【最大5時間も変化!】日が短くなる秋冬。夏との日照時間との違い&リスクを徹底調査してみた

2021/11/02 更新

夏山から登山を始めた場合、夏と秋冬とでは“日照時間の差”があることを、意外と見落としがち。でも行動できる時間が◯時間も短くなるとしたら……。リスクとして見落としがちな「日照時間」に着目し、そのメカニズムや季節による時間差、実際に日没後の山を登って感じた危険などを徹底調査していきます。


アイキャッチ画像撮影:筆者

秋冬の登山。夏との違いは何だろう?

出典:PIXTA
秋も深まり、少しずつ冬の気配が近づいてきました。これからの季節はゆったりと静かな登山が楽しめるのも魅力。高い山では冠雪のニュースも聞こえはじめ、里山でも紅葉が見頃を迎える頃ではないでしょうか。

その一方で、秋冬の登山には夏とは異なるリスクがあります。

見落としがちなのが「日照時間の違い」

出典:PIXTA
夏と秋冬の山の大きな違いは「気温」「気象」「日照時間」の3つ。

気温:高い山では10月頃から氷点下になる日も増え、雪が降ることも。

気象:秋冬の天気は急変しやすい。10月中旬以降は急激に発達する「温帯低気圧」にも注意。

日照時間:秋が深まるにつれて日中の時間(日照時間)が短くなっていく。15時くらいには薄暗く感じる。

なかでも、感覚的にはわかっていても見落としがちになってしまうのが日照時間の違いです。

今回はこの「日照時間」に的を絞り、夏と秋冬との違いやそれによって考えられるリスクを調査してみました。

「夏至」と「冬至」が日照時間のターニングポイント

まずは、“なぜ季節によって日照時間の違いがあるのか”という部分から掘り下げていきたいと思います。

夏至と冬至
作成:筆者 イラスト:Ilust AC
季節による日照時間の違いを知る上で、大切なポイントになるのが「夏至(げし)」と「冬至(とうじ)」。ニュースなどでもこの言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。

夏至とは、1年のなかで太陽が最も空高く昇り、最も日中の時間が長くなる日のこと。冬至はその逆で、1年で最も日中の時間が短い日を指します。夏至は毎年6月21日もしくは22日、冬至は12月21日もしくは22日の周期で訪れます。

地球の“傾き”が日照時間の変化を生む

作成:筆者(地球が自転を一周すると1日。地球が太陽を一周すると1年になります)
このように日照時間が変化していく要因は、地球の自転と公転、傾きが関係しています。地球の自転軸は北極と南極を基点に23度ほど傾いた状態になっていて、常に左回りで自転。そこに太陽を周回する公転が加わることで、太陽と地球の位置関係によって、日が長い場所や、ずっと日陰の場所などが生まれます。

南極や北極で起こる「白夜」や「極夜」がその最たる例です。

作成:筆者
そのため北半球に位置する日本は、北極が太陽側を向けば日照時間が長くなり、太陽の反対側を向けば日照時間は短くなることに。この現象が「夏至」と「冬至」というように呼ばれるようになりました。

出典:PIXTA
ちなみに日本に美しい四季があるのもこのメカニズムが関係しています。もし地球が傾いていなければ、一年中昼と夜の時間は変わることがなく、さらには季節も存在しなかったそうです。

さまざまな偶然が重なって、自然は成り立っているんですね。

こんなに違う!夏至と冬至の日照時間

さて、日照時間の原理がわかったところで、次は季節による日照時間の違いをみていきましょう。
東京都の日照時間
作成:筆者 参照:日の出日の入り時刻サイト
上の図は2021年の東京都の日照時間を例にしたもの。日照時間は夏至と冬至を折り返し地点にして変化していきます。

ここで注目したいのが、夏至と冬至の日中の時間です。

夏至は[日出時刻 4:26 日没時刻 19:01]で日照時間は14時間35分
冬至は[日出時刻 6:48 日没時刻 16:33]で日照時間は9時間45分

この時間差を計算してみると……
なんと約5時間もの日照時間の違いが!

これを登山の行程と照らし合わせてみると……

今回は例として、[6:00スタート→16:00ゴール]の10時間コース(休憩時間含む)の山を歩いたとします。
夏至であれば、スタート時にはすでに日が昇っており、ゴール時も日没まで3時間ほどの余裕が。これなら多少コースタイムを遅れても心配はないように感じます。

一方、冬至の場合は……
スタート時は日が昇る前からの動き出しで、ゴール時には日没寸前の状態に。これでは計画に遅れが出た場合、日没後に行動する状況もあり得ます。
このように同じ山・同じコースタイムであっても、日照時間によって大きくリスクが変わってくることがわかります。

ここからは実際に日の出前・日没後の山を歩き、その危険と対策を検証してみました。

日が短いことによる、登山のリスクを検証してみた

撮影:筆者(この時期の日の出は5:50頃、日没は17:15頃でした)
10月上旬、北アルプスでのテント泊や低山登山のなかで、日の出前や日没後の登山でどんな危険があるのかを体感してみました。

その中でわかったポイントは4つ

①日没30分後にはヘッドライト必須
②急激に気温が下がる
③焦りから判断が鈍る
④場所によって明るさも違う

それぞれ詳しくみていきましょう。

①ヘッドライトなしは20〜30分がリミット!

まずは日没後にどれくらいまでライトなしで歩けるのか試してみました。

<日没直後>
撮影:筆者
若干の薄暗さはありますが、まだヘッドライトがなくてもあまり支障を感じません。

<日没15分後>
撮影:筆者
空はまだ鮮やかな夕焼け色ですが、山中はかなり暗くなってきました。かろうじて登山道も見えていますが、すでにヘッドライトを点けてもいいかなと感じます。

<日没25分後>
撮影:筆者(体感的にはこの写真よりも暗く感じました)
まだかろうじて見えないこともないのですが、登山道がはっきりわからず、石や木などでつまずく危険を感じたため、日没後25分でヘッドライトを点灯しました。

<日の出1時間前>
撮影:筆者(日の出の1時間ほど前から空は明るくなってくるが……)
ちなみに、日の出前もヘッドライトなしで歩けるようになったのはご来光の30分前ほど。日の出前、日の入後ともに20〜30分がヘッドライトの有無のポイントとなってきそうです。

②夕暮れとともに急激に気温が低下

日没が近づくにつれて気温が急に下がることも覚えておきたいポイントです。気温の変化をチェックしてみました。

<日没30分前>
撮影:筆者
時計の温度計で13.9℃が測定されていましたが……

<日没直後>
撮影:筆者(日が沈みはじめた頃、空気が冷たく変わる感覚がありました)
気温はガクッと下がって10.8℃に。

<日没30分後>
撮影:筆者
それから30分後には10.1℃にまで気温が低下。たった1時間の間に4℃近い気温の変化がありました。

今回は晴れた日に調査したこともあり、気温の落差が激しかったように感じます。曇りや雨などの日はもう少し緩やかに気温が下がっていくことが考えられます。

③夕暮れが近づくと、焦る

撮影:筆者
周辺が暗くなってくると「早く安心できる場所へ帰りたい……」「このままだとマズイ……」というような、焦り・不安が生まれてくるのを感じました。

撮影:筆者
そのような状況下では、正常な判断ができなくなってしまう可能性も。分岐点での間違い、道迷いなど、焦り・不安から判断を怠り、遭難に発展する危険性も充分に考えられます。

撮影:筆者
また、暗いなかでの歩行は足元にも注意。暗闇では日中と歩いている感覚が異なります。もし日没を過ぎてしまっても、まずは落ち着いて行動することが大切です。

④場所によって明るさは違う

撮影:筆者(左:樹林帯、右:視界がひらけた高山帯)
上の2枚の写真はどちらも同時期の日没直後に撮影したもの。ここから同じ時間帯や天気であっても、樹林帯にいるか、稜線などの視界が開けた場所にいるかどうかで、明るさが異なることがわかります。

「樹林帯にいるから、早めに暗くなりそうだな」など、環境による明るさの違いも頭に入れておくと良さそうです。

短い日照時間を攻略せよ!秋冬の山を楽しむ4つのポイント

最後に、今回調査してわかった《秋冬の山を楽しむ4つのポイント》をご紹介します。

1.そもそもの計画見直しを

出典:PIXTA
登山は早出早着が基本と言われるように、到着予定時刻が15時を過ぎてしまう場合は、計画そのものを見直した方がよいでしょう。過去に「夏山で17時着でも問題なかった」という経験があっても、秋冬で同じような行動計画はとても危険です。

撮影:筆者
逆を言えば、ゴールが遅くなるくらいならスタートを早めた方が正解です。理由はあらかじめ「暗いかもしれない」とわかっているのであれば、焦りや不安も少なく、備えができるからです。とはいえ、暗いなかでの行動になることもあるので、道間違いや転倒などに注意しましょう。


2.ヘッドライトは必携!200ルーメン以上のものを

出典:PIXTA
ヘッドライトは日帰り登山でも必携のアイテムですが、光量の単位「ルーメン」が低いものは早朝や夜間登山では使い物にならないこともあります。多少価格は上がってきますが、150ルーメン〜200ルーメン程度のヘッドライトを用意しておきましょう。また遠くまで状況を確認できるという点で、照射距離が長く、スポットビームモードのあるものがおすすめです。

今では500ルーメン以上の高出力モデルも登場していますが、そこまでの光量はほとんど必要ないのが正直なところ。電池の消耗が激しいデメリットもあるので注意が必要です。

3.最低気温を想定した防寒着を

撮影:筆者(晩秋の穂高岳。あまりの寒さに本来NGだがダウンパーカーを着用して行動)
気温が低く風が冷たい秋冬の山において、保温着(サーマルレイヤー)は超マストアイテム。防寒を怠ると「低体温症」などの危険も高まります。

秋冬の登山では、通常のレイヤリングのほか、アウターレイヤーの上からでも羽織れるダウンや中綿のウエアなどの保温性の高いアイテムを用意しておきましょう。また、もしものために、エマージェンシーシートやツェルトなども携帯できると◎!

4.スマホ用マップをダウンロードしておこう

撮影:筆者
暗い場所では紙の地図は見にくく、焦りや不安などで正常な判断ができない場合もあります。そんな時に役立つのがスマホ用の登山マップ。一目で現在地が把握できるので、道迷いの防止や不安の軽減にもつながります。

登山前はマップのダウンロード忘れに注意。登山口に着いてからでは、圏外でダウンロードできないこともあります。


日照時間の違いによるリスクを知り、秋冬の登山を楽しもう!

撮影:筆者
秋冬は静かで心地よい山登りを楽しめますが、日照時間や低気温・環境などを鑑みると、夏よりもハードルが高い季節と言えます。

ただ、そこにあるリスクを把握し対策することで、安全に楽しむことは充分に可能です。今回は日照時間に絞った内容でしたが、秋冬登山のリスクを知り、安全登山に役立てていただければと思います。

秋冬の山には、夏とはまた一味違う、たくさんの魅力が溢れていますよ。

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橋爪 勇志

日本アルプスに囲まれた、長野県の伊那谷生まれ。登山好きな母親に連れられ、山を駆け巡って育つ。アルパインクライミングや沢登り、冬山縦走など、ちょこっとスパイスの効いた登山が大好き。

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