万が一、ヒグマに出遭った時はどうしたらいいの?

ヒグマ対策には、ヒグマに遭遇しないようにするのが一番。その中でも、絶対に人為的な食べ物を与えないことが特に重要です。
ここからは、YAMA HACK読者からの質問でも多かった「クマと出遭った時」の対応について聞いてみました。
《Q1:自分の通りたい道にクマがいたら?》

編集部 大迫
出遭わないことが一番ということはわかりました。でも、いざ自分が通りたい道にクマが出た時はどうするのが良いですか?
葛西さん
まずは、とにかく落ち着くこと。生き物であるヒグマは「AだからBになる」というようなパターンに必ずしも当てはまりません。これからお伝えする方法は、あくまでも選択肢です。それを理解した上で、状況に合わせて判断してください。
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編集部 大迫
読者からの質問の中に「石を投げている人を見かけた人がいるのですが」とあったんですが、それって危険ですよね?
葛西さん
石を投げるのは賢明な選択ではありません。こちらに向かってきたら対処できますか?余計な刺激を与えないことが賢明な選択です。
Q2:万が一クマが向かってきた時はどうすれば?

葛西さん
クマが現れたら、向かってきた時に備えてクマ撃退スプレーの噴射準備をしましょう。とはいっても、多くの場合は威嚇行動(人の目の前まで走ってきて急に止まり地面を叩く、怒っているアピール、おどしなど)なのでやはり落ち着くことが大事です。
編集部 大迫
クマ撃退スプレーは効果がある、ということですか?
葛西さん
はい。なので、携帯することをおすすめします。
攻撃突進の時は、3~4mまで迫ったら噴射しましょう。知床財団では、元祖クマスプレー(カウンターアソールト)を使用。実際にヒグマに対して噴射し、難を逃れたケースもあります。
カウンターアソールト 熊よけスプレーCA290 カウンターアソールト・ストロンガー
葛西さん
ただし、危険物なので、取り扱いには十分注意してください。安全ピンの戻し忘れや外れには特に注意が必要です。
編集部 大迫
では、スプレーを持っていない場合は?
葛西さん
スプレーを持っていない場合、とるべき選択肢は2つ。ひとつは、攻撃突進を受けたらうつ伏せになって、顔と腹部を守り、首の後は手を回して防御姿勢をとること。この場合、転がされてもその勢いで元の姿勢に戻ることが大切です。背中のザックがプロテクターにもなります。

葛西さん
編集部 大迫
正直、突然出遭って冷静に対処できる自信は正直ありません。ヒグマと出遭わないようにすることがいかに大事か、ということが身にしみます。
Q3:登山者が気をつけることは?

葛西さん
クマの生息地でテントの中に食料やゴミを保管することは、自殺行為に等しいと私は考えています。
知床連山の野営地には、食料やゴミを保管するためのフードロッカーが整備されています。全国の登山道野営地にも、同様の整備が必要になってくると思いますよ。
編集部 大迫
今まで通りの考えを見直す必要があるかもしれませんね。
葛西さん
そうですね。クマの生息地は拡大傾向です。昔はこうだったという経験則は通用しません。
編集部 大迫
まず食べ残しを捨てることは絶対にNG。それだけでなく、匂いのするものは匂いが出にくいように、ジップロックのような密封性の高い袋に入れることも心がけたいですね。
葛西さん
人の食べ物は栄養価が高く、ヒグマにとって魅力的な食べ物です。一度その味を覚えてしまうとヒグマは味をしめ、再びそれを得ようと行動を変化させます。
編集部 大迫
人の生活圏や活動圏に、ヒグマを引き寄せないことが大切ですね。
葛西さん
人の食べ物の味を覚えたヒグマは人前に平気で出てくるようになり、人の生活圏に近づくようになるので極めて危険です。
そのため人為的食物を食べた個体は問題個体(※)とされ、知床では基本的に「捕獲(捕殺)」が選ぶべき対応方針になります。
※問題個体:人につきまとったり、または人を攻撃したりして人間に実害を与える個体のこと。
お互い出遭ってびっくりしないように、小さなことに気をつけよう

自然の中がフィールドとなる登山。そこには当然、たくさんの生き物が生活しています。お互い不用意な接触はできるだけさけて穏便に過ごしたいと考えるのであれば、食べ物のゴミをきちんと処分したり、食べ物の匂いをさせない工夫などできる限りのことに気をつけましょう。
登山者が自分の身を守るために大切なのは、クマの性質そのものを理解することです。
取材協力:公益財団法人 知床財団
環境教育や普及啓発、野生生物の保護管理・調査研究、森づくりなどを行い、世界自然遺産である知床の自然を「知り・守り・伝える」活動を実施している。
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