アイキャッチ・記事中画像撮影:筆者
夏と秋の色彩が微妙に混じり合う、絶妙な色合いの山が好き!

今年は晴れ間の少ない雨の九月でした。アプリでとった活動日数や距離といった数値的な統計記録は、登山もランニングも近年まれにみる少なさ。一年の半分近くを山で過ごしているぼくにとっては“異常事態”です。そんなぼくと同じように、不完全燃焼な日々を過ごしているYAMA HACK読者も多いのではないでしょうか。
この秋に狙っている紅葉の山も、どうなることやら。思うような山行ができない可能性もありそうです。とはいえ、局地的な晴れと秋の色彩を求めて、どこかの山をハイキングしに行きたいところ。
ということで、今回は個人的に大好きな「夏山と秋山の色彩のあわい、紅葉にグリーンが映える絶妙な風景」を楽しむべく、関東以北から4座を選出しました。個人的に、紅葉に欠かせない色は“緑色”だと思っていまして……。
- 巻機山(新潟県)
たおやかで艶やかなる天空の草原稜線 - 焼石岳(岩手県)
東北の登山者のお気に入り!奥羽山脈の隠れた名山 - 磐梯山(福島県)
東西南北にまったく異なる絶景が待っている! - 蔵王(宮城県、山形県)
超絶スケールだけど歩く苦労は少ない異世界ハイキング
1.巻機山(新潟県)|たおやかで艶やかなる天空の草原稜線

折しも、この原稿を提出する予定の日は、新潟方面に貴重な晴れ予報が出ていました。今回のテーマにピッタリの、微妙というか絶妙な色合いの紅葉の山が撮れるかも……。ということで、編集担当者に締め切り日を調整してもらい(すみません)、ややフライング気味の紅葉狩りに行ってきましたよ。
それがこちら、新潟県の巻機山です。どうでしょう、この絶妙さ加減。夏の緑色と秋の黄色が交わったような、ハンパな、いや微妙な色合い。緑が強めの紅葉が好きなぼくにとっては、もう最高クラスのご褒美です。
空から降りそそぐすべての自然エネルギーを、山の全面で受けとめるかのような、たおやかなる稜線美。山頂部が平らな巻機山らしい魅力だと、ぼくは感じます。

巻機山といえば、作家・深田久弥による『日本百名山』の一座です。登山をはじめて間もないころに登ったときは、残念なことに終日ガスガスでした。山容はもちろんのこと、森のすばらしさも、水の豊かさも、空の大きさも、周辺に広がる上越国境の山岳の眺めも、なにもかもがわからなかった。なぜこの山が、作家を虜にしたのだろうか、と。はい、いまは理解できます。巻機山、だいすき。
まきはた、という言葉の響きもすてきです。その名の通り、織物を腰に巻いた女神を想像します。天孫瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)の母である栲幡千千姫命(タクハタチヂヒメ)が祭神とのことですが、ふもとの巻機権現社に祀られているのでしょうか。巻機山のある南魚沼地域では厳しい冬場の収入源として養蚕と機織りが盛んだったこと、そして最高級の伝統的な麻織物「塩沢織」の産地だということは、この美しい山名と無関係ではなさそうです。
そういえば、登山口の駐車場まで向かう道中の風景に、雪国ならではののっぽな家屋的特徴が発見できます。1mほどの基礎土台の上に家屋が建てられていること。さらには雪の量と重さに備えた高い鋭角な形状の屋根。あそこにお蚕様が飼われていたのかも?

巻機山は、連なる山に足を運ぶこともお忘れなく。というのは、この美しい稜線伝いに寄りそう山岳——巻機山、御機屋、牛ヶ岳、割引岳——を総じて巻機山だから。
どの頂もすばらしい眺めですが、とくに牛ヶ岳から眺める越後駒ヶ岳や八海山はスペクタクル!それと割引岳から眺める上越国境方面は、第一級の展望です。すごすぎてシャッターが止まらないことでしょう。カメラっこのみなさん、出発前に予備のSDカードとバッテリーをお確かめくださいね。
おすすめコース

コース概要
桜坂駐車場(90分)→五合目(50分)→六合目(110分)→ニセ巻機山(10分)→巻機山避難小屋(30分)→御機屋(10分)→巻機山(20分)→牛ヶ岳(20分)→巻機山(10分)→御機屋(25分)→割引岳(25分)→御機屋(20分)→巻機山避難小屋(15分)→ニセ巻機山(65分)→六合目(30分)→五合目(50分)→桜坂駐車場
※コースタイムが9時間を超えるロングコースです。秋は日も短いため、余裕を持ったスケジュールで早めに出発するようにしましょう。
2.焼石岳(岩手県)|東北の登山者のお気に入り!奥羽山脈の隠れた名山

岩手県の焼石岳。その山名から、焼けた石が転がっている火山を連想します。しかし、荒々しい山を想像させるよりもむしろ、実際に歩いてみると起伏に富んだ地形に魅力があると感じます。たとえば、陽ざしの角度。それによって無数の谷筋や地形のうねりに影ができるのが、ほんとうに美しくて。
小さな沼や池塘が多く、高山植物も豊か。ミズバショウとブナが多いことから熊には注意が必要ですが、それでもなお東北の山好きのみなさんから愛されている名山です。

コースは、南麓にある中沼から登るのがポピュラーです。東北の山らしく、空に溶けだしそうなほど広い森の山肌に、すっかり心を惹かれてしまいます。少しずつ高度を上げて、ときどき後ろを振り返る。すると、岩手の広大な眺めが、登る者の背中を後押ししてくれるかのよう。
かと思えば、こんどは下って鞍部へ下りる。岩石に囲まれたゾーンでは、ああこれが焼石の由来かなと想像するような場所も。とはいえ、総じてたおやかで歩きやすい山ですよ。

思い出深いのは、色づきはじめの初秋のころに、中沼登山口から入って金明水避難小屋を利用し、経塚山を経て夏油温泉へと下りたコース。なかなか野趣あふれるすばらしい道のりでした。
東北の仲間(おじさん4人)とともに、それぞれが自分と向き合いながら黙々と歩く時間があったり、バカ話に花を咲かせたりしながらの、熊対策を兼ねた賑やかで明るい山行。緑が強めのフライング紅葉も美しかったなあ。そうそう、経塚山ではオコジョも出迎えてくれましたよ。

ちなみに、営業小屋の存在しない山域を多々擁する東北において、避難小屋を利用した山行は比較的寛容に行われています。それもこれも、みなさんの使い方がきれいだという前提があるから。出るときは、来たときよりも美しく。そして、袖振り合うも他生の縁です。お互いにリスペクトをもって、気持ちよく挨拶を交わし、互いに配慮をして場所を融通する、はやく寝る。これ大事。当たり前のことですが、そこに“避難”してきた人がいたら、優先して場所を空けましょう。
なお、利用にあたっては協力金が必要な小屋があります。管理者への感謝の証ですから、そういうケースに備えて小銭や少額紙幣は多めに持っておくこともマナーです。トイレの利用にも要ります。売店はありませんが、夏になると小屋番さんが登ってきてビールやおやつを販売してくれる小屋もあったりして。飯豊の避難小屋が有名ですね。かち割った雪渓で冷やした缶ビール、忘れられません。
おすすめコース

コース概要
中沼登山口(50分)→中沼(40分)→つぶ沼コース分岐(30分)→銀明水避難小屋(70分)→姥石平分岐(30分)→焼石岳(15分)→焼石神社(九合目)(25分)→東焼石岳(20分)→姥石平分岐(40分)→銀明水避難小屋(20分)→つぶ沼コース分岐(30分)→中沼(30分)→中沼登山口
