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雨の時期は要注意!吸血種『ヤマビル』とは?

ヤマビルとは、陸に生息する吸血性ヒルの代表種。日本では秋田や岩手から沖縄まで幅広く生息しており、関東では神奈川県の丹沢などで多くの被害が報告されています。
登山でも多くの人が被害を受けているヤマビル。どんな場所に多く生息し、どう対策・対処すればいいのか、など事前にしっかり把握しておきたいですね。
今回は専門家の方に、このヤマビルについて詳しく教えていただきます。
今回教えていただくのはこの方
\教えてくれた専門家/

一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍に『すごく危険な毒せいぶつ図鑑』(世界文化社)。
著書に、『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)など。
静かに忍び寄り、皮膚を削って血を飲む…

ヤマビルは足元から静かに忍び寄り、皮膚の柔らかいところを3つのアゴで削るようにして傷つけます。そして出てきた血を飲み、吸血後はぷっくりと膨れるのが特徴です。
「刺して血を吸う」蚊やマダニなどとは吸血の仕組みが異なるため、感染症の心配も基本的にはありません。ただし、吸血時に麻酔効果、血液を固まらせない効果がある「ヒルジン」という物質を出すため、皮膚感覚が鈍くなり、気づかないうちに血だらけ…ということも。

通常2cm程度の体長ですが、伸縮性に富んでいるため8cmくらいまで伸びることもあります。さらに、弾力性もあり、引っ張ってもちぎれないのもヤマビルの特徴。
ヤマビルに咬まれると、どんな症状がでるの?

咬まれた時の痛みは感じないものの、ヒルジンの影響で出血が止まりにくくなります。不安になってしまいますが、死に至るようなことはないので安心しましょう。
時間がたってから腫れやかゆみが出てきますが、かゆみを出来るだけ軽くするためには、ヒルジンを良く洗い流すことが重要。後半で応急処置の方法も紹介しているので、そちらも確認してみてくださいね!
梅雨時期だけではなく、秋も注意が必要
活動時期は、4月~11月。雨の日や雨が降った次の日には活発に活動するので、梅雨の時期や秋雨の時期などは特に注意が必要です。また、9月~10月にかけては仔ヒルが産まれるシーズンなので、紅葉時期の山歩きにも気を付けましょう。
ヤマビルについての基本がわかったところで…ここからは咬まれてしまった際の対策方法や処置方法、さらに対策方法について紹介していきます。
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ヤマビル(山ヒル)の対策方法とは
ヤマビルに咬まれた時の”除去方法”
“対策はしたけど、咬まれてしまった!”という時に備えて、取り除く際の方法を確認しておきましょう。
ヒルを取り除く方法
① 忌避剤や塩水をかける

対策で紹介した忌避剤をヒルにかけることで剥がすことができます。火であぶる処置なども知られますが、火傷の危険があるため、イカリジン系虫よけスプレーなどを使用するのがおすすめです。
② 塩をかける

食塩スプレーではなく、食塩そのものをかける方法もあります。ひとつまみ程度の塩でも効果があるので、小さなジッパーやタレビンなどに塩を入れて持参しておくと安心。
③ たばこやライターで火を当てる

たばこやライターでヒルに直接火を当てるのも効果的。ただし、火傷には十分気を付けて行いましょう。
ヒルの吐血に注意!

ヒルを取り除くために塩や火を当てると、ヒルが吸血した血を吐き出すことがあります。仲間同士で応急処置をするときには、ビニール袋や手袋を使用するなどして、安全に配慮して行うようにしましょう。
ヤマビルに咬まれた時の”処置方法”

ヒルジンの影響で血はすぐに止まらないので、血の量に慌てず、落ち着いて対処しましょう。
まずは、傷口を流水で洗浄します。この時、ヒルジンを絞り出すイメージで傷口を絞りながら洗い流すのがポイント。しっかり洗うことで、その後のかゆみが軽減します。
洗浄後には、抗ヒスタミン剤を塗るとかゆみが抑えられるので、万が一の時に備えて持参しておくと安心。
※血が止まらない場合は、ガーゼや絆創膏で出血部位を押さえて止血しましょう。