日本の山に適応したテント「カミナドーム」
穏やかな天気の下、雄大な自然を眺めながらのテント泊。登山者であれば、誰もがそんな光景を望むことでしょう。
しかし、山の天候は人の思い通りにはなりません。雨風から身を守る空間でもある「山岳用テント」は、過酷な山の環境に対応する機能が求められます。
「遊び手=創り手」のファイントラックが提供する山岳用テント「カミナドーム」は、軽量性と耐久性を備えた自立式のダブルウォールタイプのテント。
ハードに山を楽しむ登山者にも多く愛用されている、正統派テントの代表格です。
今回は、実際に標高2,400mのテント場で「カミナドーム2(※1)」を使ってみながら、その実力についてご紹介していきたいと思います。
独自の技術が可能にした「持ち運びやすさ」
まずはカミナドームの携行性について。
カミナドーム2の重量は1,310g(ガイライン・収納袋・ペグを含む総重量は1,460g)。ダブルウォールでオールシーズン対応の山岳テントとして最高水準の軽量性を誇ります。
その軽さの秘密は、カミナドームに使用されている素材にあります。
インナーテントとフライシートには超極薄のナイロン生地を採用。これに「イザナス(旧名:ダイニーマ)(※2)テープ」を力のかかる辺に縫い込むことで高い強度を実現。
さらに引き裂き防止用の補強糸を組み合わせることで、山岳環境に対応する耐久性と軽量性の両立に成功しました。
「弁当箱型スタッフバッグ」がデッドスペースを埋める
ファイントラックでは、テントのスタッフバッグに弁当箱型の形状を採用しています。
このスタッフバッグが地味にすごい!詰め込みたいスペースにピタッとハマり、ザック内の隙間を無駄なく埋めてくれるような印象。
とても優秀なので、ファイントラックにはいろんなギアでこの収納袋を採用してもらいたいです(笑)。
この形状は収納時も便利。口が四角になっているので、ガサッと折り畳んでも詰め込んでもあまりストレスがかからず入ります。雨のときの撤収など、急いでいる際にはありがたい機能ですね。
夏山の1泊2日のテント山行であれば、40ℓザックで充分に対応できそうなサイズです。
設営にはやや慣れが必要だが、安心の耐久性を実現
それではテントを設営していきたいと思います。
耐久性を重視した設営構造
インナーテントには耐風性の高い「スリーブ式構造」を採用。2本のポールを組み立て、交差するスリーブの中へポールを通します。
ポールは、世界的なアルミポールメーカー「DAC」製。軽量でありながらも高い強度を誇ります。
通したポールを四隅のグロメットに差し込みます。
山岳テントによっては片側が袋状になっているモデルもありますが、カミナドームは全てグロメット固定。設営の手間はかかりますが、その分、テントの耐久性を高めています。
ここで、グロメットへの差し抜きがしにくい点が少し気になりました。どうやら上からまっすぐ出し入れする必要があるようです。
インナーテントが完成しました。続いてフライシートを被せていきます。
インナーテントとフライシートの位置を合わせ、グロメットを差し込んで連結させます。連結後はフライシートに付属しているアジャスターを下方向へ向かって引っ張ることで張りが調整できます。
テントの生地は気温や湿度によって伸び率が変わるので、こういった調整機能がありがたいですね。
最初はちょっと手こずるかも?慣れれば素早い設営が可能
ペグダウンをして完成です!設営にかかった時間はおおよそ5分ほど。設営に難しいポイントはなく力もあまり必要としないので、女性のソロ山行でも問題なく立てられると感じました。
ただし、グロメットへの差し込み・取り外し方などにコツが必要なので、山で使う前に平地で設営練習をおすすめします。
開放感のある広々とした使い心地の良い空間
完成したカミナドームの室内へ入り、テントの過ごしやすさをチェックしてみました。
各モデルのサイズは下図のとおり。
使いやすくも無駄のないシンプル設計
フライシートの入口には耐久性の高い「ビスロンファスナー」を採用。砂や泥にまみれた場合や凍結するような低温下でもスムーズに操作ができます。
またダブルファスナーになっているので、外の様子をみる時や荒天時の出入りに便利。
テント内へ入ってみました。フライシートが濃い色だったので薄暗いかとイメージしていましたが、室内は想像以上に明るく開放的な印象です。
天井が広々としているためか、全体がスペック以上に広く感じます。これはポールの構造によるもの。
カミナドームは、天頂部と底部とで剛性の異なる素材を使用することで、球体に近いゆるやかなカーブを描く形状になっています。
出入口は上半部のみメッシュの開閉が可能。
全体がメッシュ網になるわけではないので通気性が格段に良いとは言えませんが、開けた部分が地面に着かない長さなので、スッキリしていて気に入りました。
前室は長辺入口タイプのテントとしては平均的な大きさ。とは言っても荷物を置いたり、簡単な調理をするには十分な広さです。
奥行きがありすぎるとファスナーの開閉時に体を乗り出さなければならず、筆者としてはファスナーに手が届きやすいこれぐらいの距離感がベストです。
テント内には小物収納用のポケットがひとつ。大きめのスマートフォンが入る程度のちょうど良い大きさです。
2人用モデルでソロ山行にピッタリなサイズ
室内は、広々とした天井がライトの明かりを拡散しているためか、夜でも圧迫感を感じません。
上部のループにはヘッドライトなどの吊り下げが可能。今回は使用していませんが、オプションの「ロフト」を使えば小物置きやヘッドライトの照明としても便利です。
次の日の朝、外はシトシトと雨が降っていました。
さっそく結露を確認すると、多少の濡れはありましたが、ほとんど気にならないレベルです。
ただし結露状況は気温差や天候によって変わってくるので、今回の検証だけでは「結露が多いor少ない」を判断するのは難しいでしょう。
今回、2人用モデルの「カミナドーム2」を単独で使ってみましたが、ソロで使うのにちょうど良い大きさだと感じました。「1」と「2」では重量差も180gしかないため、徹底した軽量性を重視する場合を除いては、2型を選ぶことを個人的にはオススメします。
豊富なオプションと修繕パーツ
今回試すことはできませんでしたが、カミナドームは豊富なオプションが魅力のテントです。
厳冬期ユーザーに嬉しいオプション
オプションで雪山用の「スノーフライ」と、室内の保温性が大幅に向上するウィンターライナー(内張り)を展開しています。
冬季対応テントで「内張り」があるモデルはとても貴重。筆者も一度、厳冬期のアルプスで内張りを使いましたが、段違いの暖かさだったのを覚えています。
厳冬期登山ユーザーにとってはかなり嬉しいポイントですね!
ポールや収納袋が破損しても安心
国産メーカーならではのアフターサービスもメリットです。
ポールのパーツや専用の収納袋はオンラインショップで別売り販売。破損した場合も、必要な部分だけをすぐに購入できるので安心。
また修理サポートが充実しているのもポイント。大きな破損は国内工場で補修してくれます。
過酷な環境であるほど力を発揮するスタンダードテント
総評として、カミナドームは「信頼のおける正統派山岳テント」だと感じました。慣れるまでに設営の手間は感じるものの、それを補う高い耐久性と軽量性は過酷な山岳環境での安心につながります。
数日に及ぶアルプス縦走、そして厳冬期登山など、ハードであればあるほど力を発揮するテントと言えるのではないでしょうか。
これから「テント泊に挑戦しよう」と考えている方にとっても、長期的にみてオススメできるテントです!
「山と向き合える」テント泊の魅力
今回の検証は、筆者にとっても数ヶ月ぶりのテント山行。
ゆっくり流れていく時間、大自然が奏でる音、移り変わる空の色・・・。
「やっぱりテント泊は楽しい!」
それを改めて実感した山行でもありました。
今年の山行計画に悩んでいる方は、是非テント泊に挑戦してみてはいかがでしょうか。
きっと心が揺さぶられるような体験が待っていますよ。そして、カミナドームは山行の頼もしい相棒になるはずです!
カミナドームのモデル一覧
ファイントラック カミナドーム1
素材:インナー&フライ:ナイロン100%(PUコーティング)、ポール:ジュラルミン
原産国:日本
ファイントラック カミナドーム2
素材:インナー&フライ:ナイロン100%(PUコーティング)、ポール:ジュラルミン
原産国:日本
ファイントラック カミナドーム4
素材:インナー&フライ:ナイロン100%(PUコーティング)、ポール:ジュラルミン
原産国:日本