パタゴニアでもっとも軽量なレインジャケット
今回レビューするのは、パタゴニアの「ストーム・レーサー・ジャケット」です。
男女モデルがあり、着用テストをしたメンズモデルで重量198g。素材は、防水性、透湿性、撥水性、長期的耐久性を備えた、パタゴニア独自開発の「H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル」。
カタログには、
表面にリサイクル・ナイロン100%素材のリップストップを使用した、羽のように軽量でドライな着心地を保つH2Noパフォーマンス・スタンダード採用のシェル。ソフトで快適な肌触りのトリコットの裏打ち付き
とある通り、しなやかで軽やか。フンワリと羽織るような着心地です。
小型バックパックを背負ったまま、上から着られる!
身頃を背中側から見ると、脇から裾までストレートに近いカタチで落ちていて寸胴。ゆったりとしたシルエットです。
なぜか? それは、小型のトレラン用バックパックを背負ったまま、このジャケットを着用するため!サイズや体型にもよるけれど、10Lくらいの容量のバックパックなら、窮屈さを感じずに上からの着用が可能なんです。
ハの字に開く前身頃は、パックへのアクセスをよくする機能
さらに特長的なのが、フロントジッパー。通常はフロント中央にジッパーが配されるけれども、ストーム・レーサー・ジャケットは、フード部から前身頃をエプロンのようにハの字に開くようなダブルジッパーを採用しています。
上の写真でジャケット内に入っているのは、パタゴニアの「スロープ・ランナー・エンデュランス・ベスト 3L」という、ショルダーハーネスのポケットに0.5リットルのソフトフラスコを標準装備したトレラン用バックパック。ジャケットを着用した状態のまま水分補給ができ、チェストポケットに収納した行動食を取り出せます。
実際に背負ってみると、ハの字に開いた部分からのアクセスが確かにしやすいのです。雨天時には、身体が雨に濡れるのを最小限に防ぎながら補給をスムーズに行えます。
また冷たい風に吹かれたり、気温が低かったりする時には、パックのポケットに収納したスマホやモバイルバッテリーを冷やすことなく、バッテリーの持ちをよくしてくれる効果も期待できます。これは、ありがたい機能です。
全開するジッパーで着脱も容易
トレイルランナーがジャケットを着用する際、パックを背負ったまま着用するシーンを見て、製品開発がスタートしたのではないかと想像します。
そしてパックのフロント部のボトル等へのアクセス性をアップするために、このハの字型のフロントを採用。併せて、バックパックを濡らさずに済む実用性をポイントにしたのでしょう。
また、見た目はプルオーバーのように見えますが、右側のジッパーが全開するので、着脱は簡単。ストレッチ性はありませんが、ポンチョ的ジャケットでちょうどよいゆったり感。パックの上から着用してもツッパリ感はなく、ジャケット内は空荷で走ったときのような通気性を確保。他のジャケットにはない、機能です!
では、ハイカーにとっては、どうなのだろう?
身長174センチ、体重68キロ、パタゴニアのウエアは通常M。今回着用したサイズもMで、袖がやや長め。身頃は比較的ゆったり。ジャケット内にバックパックを着用しないなら、Sサイズでもよいかもしれません。
とはいえ、モタつくような感じはないので、筆者のように、トレランにもハイキングにも使いたい人は、通常通りのサイズ選びで問題なさそうです。
保温性・防風性の高いジャケットは、低温時に機能しそう
背負っているバックパックはパーゴワークスの「ラッシュ30」。デイハイクから山小屋泊、UL装備ならテント泊も可能なモデルです。ストーム・レーサー・ジャケットの内部の空気循環のよさを活かすため、ウエストベルトを装着せずに使用。
気温8度前後でしたが、小走りでハイクアップするとすぐに暑くなり、ジャケットの保温性の高さを感じました。これは筆者が暑がりの汗かきということもあります。
暑さを感じたら、ジャケット内にバックパックを着用したときのように、胸を大きく開けば、ムレを排出・換気させることもできます。
その点は、センタージッパーとの違いに慣れて、自分なりの工夫が必要そうです。
ダブルジッパーを上げると、センタージッパーと違ってアゴに当たる違和感がなく、しかしも包み込まれている感じが強くあります。薄く、ソフトな生地ですが、フードを被ると冷風の影響は最小限。高い防風性を装備しています。
フードのヒサシは短めで、強めの雨に降られた時には顔に雨が当たってしまうので、撥水性の高いキャップとの併用が必須です。
ところで、ジャケット内へのアクセス性のよさがその機能だと思っていたハの字に開くダブルジッパー。ジャケットの外側にバックパックを背負ってみると、ショルダーハーネスに沿って配置されていることで、ジッパーの違和感が最小限に抑えられるよさも発見!
また、今回背負ったラッシュ30のようにゴツいウエストベルトを装備せず、肩甲骨にのせて背負うUL系の小型&中型バックパックとの相性のよさも感じます。
パッカブル仕様で携帯性も抜群
ジャケットの重量は、先に書いた通り198gとかなり軽量。フード内のメッシュポケットに収納して持ち運べるパッカブル仕様。必要最小限の装備しか持てないトレイルランニング用に開発された携帯性の高さは、ハイキングでも実用的です。
軽量コンパクトさは、デイハイクから長期山行まで武器になる!
パタゴニアのレインウエア(メンズモデル)との比較をすると……
モデル名 | 価格 | 重量 |
|
トレントシェル 3L・ジャケット | ¥25,300 | 400g | 50デニール |
グラナイト・クレスト・ジャケット | ¥33,000 | 400g | 30デニール |
スレート・スカイ・ジャケット | ¥28,600 | 295g | 30デニール |
ストーム10・ジャケット | ¥44,000 | 235g | 20デニール |
ストーム・レーサー・ジャケット | ¥36,300 | 198g | 20デニール |
生地の厚さは異なりますが、いずれもH2Noパフォーマンス・スタンダード・シェルという3層構造の防水透湿素材を使用。ストーム・レーサー・ジャケットのみ、ダブルジッパーを採用しています。
ダブルジッパーの使い方には慣れが必要ですが、気温の低い季節ほど機能し、風に強い仕様です。
センタージッパーよりも、ジッパーの違和感はなし!
袖口は面テープで調節できる仕様ではなく、伸縮素材を採用。裾部はドローコードではなく、スナップボタンで多少のフィット感を変更可能。3層構造で重量198gという軽さは、素材の薄さに加えて、各部の軽量化、省略によって実現しています。
スピードを求めるトレイルランニング用と敬遠せず、整備された登山道のハイク中心であれば、新しいカタチの軽量レインジャケットとして、かなりの快適性をもたらしてくれるジャケットに思えました。
それでは皆さん、よい山旅を!
メンズ・ストーム・レーサー・ジャケットの詳細はこちらウィメンズ・ストーム・レーサー・ジャケットの詳細はこちら