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登山靴を乾かすのって、結構大変!

出典:PIXTA
登山靴が濡れたとき、みなさんはどのように乾かしていますか?
濡れたままにしておくと靴が痛む原因にもなるため、しっかり乾燥させるのは必須。でもボリュームのある登山靴の場合、そう簡単にはいきません。
もっと速く乾いてくれたら登山靴のケアもラクになるのに……。そう思っていたときに、願いを叶えてくれそうなアイテムを見つけてしまいました!
コンパクトでポータブルな乾燥機「ドライフローミニ」
撮影:筆者
「ドライフローミニ」は、登山者にもお馴染みのインソールブランド<SIDAS(シダス)>が出している小型のシューズ乾燥機です。換気システムとUVランプによって、4時間程度でシューズを乾かしてくれるとのこと。
公式サイトやパッケージをよく見てみると、ブーツ類にも対応している様子。ということは登山靴の乾燥にも役立つのでは? そんな推測のもと使ってみました。
まずは基本性能をチェック!
びっくりするほど軽くて小さい

撮影:筆者
手にとって見て驚くのがその軽さ。わずか90gしかなく、サイズも手のひらに収まるコンパクトさです。
使い方はそれぞれの靴に一つずついれるだけ。スイッチを入れると、本体から温かい風が発生します。
デリケートな素材でも安心して使える

撮影:筆者
温風としてはかなり優しめ。ティッシュの束に風を当ててみましたが、わずかに揺らす程度です。
これは、「ドライフローミニ」が温風を直接出すものではなく、靴の内部で渦巻き状の気流を作り出すことで、効率的に乾燥させる仕様のため。温度も50~60度と一般的なドライヤー(100~120度程度)と比べても低めになっており、靴を傷めないようにする工夫がなされています。
ちなみに……ドライヤーじゃだめなの?

撮影:筆者
乾かすといえばドライヤーですが、靴用ではないへアドライヤーを登山靴に使うのはおすすめできません。というのも、靴が急激に乾くことで革の部分がひび割れたり、固くなってしったりする可能性があるからなんです。
その点、ドライフローミニであれば適度な温度、かつ一点に集中して温風を当てるような仕組みではないため、革などのデリケートな素材でも安心して乾かすことができます。
乾燥と同時に抗菌もできる

撮影:筆者
青く光るのはUVランプが使用されているため。なんと、靴を乾かしながら抗菌もできてしまうんです。
タイマー搭載で消し忘れの心配なし

撮影:筆者
スイッチは4時間で自動的にオフになるモードと、ずっとONになるモードの2種類。4時間モードを使えば、靴を放ったらかしのまま乾かすことも可能です。
USB給電式のため、使う場所を選ばないところも魅力。手持ちのUSB充電器を使っても、車のUSBポートなどに繋いでも、どちらでも使用できます。
登山靴はどのくらいで乾くのか?「ドライフローミニ」でいざ乾燥!

撮影:筆者
製品のパッケージには「わずか4時間でブーツを乾かせる」との記載がありましたが、登山靴の場合はどうでしょうか。完全に乾く時間を検証してみます。
……おや? 早速使おうとしたところ異変が発生。温風が極端に弱く、靴がなかなか乾かないのです。なにかおかしいと思い説明書を改めて見てみたところ……

撮影:筆者[電力(W)=電圧(V)×電流(A)]
定格電力(安定して出力し続けられる電力の量)は「10W(5V-2A)」とのこと。
一方使用していたのはiPhoneに付属してくるUSBタイプのACアダプターで、よく調べてみると「5W(5V-1A)」でした。
つまり半分の電力だったため、性能も半分くらいしか引き出せていなかったようです。

撮影:筆者
そこで定格電力のとおり10Wのアダプターに変更してみたところ、倍くらいの風量に!これであれば乾かせそうです。
※先に紹介した風量のGifは、10Wのアダプターで稼働させています
電気機器の性能を最大限に発揮させるためには、また安全に使用するためにも、説明書をよく読んで定格電力を確認することが大切ですね。
気を取り直して、検証を進めていきます。
【検証①】ハイカット&ローカット、どのくらいで乾く?

撮影:筆者(いずれもゴアテックス採用シューズ)
今回は雨で靴全体がなんとなく濡れたシーンを想定し、ハイカットとローカットシューズを一度濡らしたあとに脱水した上で、ドライフローミニを使用。乾き具合の経過をチェックしていきます。
検証方法

撮影:筆者
①ハイカット、ローカットのシューズ全体をしっかり濡らす
②5分ほど脱水し、中程度の雨による濡れ具合に調整
③片足だけドライフローミニを使って室内で乾燥(コンセントからの給電)。重さも図りながら乾き具合をチェック
※濡らす前の重さを図り、おおよそその重さに戻ったタイミングを「乾いた」と判断しています。もとの重さはハイカットは680g、ローカットは321gです。
※検証時期は冬で、10度前後の室内で乾かしています。
※今回は検証のために洗濯機で脱水をしていますが、登山靴のメンテナンスをする際は、洗濯機での脱水は傷む原因となるため推奨されていません。水気はタオル等で拭き取りましょう。
1時間後

撮影:筆者
靴の中がほんのり暖かくなってはいますが、まだまだ全体が濡れています。乾くまではまだ時間がかかりそう。
3時間後

撮影:筆者
ローカットシューズはやや湿っているものの、かなり乾いてきました!一方でハイカットはまだ濡れ感が強め。クッション部分が厚いことも乾きづらさの要因になっているようです。
4時間後

撮影:筆者
ローカットシューズは乾燥完了!実際に足を入れてみても湿り気を感じません。ドライフローミニを使わなかった片足はまだかなり濡れていたため、しっかり力を発揮してくれたと言えそうです。
一方でハイカットシューズはもう少し。足首周辺にまだ濡れ感がありました。
6時間後

撮影:筆者
ハイカットシューズもほぼ乾燥完了!足首周りは最後まで手こずりましたがしっかり乾き、もとの重さまで戻りました。一方で、ドライフローミニを使わなかった片足はほとんど乾燥が進んでいませんでした。
【結果】ローカットは4時間、ハイカットは6時間で乾燥

撮影:筆者
小型の乾燥機ながら、どちらのシューズもしっかり乾かすことができました。ローカットシューズなら4時間、ハイカットシューズなら6時間程度が目安となりそうです。
ドライフローミニからそこまで温かい風が出るわけではなかったため、「本当に乾くかな?」と当初不安に思いましたが、ドライフローミニを使わなかった片足は明らかに濡れていたため、その比較でも乾燥性能は明らかでした。
瞬発的に乾燥させる類のものではありませんが、緩やかな温風の循環で靴を傷めることなく、ゆっくり丁寧に乾かしていくという特長を踏まえると、十分満足できる時間なのではないでしょうか。
【検証②】びしょびしょの登山靴だとどう?
検証①をやってみて気になったのが「びしょびしょの靴だとどうなのか?」というポイント。先程は中程度の雨で全体がなんとなく濡れた靴を想定して検証を行いましたが、山中ではずぶ濡れになることや、家で丸洗いをしたいときもあるはず。
そこで今回は脱水を1分だけにして大まかな水気のみを取り、ほとんどびしょ濡れの状態の靴で検証してみます。
【結果】ハイカットは13時間、ローカットは9時間で乾燥

撮影:筆者
結果だけ伝えると、乾燥にかかった時間は、ローカットは9時間、ハイカットは13時間でした。検証①と比較すると倍以上の時間です。
ここまで時間がかかると使わなくても変わらなかったのでは?と思ってしまいそうでしたが、乾燥機を使わないと環境によっては乾くまでに2~3日かかることもままあります。ドライフローミニを使わなかった片足は、ほとんど乾いていなかったことからも、やはり使うことでしっかり乾燥を促してくれたことがわかりました。ずぶ濡れの状態でも必要十分な性能を発揮してくれそうです。
ただ時間がかかるというのは事実。夜のうちに乾かして次の日に履く、といった使い方はハイカットシューズではとくに難しそうです。
「ドライフローミニ」はポータブルバッテリーでもばっちり稼働する?いざ乾燥!

撮影:筆者
ドライフローミニはUSB給電のため、ポータブルバッテリーを使えるのも大きな特徴です。そこでポータブルバッテリーでも十分に乾かすことができるのか、検証してみました。
検証方法
①ローカット、ハイカットのシューズ全体をしっかり濡らす
②5分ほど脱水し、中程度の雨による濡れ具合に調整
③ポータブルバッテリー(Anker10000mA)からの給電で「ドライフローミニ」を使って乾かす
【結果】風量や風温は問題なし!ただ継続時間に課題が……
ポータブルバッテリー(Anker10000mA)を使用しても、コンセントからの給電と変わりない風量と風温を得ることができました。ただ一方で大きな課題が。
それはドライフローミニの継続時間。フル充電した10000mAのモバイルバッテリーでも3時間弱しか連続稼働ができませんでした。そのため今回の靴は乾かしきることができないという結果に……。
軽量・コンパクトに持ち運べる便利さを活かして、テント泊など山中で使うのであれば、軽く雨で濡れた靴や汗で内側が蒸れて湿ってしまった靴を乾かす程度の使い方として、割り切るのが良さそうです。
もしくは、荷物に余裕があるのであれば20000mA以上のモバイルバッテリーを持参するという方法もありかも知れません。重さもでるためややハードルは高くなります。
ほかの山道具も乾かせる? 「ポータブルフローミニ」でいざ乾燥!
宿泊登山のときに「速く乾かしたい!」と思うものは、靴以外にも多々あります。ちょっとした乾燥であればポータブルモバッテリーでも使えるのならば、そんな願いも叶うかも?
ということで、試しに濡れた靴下とTシャツを乾かしてみました。今回は全体をしっかり濡らした状態で検証します。
【結果:靴下】◯〜△:乾いたものの、条件あり

撮影:筆者
ハンガーで吊るして室内干し。結果としては、きっちり乾燥!
しかし6時間ほどかかったため、ポータブルバッテリーを使うのは難しそうです。またハンガーや洗濯バサミも必要なため、テント泊などの山中で使うには工夫が必要です。
【結果:Tシャツ】✕:大きいものを乾かすのは難しい

撮影:筆者
やや無理やりドライフローミニをTシャツ内側の胸辺りに配置し、室内干ししたところ、ドライフローミニが接する付近だけ先に乾くという結果に。
温風の気流を全体に循環させにくいような大きいものを乾かすのは難しいと言えそうです。
“乾かす”ではなく、内部を“温める”という使い方ならどう?
乾燥機で山道具を温められたら、寒い日のテント泊や山の中でも快適になるかも……と思い検証。乾いた状態の手袋、登山靴、寝袋で試してみました。
【結果】手袋:◯ 靴:△ 寝袋:△

撮影:筆者
手袋は5分程度でじんわり温かくなりました!十分実用できそうです。
靴は残念ながらそこまで温まらず。足を入れてもかすかに温もりを感じる程度でした。手袋ほど密封性が高くないため、温風が靴内にとどまらなかったようです。
寝袋は足元のみなど部分的であれば温まりますが、その範囲はあまり広くはないため、温めるために持っていくかと言われれば△かなと感じました。
使ってみてわかった「ドライフローミニ」の良いところ・気になるところ

撮影:筆者
いくつかの用途で使ってみて感じたポイントをまとめてみます。
良いところ
- ずぶ濡れでなければローカットは4時間、ハイカットは6時間程度で乾かせる(使わない場合より断然速い)
- 革のシューズでもひび割れや縮みを心配せず使える
- コンパクトなので収納に困らず、軽量なため持ち運びも苦にならない
- 天気や気温を気にせず靴を乾かせてストレスフリー
- 稼働音が静かなので夜に使っても気にならない
- 手袋など密封性の高いものを温められる
気になるところ
- びしょびしょに濡れた登山靴を乾かすには、それなりに時間がかかる
- ポータブルバッテリーの消費量が大きいため、宿泊登山などの現地で使うのはハードルが高い
- 靴下や手袋も乾かせるが、ハンガーなどの道具が必要な場合も
以上を踏まえた、おすすめの使い方はコレだ!

撮影:筆者
【登山後】
- 下山後、帰宅中の車の中での靴の乾燥
- 帰宅後、自宅での靴の乾燥
【宿泊登山中】
- ちょっとだけ濡れた靴や手袋の山中での乾燥(バッテリーを持参)
- 登山前や山中での冷えた手袋の温め
利用シーンとしてとくにおすすめなのは、登山靴の使用直後。濡れたり汗で蒸気が溜まったりした靴を長時間放置することは、劣化を進める原因に。車の中や帰宅後にさっと乾かせるとシューズのケアがラクになり、靴の寿命を伸ばすという観点でもかなり嬉しいポイントです。
山中で使うパターンではバッテリーを持ち込む必要がありますが、汗や雨で軽く濡れた靴や手袋を乾かせると、翌日のストレスが軽減するはず。バッテリーの容量に余裕があれば、手袋を温める用として使うのもありです。
靴をさっと乾かしてケアの負担を最小限に!

撮影:筆者
速乾を期待するのは難しい一方で、靴にダメージを与えない優しい設計や軽量・コンパクトさは、ほかにはない大きな魅力です。使い方次第で登山中においても十分活躍してくれるアイテムであることもわかりました。
一つ持っておくと、旅行や出張時にも便利。乾燥の圧倒的な手軽さがほしい人は、ぜひ使ってみてはいかがでしょう。
SIDAS ドライフローミニ
価格 (税込) | 6,820円 |
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カラー | ブラック |
本体サイズ(約) | 縦9cm×横5.5cm×高さ3.5cm |
コードサイズ | 全長約100cm |
重量 | 166g |
定格電力 | 10W(入力電力5V-2A) ※USB端子用の電源アダプターは商品に付属しません |
使用中の温度 | 50度~60度 |
取扱い店舗 | 店舗:タナベスポーツ・FOOT PRO STATION・モイワ山荘など WEB:シダスオフィシャルオンラインショップ、アマゾン、アーカムショップなど |