3.大山(神奈川県)|雪の美富士と相模湾の美観

言わずと知れた神奈川の名山、大山(おおやま)。もう登ったよという登山者が、YAMA HACK読者の中にもたくさんいることでしょう。それでもあえて紹介する理由が、この山にはあります。
というのは、とにかく「冬の富士山」の美しい眺めが大山の魅力だということ。山頂の西側にぐるりと回り込めば、丹沢の山並みを従えた秀麗な富嶽をわがものにできます。遠く白銀に輝くのは、南アルプスの雪稜。これが見えることもまた、冬の大山の醍醐味です。
ちなみに、記紀神話に登場する木花開耶姫は富士山の神さまで、大山の神さまである大山祇神はそのお父さん。ここから娘を見守っているわけですね。江戸時代には父娘を詣でる「両詣り」が流行しました。

ふもとからケーブルカーでアクセスできる大山阿夫利神社に、大山山頂への登山口(登拝口)があります。標高およそ700m地点にある古社からスタートできるのは嬉しいポイント。急ながらも整備がゆき届いた山道が続き、初心者でも歩きやすい好ルートが待っています。とはいえ最高地点は1252mと、まあまあの高さです。真冬の積雪と凍結にはご用心を。
神社の境内がすでに絶景ですから、山頂からの眺めはさらに視界が大きく、一級品。鎌倉や横浜、三浦半島と真鶴半島の間に広がる相模湾と沖合の相模灘、そこに浮かぶ江の島などなど、神奈川の豊かな風土に思いを馳せる贅沢な眺めを楽しめます。

低山の下山後の締めくくりに、地元グルメは欠かせません。小田急線伊勢原駅前にあるとんかつ屋「麻釉」は、個人的なお気に入りのひとつです。写真が雄弁なので多くは語りません。味はもちろん保証しますよ。
おすすめコース

コース概要
阿夫利神社下社(65分)→16丁目(40分)→25丁目(20分)→大山(70分)→見晴台(15分)→雷峠(35分)→九十九曲口(35分)→日向山荘(15分)→日向薬師バス停
4.チバンドキャニオン(千葉県)|低山王国・南房総に秘められし異世界

ずいぶん前のことですが、鋸山から稜線を伝って奥地へ分け入ったことがありました。私有地を避けながら踏む必要があるため、コース取りは慎重になりますが、標高300mに満たない低山地帯とは思えぬ異世界に心を躍らせた記憶があります。
その一帯、いまは「チバンドキャニオン」と呼ばれ、登山者から親しまれています。その名のごとく、千葉のグランドキャニオンという意味です。鋸山から小鋸山を結ぶルートはやや難所ですが、南側にある下貫沢の駐車場から入るルートは比較的歩きやすく、道も明瞭。痩せた尾根や岩場があり、アスレチック感満載の山歩きが楽しめます。

ルートの先にある採石の跡地は、質の良さで知られた房総石の産出地。まるで古代遺跡のような様相で、白狐山のあたりまで進むと、まさにグランドキャニオンと呼ぶにふさわしい迫力の眺めが広がっています。
周辺には、嵯峨山やスイセンピークといった千葉の名低山もあります。温暖ゆえ冬にはスイセンが盛んな房総半島ですが、そのあとに続く季節の花を期待しながら歩くのも楽しいでしょう。とはいえ、総じて起伏は激しく、人気の少ない道のりです。リスクを踏まえると、下貫沢からのピストンが安全です。
最新の日記などで現地の状況を調べてからチャレンジしたいチバンドキャニオン。温暖な房総半島で冬の低山ハイク、楽しいですよ。
おすすめコース

技術的難易度: ★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
下貫沢駐車場(30分)→小保田峠(75分)→白狐峠(20分)→小鋸山(10分)→白狐峠(80分)→小保田峠(20分)→下貫沢駐車場
冬の低山こそ、段取り八分!

冬の低山には、やはり冬ならではのリスクがあります。たとえば、こんな具合に。
葉の落ちない雑木林や森に空が隠されてしまい、町と比べると圧倒的に日暮れが早くなります。多くの登山者はそれを心得ているため下山開始が早いですが、うっかりすると周囲に人影がなくなり、焦ります。
山を歩く距離やアップダウンの繰り返しは疲れますが、それと山の標高とは関係ありません。たとえ低い山でも起伏が積み重なると、結果的に想定以上に汗をかき、体力も消耗。冷たい風に吹かれて急激に体温が下がり、焦ります。
自宅周辺の空が晴れていても、山は標高や地形、離れた山地や海から届く風の影響などで天気が変わります。。山に入ってみると数日前の雪が道に残っていたり、前夜の雨で路面が凍結していたり、午前中は晴れていたのに昼からガラリと悪天になったりして、めちゃ焦ります。
つまり、事実と推測は異なるもので、町で日常を過ごす感覚のまま山に入ると、想定していないことばかりです。これから出かける山のコース計画を立てるときは、最新の事実を絶えず収集し、手抜きのない装備を心がけたいところ。なにごとも“段取り八分”が肝要です。
