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手本にした料理がガチすぎる「世界の煮込み」シリーズ

ある山に、それはそれは小洒落たアウトドア飯を食べている人がいました。
「あらまあ、おいしそう。とはいえ、ちょっと良い感じのレトルトカレーでしょ〜」
と、のぞき込んだ先に飛び込んできたのは……。

ごろっとした牛肉を赤ワインを使ったソースで煮込みました。フランスのブルゴーニュ地方の郷土料理「ブッフブルギニヨン」がお手本です。
「ブルゴ……ブ、ブッフブルギニヨン……? 何を言っているんだ」
「もうこれは素人には手に負えん! 実際に何がどうすごいの? 本当に本場の味なの?」
そこで今回は辻調理師専門学校の先生に実食してもらい、味わいやクオリティを聞いてみました!
辻調理師専門学校からシェフが助太刀&実食!

森 祐貴さん(左)
辻調理師専門学校西洋料理専任教員
全日本司厨士協会主催「第33回料理コンクール(26歳未満の部)」で大阪府知事賞受賞。G20大阪サミット首脳夕食会で調理を担当。
永田智大さん(右)
辻調理師専門学校西洋料理専任教員
フランス「メゾン・ブラス」で研修。『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』のサポート協力やG20大阪サミット首脳夕食会で調理を担当。製菓衛生師の資格も持つ。
ナヴァラン|仏海軍の栄光か、それとも……。秘められた命名の謎

まずはフレンチの「ナヴァラン」という料理を参考に作ったという、この料理。その名前からは材料がまったく想像つきません……。
ナヴァラン(Navarin)は、羊肉や仔羊肉をカブ、ニンジン、ジャガイモなどさまざまな野菜と一緒に煮込んだフランスの料理です。
名前の由来は,1827 年にフランス海軍がギリシャの港ナヴァリノ(Navarin)沖の海戦に勝利したことにちなむとも、材料として用いるカブのフランス名であるナヴェ(Navet)に由来するともいわれます。(解説:森さん)
意外にも材料の中でいちばん地味そうな「カブ」が料理名に食い込むとは。歴史ある料理は謎深い。どのように作るのか、各料理の作り方のワンポイントをシェフにうかがいました。
オーブンで1時間とは!煮込むといっても鍋ごとオーブンに入れるとは、日本の「煮込む」とまったく次元が違います。

筆者が実際に食べてみたところ、ほのかに羊肉の風味が漂うトマト煮込みといった味わいでした。バリバリのラム肉好きにとっては物足りないと思いますが、「あれ、ちょっとオシャレな味がしますな」といったワンランク上の仕上がりとなっています。
ロコモコ|「ハンバーグのせごはん」とは言わせない

こちらはカフェなどでも見かけることが多い「ロコモコ」。実はハワイ発祥の料理。
ロコモコはごはんの上にハンバーグと目玉焼きをのせて、デミグラスソースやグレイビーソースのような茶色いとろみのあるソースをかけた料理です。ハワイの日系人の間で生まれたのではないかといわれています。(解説:森さん)
へぇ〜、日本人とも縁があるお料理なんですね。だから今回紹介する中でも、食べ慣れている、味の想像がつきやすいという安心感があります。無印の商品名も「ハンバーグの煮込み」ではなく、「ロコモコ」と唯一現地の名前のままなのに納得。

森さんのコメント通り、ハンバーグが本格的でボリューム感もばっちりでした。ハンバーグの中まで熱が入るように、湯煎でじっくりと温めるとよりおいしく食べられるでしょう。「ただのハンバーグ乗せご飯じゃん」とは言わせません。れっきとしたハワイ料理、ロコモコです。
カチャトーラ|言葉の響きから、すでに陽気なイタリアン

かちゃとぉら……なんだか踊り出しそうな雰囲気の料理名ですね。イタリアっぽいといえばイタリアっぽい陽気な語感ですが、どういった意味でしょうか?
Alla Cacciatora(アッラ・カッチャトーラ)はイタリア語で「猟師風」という意味です。 肉を焼いた後に香草などを加えて軽く煮込んだ料理を指します。トマトを使って煮るものや、酢の味を効かせて白く仕上げるものなど、バリエーションが豊富です。 鶏やうさぎの肉を使うのが一般的で、仔羊を用いることもあるんですよ。(解説:森さん)
たしかに最近は日本のレストランでも「猟師風煮込み」と書かれたメニューを見かけます。ずばり作り方のコツは?
おいしさを引き出すために、しっかりと肉を焼いた後に煮込む。家のキッチンではともかく、焼く&煮込むというのは山では再現が難しい。燃料だってバカになりません。

仕方がないかもしれませんが、レトルトにすることで鶏肉がパサパサしていたのが少し気になりました。あと私はカチャトーラと言われるともう少し酸味が強いイメージですね。
言うなれば「THE本格的でおしゃれな鶏のトマト煮込み」でしょうか。具材もゴロゴロ大きく入っており、トマトの酸味もほどよくそそります。これはカリカリのパンに乗せて食べるとたまらん山ごはん部門の優勝候補でしょう。
ブッフブルギニヨン|難読料理は「ブルゴーニュの牛」?

ぶぶ、ぶっふぶるぎによん……。カチャトーラ以上に名前の圧が強いこの料理。ひと息で発音できるか微妙です。
こちらはフランス料理のひとつです。ブッフ(bœuf)は「牛」、ブルギニヨン(bourguignon)は、「ブルゴーニュの」という意味の形容詞。すなわち、ブルゴーニュ地方風の牛肉の煮込み。牛肉の塊を赤ワインで煮込み、煮汁をソースにします。
付け合わせには、拍子木切りにした塩漬け豚ばら肉のソテーや小玉ねぎのグラッセ、シャンピニョンのソテー、ヌイユと呼ばれる手打ちの生麺を添えるのが定番です。(解説:永田さん)
付け合せが「シャンピニョン」。またもや難解ですが、これはキノコのことだそうです。
うおぉ、2〜3時間煮込むと。これはダッチオーブンをもちこむキャンパーならまだしも、山の調理器具では到底作れません!

永田さんが言うように、これは確かに完成度の高い牛肉の洋風煮込みです。そしてお値段に対する肉の量が凄まじい。こんなにいいの? 無印さん。
一方で永田さんの指摘通り、赤ワインの風味が足りないようにも感じます。お酒好きの人は赤ワイン片手に、お酒要素を補完しながらいただくことをおすすめします!
フリカッセ|焦がし禁止! 「白さ」が命の洋風煮込み

チキンのクリーム煮を小洒落に呼ぶと「フリカッセ」? だとしたら、何だか簡単そうに思えます。
フリカッセ(fricassée)とは、鶏や豚、仔牛などの白い肉を使ってソースも白く仕上げた白い煮込み料理を指し、鶏肉の白い煮込みならフリカッセ・ド・プーレ(Fricassée de poulet)と言います。ですので、クリーム煮=フリカッセというわけではありません。(解説:永田さん)
白く仕上げた煮込みであって、単に牛乳やクリームで煮るだけではない。奥深いです。
はえぇ……。「大まか」な流れですら、こりゃまた難易度の高いお料理。焼き色をつけてはいけないというあたり、豪快さ(?)だけで乗り切ることで成立しているアウトドア料理とはまったく別物。

そう、一口食べるだけで、鼻孔をにんにくの香りが通り抜けます。にんにくの強さだけで言うと、「ラーメン◯郎」に匹敵するレベル(?)かも。茹でたペンネを和えれば、クリーム系のパスタにも大変身しそうな予感。にんにくが大好きな筆者にとってはうれしい誤算でした〜!こりゃうまいっ。
ショットブッラル|◯KEAで市民権を得た北欧料理

ここにベリーのジャムが添えられたものを、某北欧インテリアショップで見かけたという人、正解です。
こちらは北欧のおふくろの味、ショットブッラルです。スウェーデンでは、肉団子にヘラ鹿やトナカイなどの肉を使うこともあるそう。コケモモ(リンゴンベリーなど)のジャムを添える食べ方がよく知られていますが、これと決まったソースがあるわけではないようです。(解説:永田さん)
ほおぉ、例の店でも定番メニューですし、日本で言うところの肉じゃがといった位置付けの国民食なんですね。
肉団子を揚げ焼きしてクリームと合わせる。繰り返しますが、揚げ焼きして、さらにクリーム。カロリーとか気にしたら負けですね……。
それでは実食!
揚げ焼きと聞いていたのでボリューミーかと思いきや、意外とあっさりとして食べやすい。見た目通り正真正銘、我々にも馴染みのあるおいしいミートボールのクリーム煮でした。
「世界の食文化」へのオマージュを390円で味わおう!

永田さん
それぞれ味に個性があり、お手本にした料理をいろいろと想像することができる楽しさがあると思います。
日本人があまり知らないような料理にもアプローチされており、それぞれの食文化に対するオマージュも感じられました!
ごはんやパンの炭水化物+たった390円という値段で、山という極地でも世界の料理(とタンパク質)が楽しめる。それを叶えるのが、<無印良品>のレトルトシリーズ。今回おふたりにうかがった「本気で作るとめちゃくちゃ手間がかかる」ということを思いながら食べると、おいしさも倍増するかもしれませんね。
さあ、あなたはどの「煮込み」を持って行きますか?
無印良品「世界の煮込み料理」シリーズ