アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
自力歩行できない傷病者を搬送するメリット

救助隊がすぐに到着できない山の中でのトラブル。行動不能になった登山者を、安全な場所や救急車が進入できる林道・救助ヘリコプターの降下ポイントなどまで予め搬送して移動させておくことは、症状悪化を低減したりスピーディーな救助にも有効です。
もっともシンプルな搬送方法は傷病者を背負うことですが、不安定で傷病者を落下させてしまうリスクもあります。こうした傷病者を搬送する際に、山中に限らず救助隊が使用するのが担架(ストレッチャー)です。
ザックが簡易担架に早変わり……!?

もちろん、登山中に万が一を考慮して担架を持ち歩いている人はいませんよね。しかし、登山用ザックを活用して、簡易担架を作ることができるのです。登山だけでなく災害時などにも役立つ簡易担架の作り方と搬送方法を、この機会にチェックしておきましょう。
ザックを使用した簡易担架の作り方

堅牢なショルダーハーネスを備えた40L程度のザックが3つあるとベター
ザックを使った簡易担架に必要なのは、登山用ザック3個。大きさは容量40L程度以上が望ましいです。容量30L以下の小型のザックで作った簡易担架だと、身長が低い人しか固定・搬送できません。
またザックの容量以上に重視したいのが、ショルダーハーネスの堅牢性です。あまり薄かったり細かったりすると、搬送中に切れてしまう可能性があるからです。
ザックの中身を出す

ザックは中身を抜いて、空の状態にしておくことがベストです。このため中身を保管しておくことができるスタッフバッグや大型のゴミ袋などを用意しておきましょう。最初からザックとスタッフバッグやゴミ袋を二重構造にしておくことが、アイテムの防水や素早く空にできる点からもおすすめです。
抜いた中身は現場に放置して、傷病者を別の場所へ搬送するケースが大半です。貴重品は盗難防止の観点から、ザックの雨蓋などに保管したまま一緒に搬送します。ただし傷病者を乗せることで壊れたりつぶれたりする懸念があるアイテムであれば、サコッシュなどザック以外に収納してください。
3つを縦に並べ、中央のザックのショルダーハーネスで上下のザックと連結する

まず、3つのザックを縦に並べます。下側のザックの雨蓋と上側のザックのウェストベルト部分を重ねるように置きましょう。

中央のザックのショルダーハーネスを、左右とも外します。
ショルダーハーネスはウェストベルトやコンプレッションストラップと違い、普段あまり外すことがないストラップです。バックルなども付いていないため、外しにくい場合も。中央に配置するザックはショルダーハーネスを着脱しやすいモデルがおすすめです。
また頭を支える人が持ちやすいように、上側のザックはグラブループが大きめ・太めのものがおすすめ。ザックの容量が異なる場合は、上半身が安定するよう上側か中央側に大きめのザックを配置するとよいでしょう。

取り外した中央のザックのショルダースハーネスを、左右とも上のザックのショルダーハーネスに通します。

今度は中央のザックのショルダーハーネスを、左右とも下のザックのショルダーハーネスに通します。
最後に取り外した状態だった中央のザックのショルダーハーネスを、元の状態に戻します。これで3つのザックが連結されたことになります。
安全環付きのカラビナで、手早く連結する方法も

幅広・肉厚なショルダーハーネスにもかけることができる大きめのカラビナを4つ利用すれば、中央のザックのショルダーハーネスを着脱する手間を省略できます。搬送中にザック同士が分離してしまわないよう、カラビナは安全環付きのものを使用して閉めておきましょう。
これで3つの登山用ザックを使った簡易担架が完成しました。次項以降では編集部員がこの簡易担架を使って、いよいよ傷病者の固定と搬送にチャレンジします。
ザックを使用した簡易担架への固定方法

完成した担架の上に、搬送する傷病者を横たえます。先に紹介した中型以上のザックを使用した場合、平均的な身長の傷病者であれば、足首を下のザックのウェストベルト付近に横たえると、頭部が上のザックに乗るはずです。
上部のザックのウエストベルトで胸部付近を固定

まずは上のザックのウェストベルトを締めて、傷病者の胸部付近を固定します。ザックの大きさによって若干異なりますが、なるべくワキの下に近い高い位置で固定した方が、傷病者が安定します。
中央のザックのウエストベルトで腰付近を固定

続いて中央のザックのウェストベルトを締めて、傷病者の腰付近を固定します。こちらもザックの大きさによって固定位置は若干異なりますが、背負うとき同様の骨盤付近から太もも付近であればOKです。締められると苦しい腹部をきつく固定することは、避けましょう。
下部のザックのウエストベルトで足首付近を固定

最後に下のザックのウェストベルトを締めて、傷病者の足首を固定します。これで傷病者の簡易担架への固定は完了です。
