冬のミッドレイヤーに求められるのは“温かさ”だけじゃない!
ベースレイヤーとアウターレイヤーの間に着るミッドレイヤー(中間着)。冬の登山では「とにかく温かいやつを」と、保温性の高さを重視する方も多いのではないでしょうか。
でも、忘れてはいけないのが汗を処理する機能です。
冬山登山では雪上歩行やラッセル(※1)など、運動量の大きな行動を伴います。そのため、ミッドレイヤーを保温性の高さだけで選ぶと、汗だくになってオーバーヒートしてしまう可能性も。
そこで求められるのが、寒さから身を守る「保温性」と汗を処理する「吸汗拡散・速乾性」を両立した機能。これらを高次元で実現した画期的なミッドレイヤーが登場しました。
<ファイントラック>から登場!冬季用ミッドレイヤー「ドラウトソル」
それがこちらの「ドラウトソル」。ドライを追求した独自のレイヤリングシステムで定評のある<ファイントラック>から、2021年秋冬にリリースされた冬季用ミッドレイヤーです。
「立毛」技術と独自構造による圧倒的な吸汗拡散・速乾性
シンプルな見た目のドラウトソル。至ってふつうのミッドレイヤーのようにみえますが、この生地に大きな特徴が隠されています。
生地には<ファイントラック>が独自に開発した、吸水速乾効果を高める3層の「ドラウト構造」を採用。
肌面に接する凸凹した「吸汗層」は汗を吸いやすく、毛細管現象を利用した「導水層」が汗を吸い上げ外面へと移行。「蒸散層」が生地表面で汗を拡散させ、素早い乾燥を促す仕組みとなっています。
肌面の「立毛」技術が吸汗を促進
裏地の「吸汗層」には、グリッド状のかさ高を持たせた生地を採用。このかさ高さを生み出す加工には、一般的なフリースで使われている[起毛]とは異なり、「立毛」という技術が採用されています。
「立毛」とは、繊維が一本一本独立して立った状態のこと。[起毛]のフリースは、毛羽立たせた繊維を絡まった状態でかさ高を出しているため、繊維内の水分が抜けにくく、乾きにくいという欠点がありました。
<ファイントラック>はそんな[起毛]の弱点に着目。繊維を「立毛」させることで水分の抜けが向上し、従来を上回る吸汗性を実現。さらには着用時や洗濯時の繊維の脱落なども著しく軽減することを可能にしました。
ミッドレイヤーなのに速乾性はベースレイヤー級!
その速乾性の高さは、同社の春夏用ベースレイヤー「ドラウトフォース」とほぼ同等のレベル。ミッドレイヤーでありながらも、ベースレイヤー級の汗処理機能を持ち合わせています。
また「ドラウト構造」を採用したミッドレイヤーのなかでも、最も保温性が高いのも特徴。まさに冬山に対応する「保温性」と「吸汗拡散・速乾性」を両立した、新進気鋭の行動保温着といえそうです。
とはいえ、実際の使用感は山で使ってみないとわからないところ。今回はドラウトソルを着用して、11月初旬の南アルプス甲斐駒ヶ岳を歩いてきました。
冬山に求められる機能が凝縮されたミッドレイヤー
ドラウトソルを使ってみて感じたのは、とにかく汗の心配をせずに行動できるということ。それでいて、冬季の山に対応する保温性と冬山でも使いやすいディテールを合わせ持っていました。
それぞれの機能自体はシンプルですが、それらがムダなく役割を果たし、高いパフォーマンスが発揮されていると感じました。詳しくみていきましょう。
汗をかいたはずなのに、湿っていない!
まずはドラウトソルの持ち味でもある吸水速乾性をチェック。検証当日はほぼ無風の快晴で、3,000m級の山でも気温は4度前後でした。
登りでは汗ばむことも多く、「これはさすがにウエアも湿ってそうだな」と思っていましたが、ウエアを脱いでみて驚き! 背中はしっかり汗をかいていたはずなのに、手で触ってもほとんど濡れている様子がありませんでした。
その速乾スピードを確かめるべく、裏地に注水をして検証。最初はしっかり水跡が残っていた生地も、みるみるウチに表地へと拡散され蒸発。ものの15分ほどで水の跡もほとんど消え、触っても湿り気を感じることはありませんでした。
これはベースレイヤー級の速乾性も頷ける実力です。

見た目以上にホカホカ!冬の行動でも文句なしの温かさ
「グリッド構造なので温かさはそこまでかな?」と思っていたのですが、保温性も十分な実力。中綿入りのミッドレイヤー(アクティブインサレーション)には劣るものの、冬季の樹林帯での行動を想定すると、最も適した保温力だと感じました。

フリースのようなふんわり感はあまりないので、この辺りは好みが分かれるかもしれません。

ベンチレーションが備わっているのもポイント。<ファイントラック>の醍醐味でもあるベンチレーションシステム『リンクベント』を搭載し、ミッドレイヤーの上に着用する同社の「ミッドシェル」「アウターシェル」と連動した通気が可能です。

冬山ではミッドレイヤーをスタートからゴールまで着ているのがほとんどなので、温度調節ができるベンチレーション機能は嬉しいですね!
行動中の扱いやすさが考えられた設計
冬季用ミッドレイヤーとなると、重厚で分厚いイメージがあるのも否めないところ。しかし、ドラウトソルは軽やかでストレスのない着心地も魅力です。

フロントファスナーにも<ファイントラック>らしいこだわりが。
ファスナーには本体生地とファスナー地とを重ねることなく、生地同士の突合せで縫製する「TPS縫製(FTPS縫製)」を採用。縫い代がなく縫製面がフラットになるため、軽量化と動きやすさの両立が可能です。
重量は410g(メンズMサイズ)で、冬季用ミッドレイヤーとしてはかなりの軽さ。行動着としては冬・厳冬期の使用がおすすめですが、春・夏の保温着としても充分に活躍できそうです。
細部にも冬山の行動を支える工夫が
襟元には本体とは異なる肌触りの良い薄手の生地が当てられています。こちらの吸汗速乾性も高く、首回りの汗の不快感もなく快適でした。
袖の手口と裏部分にはストレッチ性と撥水性を備えるラピッドラッシュ生地を採用。雪などで濡れやすい部分なので、こういったところが撥水加工されている細かな配慮も嬉しいですね。
また袖口のラピッドラッシュ生地はソフトできゅう屈感がなく、腕まくりや時計が見やすいのがとても良いなと思いました。
必要最低限。だけど扱いやすいポケット
ドラウトソルのポケットは右胸ポケットと左右のハンドポケットの3箇所。ムダのないミニマルな設計になっています。

左右のハンドポケットは大きめな作りで、内部は軽量性が考えられたメッシュ生地に。衣類内の熱を利用して、ハンドウォーマー代わりにもなりそうです。
使ってみて気になったところは?
気になったところは特にありませんが、あくまでもミッドレイヤーなので防風性はあまりありません。保温性の高さは言わずもがなですが、風が強い場所では積極的にアウターレイヤーを着用するようにしましょう。

風は防風性が高いアウターシェルに任せることで、より快適な行動着として機能しそうです。
汗を気にせずガンガン動ける、冬の頼もしい相棒!
冬山での「汗」は、低体温症の要因ともなりうる大敵。驚異的な吸汗拡散・速乾性と冬山に対応する保温性を合わせ持ったドラウトソルは、そんな「汗」や「濡れ」を気にせず、冬〜厳冬期登山でガンガン使っていけるミッドレイヤーだと感じました。
冬山登山だけでなく、バックカントリースキーにも。ドライで快適に、そしてアクティブに楽しみたい!そんな方におすすめの逸品です。