南アルプスの人気エリアで甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳の間、北沢峠にある「こもれび山荘」。
山奥にありながらバス停の目の前という絶好の立地で登山客以外も遊びに来るほどの山小屋ですが、実は今年4月25日の営業開始までさまざまな困難があったのをご存知でしょうか。
遡ること2019年、最初に起きたトラブルが全国に甚大な被害をもたらした台風19号の被害。南アルプスの林道が分断され、山梨県側からのアクセスは数年は無理という絶望的な状況となりました。
そこにたたみかけるようにやってきたのが2020年、新型コロナウイルス感染拡大防止対策による休業です。まさに「泣きっ面に蜂」ともいえる状況。
山小屋の運営自体、厳しい状態が続きますが、ついに今年4月25日から山小屋の営業が再開されました。
再開に至るまで、どんな苦労があったのでしょうか。
2009年ごろからこもれび山荘の主人を務める竹元直亮さんに、これまでのお話とコロナ禍の小屋の利用についてお話を伺いました。
台風被害と新型コロナウイルス、被害状況は?
ーー台風19号と新型コロナウイルス、とても大変だったかと思いますが、山小屋の被害はどんなものでしたか?
2019年はある程度シーズンの後半だったんですけど、10月の紅葉のお客さんはみんな来れなくなってしまいましたね。
その影響もあって食料だけでも1000人分くらいは廃棄することになりました。
ーー1000人!かなりの人数分ですね……。
しかも、次の年の分も見越して食料を用意していたんですけど、食料庫に水が入ってしまいそちらもダメになってしまいました。
それだけでも結構きついんですが、翌年、コロナで休業が決まった時はさすがにグッと来るものがありましたね。
常連のお客さんからは「すごく残念です」とか「再開したら必ず行くんで」とか、たくさんお客さんからの反響があって嬉しかったんですが、2020年に入ってからは世の中的にも、登山者の間でも、みんなコロナの話題一色。
台風の被害を次第に忘れ去れてるんじゃないかという感じはあって……それが心情的にも苦しかったですね。
休業が決まってからの変化は?
ーー休業が決まってまる一年以上、かなりの時間があったかと思いますが、その間何をされていましたか?
小屋の修繕とか、再開に向けた食料の調達なんかはずっと大変ですが、実はそのなかで新しいことも始めています。
ーーどんなことでしょう?
山小屋って、動けないんですよね。お客さんに会いにいけない。来てもらうしかないんですよね。
でも、今回みたいに閉ざされてしまった時に、どうやってこもれび山荘として皆さんに動いてもらったり来てもらえるかをずっと考えていました。
その中で考えたのがオリジナルグッズの通販です。
山小屋のグッズって、そこで過ごした思い出に浸るような、お土産みたいな感じで通販しているところがいくつかあると思うんですが、私がやろうとしているのはその逆。
こもれび山荘を知ったり来てもらうためのきっかけとしての通販をやろうと思っているんです。
ーーほぉ〜!どんなものを売ろうと思ってるんですか?
まだ山小屋に来たことがない人がそのグッズに触れることによって、「こもれび山荘ってきっとこんな感じのところなんだろうな」と思ってもらえるようなものです。こもれび山荘らしさというか、こもれび山荘を作っているもの、構成している要素をのせていくようなイメージですね。
だから、登山に関係するものじゃなくてもいいんです。デイリーユースでいつも使えるようなもの。
今は測量野帳とか色んなものを作ろうと思ってるんですけど、いろいろ細々やりすぎて結局まだ準備ができてないという(笑)
去年は小屋の修繕業務と一緒に、こういったグッズの制作もしていましたね。
あとは業者に頼んで作るのもいいですけど、手作りのものも山小屋っぽくていいかなと思っていて、いろいろ準備をしているところです。
ーーこもれび山荘らしさを感じるグッズって、とても素敵な響きですが、最終的にどんなイメージになりそうかもう少し教えてください。
シンプルにいうと、ヴィレッジヴァンガード(以下、ヴィレヴァン)ですよ!
ヴィレヴァンって、色んなジャンルのものがごちゃごちゃ店内に置いてあると思うんですけど、まとめて見れば不思議と「ヴィレヴァンらしい」ってなりませんか?
山荘もそんな感じで、色んなものをたくさん用意しようと思ってます。
ーーたしかに、ヴィレヴァン独特の雰囲気というか、世界観がありますよね。めちゃめちゃわかります!!
なので、こもれび山荘もたくさんグッズを用意しようと思ってるんですが、先ほど言ったように先立つものがまだないという(苦笑)
もうすこしで準備できそうなんだけどな・・・。
あとは、こもれび山荘らしさを表すものとして、色んな本をセレクトして置いてあるんですが、これらの本の販売もやってみたい。
“標高の高い本屋さん”として、毎月数冊セレクトしておこうと思ってます。お楽しみに。