少しでも寝ようとしたが、眠りに落ちそうになると息が苦しくて目がさめる。このまま寝たらもう目が覚めないのではないかという恐怖に何度も襲われた。結局、ほとんど眠ることが出来ずに朝を迎え、ボロボロの体を引きずりながらベースキャンプへと戻っていった。
僕のコンディションとは逆に登山シーズンに入り、ベースキャンプは活気付いていく 撮影:上田優紀
今まで頭が重いといった程度の高度障害は経験したことはあったが、ここまで重度のものは初めてだった。ここからさらに1,000mも登っていく、しかも、さらに厳しい垂直の氷の壁を。本当に自分にそんな事が出来るのか、不安ばかりが頭の中をぐるぐると回り、ベースキャンプに降りても気持ちが上がって来ない。それと同調するように体調も悪く、標高を1,500m下げたにも関わらず、食べたものや飲んだものを全て吐き続けた。
こんな状況でも登らならければならない、逃げることは出来ない。誰のためでもない、自分の為に。気持ちさえ戻れば、体も付いてくる。過去の経験から不安への立ち向かい方は知っている。アタックに向けてベースキャンプのテントの中で必死に心を鼓舞し続けた。
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【個展開催のお知らせ】
この紀行文を書いているネイチャーフォトグラファー・上田優紀さんの個展が開催されます。
キヤノンギャラリー銀座: 12月13日〜19日(15日はギャラリートークも予定)
キヤノンギャラリー名古屋: 1月17日〜23日
キヤノンギャラリー大阪: 2月14日〜20日
上田さんが感じるままに撮影したアマ・ダブラムの写真をぜひ身近に感じてみてください!