆者
お米はスケールで、水は計量カップで計るのがおすすめです。目分量でやってしまう人もいるのですが、しっかり計った方が確実においしく炊けます。

生米1合は約150g。事前に自宅で計量し、小分けにしておけば現地でも楽ちんです。
大抵メスティンでは水分量を金具位置で計りますが、確実においしく炊きたいのであれば、計量がおすすめ。1合に対して200mlが目安です。

②洗米しすぎもNG

渡邊さん曰く、洗米にもコツがあるといいます。
1回目の洗米にはミネラルウォーターなど、おいしいお水を使うと良いと言われています。
最初はサッと洗いすぐ流します。2~3回目も優しく洗い上げるように。逆に洗いすぎるのはNGです。

少し水が白く濁っている方が溶け出たでんぷんなど栄養分も含まれるので、旨味があって奥深い味わいになります。

③浸水時間は季節によっても変化する

お米を浸水させる
撮影:筆者
メスティン炊飯でも欠かせない浸水工程は、季節によってベストの浸水時間が変化します。
夏は30分から1時間冬は1時間ほど浸水させると良いでしょう。

④余熱後はふんわりお米をほぐして

ふんわりと混ぜるのがコツ
撮影:筆者
加熱をした後にタオルなどにくるんで、ひっくり返して蒸らし完成! ……の前に、おいしく頂くには「ほぐし」も大切な工程です。
全体をほぐすことで無駄な水分が飛び、つやっとした仕上がりになります。ほぐす時も、粒を潰さないようにふんわりと返すイメージで。このひと手間がかなーり重要なんです。


 

こだわりの炊飯でもっと山ごはんを楽しもう

メスティンで炊き立てのお米
撮影:筆者
メスティンに素材別に食味と炊きやすさ、そしてお米マイスターによる炊き方を教えてもらった今回。山行で疲れた体に沁み渡るのは、やはり炊き立ての白米です。

ホカホカのおいしいご飯を味わいに、近所の山へ「こだわりの炊飯登山」に出かけるのも乙ですよ。



 

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