そもそも山岳会ってどんなもの?

また、どちらかというと「男性が多く集う会」というイメージもあると思いますが、そんな中、なんと女性のみの山岳会「銀嶺会」が発足しました! そこで、代表を務める「おさんぽ」さんに、山岳会のことや銀嶺会の活動内容について教えてもらいました。
ライター
三宅
本日はよろしくお願いします。 まず、そもそも山岳会ってどんなものなのでしょう? かなり敷居の高いイメージがあり、一般登山者さんからは遠い存在のように感じますが。
おさんぽさん
私もそうでしたが、「山岳会」ってなんだか堅苦しくて厳しいイメージですよね。「アルパインをやるために、そろそろ山岳会に入りたいな」と探していた時も、他会メンバーとの山行禁止とか、シゴキがあるといったマイナスイメージしかなくて悶々としてました。
ライター
三宅
まさにそのイメージです! 山に入る自由が利かなくなり、大人が入る「かなり厳しい部活」という印象です。

おさんぽさん
ところがそんな時、積雪期の北アルプスのテント場で出会ったご夫婦の男性が、とても気さくに相談に乗ってくださり、ご友人が在籍している横浜の山岳会を紹介いただけ、まずは見学にうかがいました。
ライター
三宅
三宅
それはおそらく、山とテント場と酒がつなぐ「山ならでは」のご縁ですね?(笑)
おさんぽさん
やはりわかりますか?(笑)
そこはとても自由な会で、会外のメンバーとの山行も可能で、自分のやりたいスタイルの山行ができることがわかり、これまで心配していた点が払拭されたため、入会を決めました。
ただ、シゴキどころか逆に「うちの会は(クライミング技術を)教えないから」と宣告され、「それは困る!」と思っていたところ、会所属のエキスパートの男性が師匠となってくれ、2年間みっちりアルパインのスキルを叩き込んで育ててくださいました。
そこはとても自由な会で、会外のメンバーとの山行も可能で、自分のやりたいスタイルの山行ができることがわかり、これまで心配していた点が払拭されたため、入会を決めました。
ただ、シゴキどころか逆に「うちの会は(クライミング技術を)教えないから」と宣告され、「それは困る!」と思っていたところ、会所属のエキスパートの男性が師匠となってくれ、2年間みっちりアルパインのスキルを叩き込んで育ててくださいました。

ライター
三宅
三宅
そんなに自由な山岳会もあるんですね! イメージと違い、自由な会風ということで、のびのび山をやれそうです。そして、スキルの高い方との出会いがあったのもご縁ですね。
おさんぽさん
そうなんです。 メンバーは皆さん良い方ばかりで、年数回の会山行では、山行そのものの楽しさに加え、山での宴会もとても盛り上がり、本当に楽しい山岳会でした。
また、この会は日本勤労者山岳連盟に加入しており、基金(保険)も個人で加入する山岳保険よりも手厚く、海外登山(エベレストなどの8,000M峰も含む)にも適用される素晴らしいもので驚きました。
また、この会は日本勤労者山岳連盟に加入しており、基金(保険)も個人で加入する山岳保険よりも手厚く、海外登山(エベレストなどの8,000M峰も含む)にも適用される素晴らしいもので驚きました。
ライター
三宅
三宅
確かに一般の山岳保険だと、国内でも雪山は適用外のものが多く、且つ、危険度の高い海外登山などはカバーされていないのが一般的ですから、そこはさすがに山岳会の大きなメリットのひとつですね。
おさんぽさん
ええ。 また、連盟には教育部、遭難対策部、救助隊などの組織もあり、これからクライミングを始めたいという方には、リーダー学校が開設されており、ガイド講習などよりも安価でクライミングのイロハを学ぶことができます。
救助隊では、ハイキングやクライミング時に、自分たちで行えるレスキュー方法などを学べる講習会が定期的に開催されています。
救助隊では、ハイキングやクライミング時に、自分たちで行えるレスキュー方法などを学べる講習会が定期的に開催されています。
ライター
三宅
三宅
自分自身も感じていることですが、そのあたりの知識や技術は、一般登山を何年やっていても身につくものではなく、有事の際の対処法を学べて実技訓練できることは、自分にとっても同行者にとっても、非常に有益なことですね。
おさんぽさん
そのとおりです。 まさに、山岳会に所属するアドバンテージの最たるものと言えるでしょう。 そして、それらを学ぶためには、やはり山岳会がもっとも有効で近道だと思います。
また、ひとくちに山岳会といっても各会には特色があり、ハイキング主体、沢主体、フリークライミング主体、など様々のため、自分のやりたいこととマッチする会を探すことができれば、一般登山からは学ぶことができない知識と経験が積めレベルアップできるので、山岳会に入ってみるのも良いかもしれませんよ!
また、ひとくちに山岳会といっても各会には特色があり、ハイキング主体、沢主体、フリークライミング主体、など様々のため、自分のやりたいこととマッチする会を探すことができれば、一般登山からは学ぶことができない知識と経験が積めレベルアップできるので、山岳会に入ってみるのも良いかもしれませんよ!
山岳会は・・・
▼山岳会には各会の特色があり、自分のやりたい山とマッチングした会との出会いが大切!▼一般登山では学ぶことが困難な知識と技術を学べ、より安全な登山に役立てることができる。▼個人加入の一般山岳保険より補償内容と範囲が充実している。
銀嶺会立ち上げの背景

女性アルパインクライマーは絶滅危惧種状態
ライター
三宅
さて、そんな会と師匠のもと、アルパインクライミングの技術を学んでいたおさんぽさんが、その後、会を卒業することになったきっかけや経緯は何でしょう?
おさんぽさん
師匠からみっちりと指導を受けた結果、まずは師匠から卒業を言い渡され自立することに。それが2年ほど前のことです。
そんな時、同じくアルパインクライマーだったある女性と出会いました。 女性のアルパインクライマーは絶滅危惧種状態で、パートナー探しは困難を極める状態。これは運命の出会い!と、一緒にロープを繋ぐようになりました。 そのザイルパートナーこそが当会:銀嶺会の副代表、メバンナさんでした。 彼女とそれはそれはたくさんの山に行きました。
そんな時、同じくアルパインクライマーだったある女性と出会いました。 女性のアルパインクライマーは絶滅危惧種状態で、パートナー探しは困難を極める状態。これは運命の出会い!と、一緒にロープを繋ぐようになりました。 そのザイルパートナーこそが当会:銀嶺会の副代表、メバンナさんでした。 彼女とそれはそれはたくさんの山に行きました。
ライター
三宅
確かに女性のアルパインクライマーの絶対数も少ない上に、そんな希少な女性クライマーと出会う確率も高いものではないので、まさに運命の出会いだったわけですね!
おさんぽさん
そうなんです。 すると、山に行くのに難色を示していた主人も快く送り出してくれるように!(笑) 人間的にも素敵な彼女との時間はとても楽しく有意義なもので、対等に意見し合うことができること、そして何よりも男性に頼らずに、自分たちの力で成し遂げる達成感がたまらなく清々しく気持ち良かったのです!
ライター
三宅
ご家族が理解を示してくれることはとても心強いですね。
そして、お互いが信頼するパートナー同士、山に対する想いや考えを言い合える。そんな素の状態でパートナーと向き合えることは、特に山に於いては非常に重要なことですね。
そして、お互いが信頼するパートナー同士、山に対する想いや考えを言い合える。そんな素の状態でパートナーと向き合えることは、特に山に於いては非常に重要なことですね。

ライター
三宅
しかも、逆に男性が頼りたくなるハードな山行内容!(笑)
そして集まる女性クライマーたち

おさんぽさん
その後、さらに2人の女性メンバーが加わり、女性だけでアルパインに行ったり、沢に行ったり、アイスに行ったり、としているうちに、元々、旧会のメンバーにはアルパイン志向者が少なかったこともあり、徐々に旧会との山行が少なくなり・・・。
それならばいっそこのメンバーで新会を作ろうではないか!という話に。
それならばいっそこのメンバーで新会を作ろうではないか!という話に。
ライター
三宅
なるほど、おさんぽさんとメバンナさんのクライマー魂に呼応した「若緑さん」と「りなぽん」さんが参加、現在のコアメンバーが出来上がったわけですね。
また、サークルとしてではなく、山岳会として活動することのメリットは前述のとおり。 危険も伴うハードな内容だからこそ、手厚い保険で備える必要と意義がありますね。
また、サークルとしてではなく、山岳会として活動することのメリットは前述のとおり。 危険も伴うハードな内容だからこそ、手厚い保険で備える必要と意義がありますね。
おさんぽさん
正直、会を作るなんて夢にも描いたことがなかったので、まずは他会の友人に相談してみました。すると「やりたい事ができるような会を目指すならやるべき!」と背中を押してくれました! 次に会の先輩に相談。 親身になって色々と相談に乗ってくださり、全面的に応援してくださると!
ライター
三宅
おさんぽさんの山に対する熱意と誠実さが、周りの人々にも伝わったのですね。

おさんぽさん
そして、遂に旧会の代表と副代表に決意表明! 半人前が何を言っている!とお叱りを受けるかと思いきや、最初に出た言葉は「やっぱりね」でした。(笑) 思いやりのある叱咤激励をいただき、円満退会となりました。
ちなみに会の名前「銀嶺会」は、憧れの今井通子さんと若山美子さんを描いた小説「銀嶺の人」(新田次郎著)からいただきました。
ちなみに会の名前「銀嶺会」は、憧れの今井通子さんと若山美子さんを描いた小説「銀嶺の人」(新田次郎著)からいただきました。
ライター
三宅
旧会で皆さんと山を楽しみ、誠実に山に臨み、さらに自分の山の向き合い方を突き詰めたい。そんな真摯な想いを止める山ヤはいない、ということですね。それにしても、新会旗揚げのエネルギーはすごい!
銀嶺会はどんな山に登ってるの?

ライター
三宅
こうして結成された銀嶺会。 次は活動内容について教えてください。女性のみということで、華やかでホンワカとした雰囲気がありますが、基本はアルパインスタイルなんですよね。
おさんぽさん
はい、アルプスの壁(滝谷など)、沢、フリークライミング、アイスクライミング、雪稜、などなどみんなでワイワイと楽しんでます。
メパンナさんとの最初のアルパインは北岳バットレスでした。
メパンナさんとの最初のアルパインは北岳バットレスでした。

おさんぽさん
1泊2日だったので壁の途中まで登り、少し広いテラスでツェルトビバーク。 軽量化のためお酒はガマンね、と約束しあったのに、お互いのザックからお酒が出てきた時には笑いました!
ライター
三宅
さすが! お二人とも山ヤの鏡です!(笑)

おさんぽさん
アイスは、網走や層雲峡にも遠征します。
また、岩をアックスを使って登る「ドライツーリング」という分野にも取り組んでいるメンバーも。さらに、アイスのコンペに出て優勝したり、と活躍してます。
また、岩をアックスを使って登る「ドライツーリング」という分野にも取り組んでいるメンバーも。さらに、アイスのコンペに出て優勝したり、と活躍してます。

ライター
三宅
さすがに一般ハイカーが立ち入れるような場所ではありませんね! 当然危険も伴うと思いますし、困難な山行もあったかと思いますが、特別印象に残っている山行はありますか?
おさんぽさん
一番印象に残っているのは、甲斐駒 戸台川本谷 駒津沢を稜線まで抜けるアルパインアイスです。参加メンバーの3人とも初見で、体力、ルーファイ力(※)、最後まであきらめない気力のすべてを出し切って踏破した素晴らしい山行でした。

ライター
三宅
こ、このルートは垂直の氷の塔・・・氷爆ですね・・・!
おさんぽさん
はい。 このルートを辿ったパーティーは10年ぶりではないか?と言われましたが、女性だけのパーティーでは初かもしれませんね。
「女性のパーティー初」は、4月に行った北アルプス龍王岳三峰南壁ジェードルルートもそれにあたると思います。
「女性のパーティー初」は、4月に行った北アルプス龍王岳三峰南壁ジェードルルートもそれにあたると思います。
ライター
三宅
大変失礼ながら・・・
エゲツナイほどハードですね!!(笑)
エゲツナイほどハードですね!!(笑)

ライター
三宅
だってこんな垂直の壁を女性だけで登ってるんですよね!?
おさんぽさん
エゲツナイって、なんだか褒められてる気がして嬉しいです(笑)
銀嶺会はまだまだ楽しいルートを見付け挑んでいきます!

ライター
三宅
それでは最後になりますが、今後の銀嶺会の方向性について教えてください。立ち上げ間もなくとも、すでに圧巻の活動内容ですが、今後はどのようなことを計画されているのでしょうか。
おさんぽさん
まだまだ行ってみたいところがたくさんありますので、今後はそれを実現していく事と、さらに楽しいルートを見つけて挑んでいきたいです!また、アルパインクライミングをもっと活発に行っていき、皆さんにその素晴らしさを知っていただけうような活動ができればと思っています。
ライター
三宅
筆者はすでに大変な興味を抱いています。(笑)
一般登山では見ることのない世界、立てることのない場所、とても憧れます。
一般登山では見ることのない世界、立てることのない場所、とても憧れます。
おさんぽさん
そう、そういう想いが原動力になります!
年内には台湾へクライミング、来年は南米の「世界一美しい山」アルパマヨにもアルパインアイスで遠征します。 今後もあたたかく銀嶺会を見守っていただければ幸いです。
年内には台湾へクライミング、来年は南米の「世界一美しい山」アルパマヨにもアルパインアイスで遠征します。 今後もあたたかく銀嶺会を見守っていただければ幸いです。
インタビュー後記

9月に産声を上げたばかりの銀嶺会、現在はまだ新規会員募集は行っておりませんが、軌道に乗り安定してきたところで募集されるとのこと。 もしこの魅惑の世界に興味がある女性ハイカーが居られましたら、まずは以下ウェブサイトをご覧ください。 今後も銀嶺会の活動に注目していきたいと思います!
銀嶺会 公式ウェブサイト
文 : 三宅 雅也 (山岳ライター/長野県自然保護レンジャー)