登山用語の「健脚者」ってどんな人?

「健脚者」の定義って…

足が丈夫で長い距離を歩けることや、その足自体を“健脚”といいます。登山でいうところの「健脚者」は、重い荷物を持って、長い距離を歩くことができる人としてのざっくりとした意味合いが強く、それがどのくらいの距離なのか、明確な定義はありません。
1日の行動時間を目安にするなら…

ガイドブックによっても、その基準は様々で、距離ではなく傾斜のきついコースが“健脚者向け”となっているケースも。
あくまで目安ですが、10キロ以上のザックを背負い、山道を1日だいたい10時間以上歩き続けることができる人や、標準コースタイムの6~7割のスピードで登山をすることができる人、1時間で標高500m以上あげられる人は、健脚といえるのではないでしょうか。ちなみに一般的な登山では、通常1時間で登るのはだいたい標高300mくらいが普通です。
「健脚者」って、どのくらいの体力度の人?

「健脚者」は、体力があることはなんとなく想像がつきますが、どのくらいの体力度だと健脚者なのか疑問ですよね。
登山における体力度を見るには、鹿屋体育大学の山本正嘉教授が考案した「登山中の消費エネルギーを計算する式」の『ルート定数』が参考になります。これは、主要な山岳県が公開している山のグレーディングでも用いられているものです。
ルート定数とは

ある人が、荷物を背負って山登りをしたとき、行動時間と歩行距離、登りの標高差、下りの標高差の4つにそれぞれ係数を掛けて合計したものが、「ルート(コース)定数」
ルート定数=コースタイム(時間)×1.8+ルート全長(km)×0.3+累計登り標高差(km)×10.0+累計下り標高差(km)×0.6
この計算で出た数値がどれくらいかというと…

ルート定数[〜29.9]
⇒体力度1〜3(日帰りが可能)
ルート定数 [30〜49.9]
⇒体力度4〜5(1泊以上が適当)
ルート定数 [50〜69.9]
⇒体力度6〜7(1〜2泊以上が適当)
ルート定数[70〜]
⇒体力度8〜10(2〜3泊以上が適当)
ルート定数30前後が日帰りと1泊の分かれ目となっています。このコース定数30~49.9の1泊以上が適当な山を日帰り登山できる体力がある人は「健脚者」であるという1つの目安になります。
例えば…

北アルプスの常念岳で見てみましょう。標高差約1,600mの急峻なルートとして知られる三股登山口からピストンの場合、標準コースタイムは12時間40分 / 9km、長野県が公開している山のグレーディングでは、ルート定数44.0(体力レベル5)と『1泊以上が適当』とされています。
早朝に出発し、このコースを日帰りしている登山者も意外と多いですが、13時間近く歩くこのコースを日帰りで歩くことができるのは、健脚者といえるでしょう。
「健脚者」って、どれくらいの登山レベルの人?

登山者はレベルによって「初級者」「中級者」「上級者」と分けられることが多いですが、「健脚者」はどのくらいの登山レベルの人なのでしょうか。
「健脚者」は登山上級者?

「健脚者」 ≒ 登山中級~上級者

ただし、山道を長い距離・長い時間歩くということは、歩き方・休憩の取り方・装備など、安全登山の観点でも体力以外に知識や技術、経験が必要になってきます。そのため、1日で長い距離を歩くことや本来のコースタイムよりも速いタイムで登山をすることは、中級~上級者向けであることがほとんどです。
つまり、「健脚者向け」と「初~上級者向け」は別物!
見てきたように、「健脚者」を特定の「●級者」に当てはめるのは難しいものです。大枠は、必要な登山技術はさておき、長い時間や距離を歩くことができる人が「健脚者」。必要な技術度をレベル分けしたものが「●級者」です。
まとめ
・登山レベルを表す「初級者」「中級者」「上級者」は、体力度と技術度を総合的に見て判断される
・体力面だけで見れば、「初級者」「中級者」「上級者」それぞれの中に「健脚者」が存在する
・健脚者向けコースは、体力面だけでなく、技術面も踏まえて中~上級者向けであることが多い
健脚者がどんな人なのか、掴めましたか? では、実際にどんなコースが健脚者向けなのでしょうか。今回は“健脚者向けコースの代表格”をご紹介します。