パタゴニアから初登場!PFCフリーレインウェア「スレート・スカイ・ジャケット」
この春にリリースされた「スレート・スカイ・ジャケット」は、パタゴニア初のPFCフリー防水性ジャケット。
パタゴニア独自規格「H2Noパフォーマンス・スタンダード」の3層構造を採用し、海で使用され廃棄予定となった漁網を100%リサイクルした“ネットプラス”生地で作られているレインウェア。パタゴニアらしい環境に配慮された防水ジャケットですね。
まずはこのジャケットの特徴でもある、「ネットプラス」と「PFCフリー」について、簡単に紹介します。
“ネットプラス”生地とは
スレート・スカイ・ジャケットは、ネットプラス・ポストコンシューマーリサイクル・ナイロン製。これは、ブレオ社の“ネットプラス”という素材で、古くなり廃棄される漁網を回収してナイロン素材として再生したもの。
多くの地域では古くなった使用済み漁網がそのまま海に廃棄されていて、その廃棄漁網に捕らえられた海洋生物はケガを負ったり命を落としてしまい、生態系に重大な悪影響を及ぼしていると考えられています。
ブレオ社は南米の漁師の方々と取り組み、追跡可能な方法で漁網を回収、仕分け・洗浄などを経てネットプラスを作ります。使用した後に回収された材料(=ポストコンシューマー)からのリサイクルや、ごみとして捨てられた物を回収して再生することは、地球環境の再生に貢献する活動のひとつではないでしょうか。
PFCフリーとは
PFCフリーの耐久性撥水加工(非フッ素化DWR)とは、環境に悪影響を及ぼすPFC(フッ素化合物)を使用しないで耐久撥水加工を行うこと。
現在ほとんどのアウトドアブランドで採用する耐久性撥水加工(DWR加工)には、撥水効果を持たせる薬品としてPFCが使用されています。
PFCは環境と人体への残留性が非常に高い化学薬品である事が判明。使い続けることにより環境に残り水質を汚染し、人びとの健康にも有害であることから使用制限が強化されていて、世界的にPFC不使用(=PFCフリー)の方向へと向かっています。
PFCフリーはこまめなメンテナンスが大切
PFCフリーの耐久撥水加工をしたレインジャケットは、以前の加工より「撥水性が落ちるのでは…」と不安な方もいると思います。
しかし、PFCフリーであっても撥水性は従来と同様の機能を発揮!登山でも問題なく使用できる機能性とのこと。
ただし一点だけ注意点が。
PFCフリーの素材は、汗や日焼け止めなどによる油汚れに弱く、これらの汚れによって撥水性が落ちていくため、こまめなメンテナンスが必要となります。
撥水性のあるウェアは、生地の表面に撥水基(はっすいき)という分子レベルの突起を付着させることで、水をコロコロと弾くよう加工が施されています。”撥水性が落ちる”とは、汚れの付着などにより撥水基が倒れたり取れた状態のこと。
撥水性が落ちて生地に水がしみ込みやすくなっても、防水性が損なわれたわけではありません。
ただ、撥水性が落ちて生地に水がしみやすくなると、身体から出た湿気が逃げず、ウエア内が蒸れやすくなります。つまり、撥水性が落ちると透湿性も損なわれるのです。
この問題は、汚れのケアさえしっかりすれば解決。重要なのは、生地に汚れを残さないこと。
お手入れ方法は従来のレインウェアと同じ
油汚れなどのケアとは、きちんと洗濯し熱処理をするという従来のアウトドアジャケットと同じお手入れ方法。
ただ、従来であればシーズンごとだったり気になった際に洗濯などをしがち。その点、PFCフリーのウェアの場合、山行で着用したらその都度のお手入れが必要です。そうすることで、汚れが生地に残らず、撥水性もキープされるのです。
メンテナンス方法
①洗濯洗剤を用意する
漂白剤や柔軟剤、蛍光増白剤などを含まない洗剤を用意。アウトドアウェア専用の洗剤だとより安心です。
②洗濯機を使用して洗う
ファスナーなどを全て閉じ、日常の洗濯時と同様に洗濯機の通常コースへ。防水性素材は水を通さないので脱水はしない、または、ごく短時間にしましょう。(化繊素材は洗濯バッグにいれるのがおすすめですが、シェルはそのままでも問題ありません)
③直射日光を避け陰干しする
洗濯後は、形を整えてから陰干しします。
④乾いた後は熱処理をする
ジャケットの表地に熱を加えることにより撥水性が復活します。乾燥機に10分程度かけるか、ない場合には、あて布をして低温でアイロンをかける、もしくはドライヤーで熱風をあてる等の方法も有効。
【実物チェック】気になる細部まで確認
スレート・スカイ・ジャケットは、PFCフリーなど環境にやさしいという特徴だけではありません。
ミニマムなデザインでシルエットも美しい。何より、しなやかな着心地と細部にまでこだわった使い勝手の良さは秀逸!
特徴的なストームフラップは通気性の確保に活躍
最も特徴的なのは首元〜胸部のスナップ止めストームフラップ。スナップボタンだけをとめ、ファスナーを好きな位置まで開けることでベンチレーションとして空気を排出する働きをします。
スナップボタンだけをとめ、ファスナー全開だと、上の写真のようなポンチョスタイルにも。雨が吹き込まない状況であれば、このスタイルは換気力抜群。
逆に、全てをきっちり閉めれば、強い風が吹いた時などに冷たい空気から首元を守ってくれそうです。
袖口や裾のドローコードなど細部まで使いやすい
内側に伸縮性パイピングを備えたシンプルな袖口。ベルクロテープタイプではないのでかさばらず、手首にやさしくフィットします。
裾の内側にはドローコードを備え、絞ることでフィット感を調整し雨風の浸入を防ぎます。なお、雨風がない場合などはコードをリリースしたほうが、内側に熱がこもりにくくなります。
調整簡単で雫が入りにくいフード
フードは後頭部のドローコードで調整可能。コードを引っ張り自分の頭部に合わせていきます。さらに、しっかりとしたツバにより視界を妨げません。安定したフィット感で、フードを被った状態でもしっかりと視界を保ちつつ、水の侵入を防いでくれます。
ベンチレーションも兼ねるポケット
両サイドにあるポケット内は、メッシュパネルとなっていてベンチレーションの役目をはたします。
軽量&携行性も◎
身頃と袖をフードに丸め込んで収納することでコンパクトに。軽量で邪魔にならないサイズ感なので、ザックに忍び込ませておけば、急な雨にも対応できます。
【レビュー】着てみてわかった!軽くて蒸れない快適さ
スレート・スカイ・ジャケットの性能を、雨天の瑞牆山(標高約2,230m)・往復約6時間の山行でチェックしてみました。かなりの雨が降る中で登山をスタートし、山頂以降は晴天となり蒸し暑い下山となりました。
【着用時のデータ】
先に結論からお伝えすると、雨上がりのモワッとした状況で着たまま行動しても暑くなりすぎず快適。行動中は汗をかくからレインウェアを着たくない、だけど着用しないと雫などで濡れてしまう、そんな時にこそ重宝するジャケットだと感じました。
それでは、フィールドでの様子を見ていきましょう。
レインウェアに求められる撥水性能をしっかりと発揮!気になっていたPFCフリー
気になっていたPFCフリー耐久性撥水加工の性能ですが、しっかりと水を弾き山行終了まで持続。
実は、前日にも1時間ほど登っていたのですが、かなりの雨量かつさらに雨が強くなる予報だったことから、安全のため断念。山麓でテント泊をすることにし、その間も着用して雨の中を行動。実際の山行での出番は翌日となったため、実質2日間雨の中で行動したことになりましたが、特に不安を感じることはありませんでした。
レインウェアとは思えない、軽くてしなやかな着心地◎
また、驚いたのがしなやかで柔らかい生地。鎖場などでも動きを制限されることなくスムーズに行動できました。
レインウェア特有のゴワゴワ感もなく、適度なフィット感でとにかく動きやすい。
雨が上がった後は、気温も上昇し汗ばんできましたが、滑らかなジャージーの裏地なので肌に張り付くこともなく着心地の良さをキープ。
半袖のベースレイヤーの上に直接着用し、降雨状態のスタートから晴天となった下山時まで脱ぐことはありませんでした。
山頂では、時折晴れ間ものぞきましたが、風が強くジャケットが手放せない状況。しっかりと風を防いでくれたことはもちろんのこと、行動中の汗や熱も排出されていて汗冷えの心配もありませんでした。
レインウェアなのに、着心地がソフトで着ていることが気にならない、ストレスがないことに驚きです!
ストームフラップが予想以上!めちゃくちゃ優秀なベンチレーション
雨が上がった後も着たまま行動していたのですが、スレート・スカイ・ジャケットはこの雨上がりに真価が発揮されると感じました。
ストームフラップやポケットを開けて換気することで、効率的に内側の湿気を逃してくれるのを実感。運動量が増えた状況で、スナップボタンを1つだけ止めファスナーを全開にすると空気が通り涼しくなりました。モワッとした不快感ゼロ!
気になった点
強いていえば、帰宅後、お手入れ前に撥水性はどうなったのか実験したみたところ、バックパックに触れる肩のあたりのみ、若干表面に雨水がにじむ結果に。もちろん、山行中に浸水などはありません。
洗濯後、きちんと熱処理を施したところ撥水性は復活しました。
しなやかで軽いレインウェアが欲しい人におすすめ
それなりに登山経験のある人なら、朝だけ雨予報で徐々に晴れる予報なら、多少の雨を覚悟して登りがち。雨がやんでも樹木や岩肌が濡れていればレインウェアを羽織って歩いた経験がある人も多いはず。
梅雨の時期など、微妙な天気にスレート・スカイ・ジャケットが最適だなと感じました。
特に日帰り登山で降雨後のシチュエーションでは、フロントフラップが通気性の確保に活躍し、蒸れを防いでくれるでしょう。軽く柔らかでありつつ丈夫な素材であるので、雨あがりの藪こぎや岩場などでの使用にもしっかり対応。しなやかな着心地なので、雨が降っていない時でもウィンドシェルとして使うのもおすすめ。
なお、汚れがたまることで撥水性が低下するため、天気の予測が難しく長期間にわたって使用する縦走には不向きと言えます。
パタゴニアのレインウェアといえば……
ところで、パタゴニアのレインウェアといえば「トレントシェル」を思い浮かべる方も多いもの。最後に「スレート・スカイ・ジャケット」と「トレントシェル」の違いを簡単にまとめてみました。
スレート・スカイ・ジャケット | トレントシェル 3L | |
---|---|---|
シルエット | ![]() | ![]() |
重さ | 275g | 345g |
特徴 | 軽量コンパクト | ベンチレーションあり |
おすすめ シーン | ・春〜秋の日帰り登山 ・ボルダリング ・岩場など | ・厳冬期以外の季節 ・日帰り〜宿泊を伴う山行 |
【デザイン】ウェストラインが細めのスッキリとしたミニマルデザイン。
【デザイン】腰幅が広めで中に重ね着しやすいゆったりとしたデザイン。
スレート・スカイ・ジャケットは、よりしなやかで動きやすく軽量なレインウェアを求めている方向けのジャケット。すでに雨の中での長期縦走などで使用するレインウェアを持っていて、それよりも軽量なタイプを求めている方にぴったりです。
細身のシルエットとマットな色合いで、街コーデにも違和感なくマッチ。ただし、インナーに厚めのミッドレイヤーを着る場合は、ワンサイズアップしてもいいかもしれません。
「スレート・スカイ・ジャケット」があれば急な雨も安心
ミニマルなデザインで、日常にもなじむ「スレート・スカイ・ジャケット」。軽くてやわらかな着心地が最高です。
多少の手間がかかっても、自分たちが遊ぶフィールドの環境を守るアイテムを選びたいもの。それに、お手入れをする機会が多いアイテムって愛着がよりわく気がしませんか。扱い方を工夫したり、メンテナンスをすることで心配な部分をカバーするなど、使い方はあなた次第。
環境に配慮したパタゴニアのレインウェアで、雨の心配をせずに山を楽しみましょう!
メンズ | レディース | |
![]() | ![]() | |
価格 | 26,400円(税込) | 26,400円(税込) |
重さ | 295g | 275g |
カラー | Cloudberry Orange Smolder Blue Basin Green | Sedge Green Dusky Brown Smolder Blue |
素材 | 【H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル】 3層構造の平織りの3.2オンス・30デニール・ネットプラス・ポストコンシューマーリサイクル・ナイロン100% | 【H2Noパフォーマンス・スタンダード・シェル】 3層構造の平織りの3.2オンス・30デニール・ネットプラス・ポストコンシューマーリサイクル・ナイロン100% |
サイズ | XS、S、M、L、 XL | XS、S、M、L |
メンズ・スレート・スカイ・ジャケット | ウィメンズ・スレート・スカイ・ジャケット |