自然の中に遊びに行くからこそ、自然素材を選ぶ
例えば、“ウルトラライト”という言葉は日本でも着実に広まっています。本来は、“荷物を軽くすることが、自然を深く味わうことに繋がる”という、アメリカ由来の考え方です。
しかし、一部では“ウルトラライト=軽量化”という表面的な部分だけが独り歩きしているところも。今昔問わず、外国の文化を輸入する際には仕方がないのかもしれません。
「機能性や軽量化も楽しみのひとつだと思います。一方で、あえて不便を楽しむというのも山歩きやキャンプの醍醐味じゃないでしょうか。
例えば、自然の中に行くんだから、自然素材のものを選ぶという考え方。一見不便そうなものが、実は便利だったりするんです。」
そう言って松野さんが手にしたのは、篠竹の弁当かご。
「大きいほうにはおにぎり、小さいほうにはサンドイッチがピッタリです。そうやって山に出かけるんです。もともとそうやって使う道具ですしね。日本には元来、不便さを楽しむという考えもあると思います。」
軽くて丈夫、天然の抗菌作用がある竹製品は、確かにアウトドアにぴったり。ここにお弁当を詰めて登山に出掛けるのも楽しそうです。
他にも、山道具を選ぶ際、例えば食器などのシンプルな道具には自然素材を選ぶのも良いですね。
荒物雑貨が再評価される時代になってきたのかもしれない
大量生産・大量消費という考えが当たり前となった今、使い捨てを嫌う考えは世界各地で広がっています。
「手ごろな価格で長く使えるという、荒物雑貨の考えに共感してくれる人は増えている。海外からのバイヤーも増えていますよ。」
国内外を問わず共感者が増えているというのは、そういう時代に回帰しつつあるということなのかもしれません。
「例えば、これはかつて日本の学校でも使われていたコップです。蛇口のとなりによくぶら下がっていました。軽くて頑丈なので山でも使えます。」
「こうやって取っ手の形が変われば重ねることもできます。これなら、大人数のキャンプでも便利です。」
これらのアルマイト製のコップは、懐かしい見た目とは裏腹に驚くほどの軽さ。へこむことはあっても割れにくいアルマイト製品は、愛着を持って長く使えそう。シンプルなデザインというのも、老若男女問わずに支持を得ている理由です。
「これはもともと燗をつけるための道具ですが、別に日本酒じゃなくてもいい。これでホットワインも楽しめますよ。」
そう紹介してくれたのは『アルマイト籐巻タンポ』。お湯を入れた鍋の縁に引っかけてお酒を温める道具です。
真夏でも朝晩は冷えるアルプスのテント場。そこで楽しむ温かいお酒は、それは何物にも代え難い美味しさでしょう。
また、コップとも兼用できるので、お酒が無くなっても邪魔にならないのもポイントです。
“山道具”という概念に縛られる必要はない
「個人個人、それぞれの楽しみ方があって良いと思います。」
そう話す松野さん自身も、自由に登山を楽しむひとり。
「山ではコッフェルの蓋で焼肉を焼いて食べるのがウチの定番。自宅から持ってきた鯛焼きは、箸を刺してバーナーで焼く。食後に最高なんですよ。」
“山道具”という概念に縛られず、自由な発想で山を楽しむ。それこそが、楽しむために一番大事なこと。
「晴れた日のちょっとしたハイキングなら、こういう縄細工の肩掛け鞄だっていい。」
そう言って手編みの天然素材の鞄を示した松野さんは、まさにその体現者だと思います。
自由な発想で、自分なりの楽しい使い方を発見する。そういう目線で訪れると、<谷中 松野屋>はまさに“山道具”の宝庫です。
松野屋のホームページの「荒物のこと」というページでは、作り手の方々の様子を垣間見ることができます。
松野屋の考えに触れて少しでも共感した方、是非ともひとつ山道具に取り入れてみてはいかがでしょうか。
<谷中 松野屋>
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