撮影:筆者
カーボン製トレッキングポールの新基準

軽さを打ち出すトレッキングポールは、これまで強度の低さがネックでした。逆に、強度を求めると本体重量は重くなりがち。軽くて強いトレッキングポールが欲しい! そんな願いに応えるように開発されたのが、<arata>からリリースされた「ATP-125」です。
<arata>は、突如国内の山道具業界に現われた、今もっとも注目されている国内のアウトドアギアブランド。驚くべきは開発力のレベルの高さで、独自のギミックを備える山岳テントや高断熱性を誇る軽量エアマットなど、停滞気味だった山道具の進化にブレイクスルーをもたらす話題作を次々に発表しています。
そんなブランドから発売された「ATP-125」は、標準重量が158gしかなく、それでいて耐荷重は36kgもあるという驚異のスペック。これはもう、人気が出る予感しかありません。さっそく気になる特徴を見ていきましょう!
<arata>ATP-125の基本情報
- 価格:12,100/1本(※)
- 標準重量:158g
- 耐荷重:36kg
- サイズ:100〜125cm
- 収納サイズ:38cm
※1本売りなので、両手で使いたい場合は2本購入する必要があります
コンパクトになる折りたたみ式

登山で使われるトレッキングポールの種類は“伸縮式”と“折りたたみ式”に分かれます。近年の主流は折りたたみ式で、ATP-125もこのタイプ。折りたたみ式は収納サイズが短くなるメリットがあり、ATP-125の収納サイズはわずか38cm。日帰り用のデイパックの中に入れることもでき、パッキング中や使用後もかさばることがありません。
無段階で長さの調節が可能
折りたたみ式のトレッキングポールは長さを調節できないものもあるなかで、ATP-125は長さ調節機能付き。ロックとリリースには弱い力で操作できるレバーロックを採用し、最短100cm〜最長125cmの幅で使用サイズを調節できます(1cm刻みの目盛り付き)。登り斜面では短めに、下り斜面では長めに調節するのがトレッキングポールの使い方のセオリーです。
スノーバスケット&ゴムキャップも付属

軽量なトレッキングポールは負荷がかかりやすい雪山登山に対応していないものが多いですが、高耐荷重をもつATP-125は一年中使い倒せる4シーズン仕様。雪上で抵抗を高めるスノーバスケットが付属します。
地面に突く”石突き”と呼ばれる部分は、耐摩耗性に優れるタングステン製。ここに土の登山道や木道へのダメージを減らすために取り付けるゴムキャップも付いてきます。
軽量化&高耐荷重化を可能にした独自構造
ATP-125のいちばん気になる特徴は、なんといっても軽量性と耐久性の高バランス。一般的に相反する軽さと強さを、どのようにして同時に高めることに成功したのでしょう? その背景には、これまでのトレッキングポールには見られなかった独自の構造が関係しています。
カーボン含有率を高めたシャフト

ATP-125の素材には、軽量なトレッキングポールに多用される定番のカーボンが使われています。しかし、同じカーボン製のシャフトでも製造方法には種類があり、ATP-125には特殊な手法でカーボン繊維を編み込むことで重量比強度を高めた、ほかとは違うカーボンシャフトが使われています。
連結は唯一無二のねじ込み式

折りたたみ式のトレッキングポールは、引き伸ばしたあとにラチェットで固定するものが一般的ですが、ATP-125では各シャフトの連結にねじ込み式が採用されています。これは、筆者の知る限りATP-125にしか見ることのできない特徴です。
接続部分をねじ込み式にしたことで、シャフトがしなったとき接合部分に加わる力が分散。さらに、ネジの部材に高強度で知られる7000番台のアルミ合金を使うことで、一層耐久性が高められています。
補強されたショックコードを採用

折りたたみ式トレッキングポールのシャフト同士をつなぐ部材には、従来シリコンなどでカバーされたワイヤーが使われるのが一般的でした。これはワイヤーが切れるとポールが使えなくなるトラブルを防ぐための作りなのですが、各シャフトがねじで連結されるATP-125はそこまでの強度が必要なく、極端な話、ワイヤーがなくても使用可能。
そこで採用されたのが、ダイニーマ繊維で補強されたショックコードです。必要最低限の強度を保ちつつ、ワイヤーから大幅に重量を削減。切れたときには簡単に修理でき、メンテナンスのしやすさも向上しています。