新たなGORE-TEX PROテクノロジーの特性を活かした新アイテムが誕生
2020年秋、THE NORTH FACEが新たなハードシェルをリリース。
それが、GORE-TEXの新たな防水透湿性素材を使用した「ハイブリッド ライエル(HYBRID LYELL) ジャケット/パンツ」です。
THE NORTH FACEといえば、2019年秋に自社開発の防水透湿性素材、フューチャーライト(FUTURE LIGHT)を採用したハードシェルをリリースしたばかり。「GORE-TEXへの原点回帰か?」という印象を抱きがちですが、真相はさにあらず。
フューチャーライトは、ミドルレイヤーやシューズなど使用アイテムを広げつつ、ハードシェルに於いてはGORE-TEXの新しい防水透湿性素材「GORE-TEX PRO テクノロジー」を活かし、更なるラインナップの充実を目指したのです。
新たな「GORE-TEX PRO テクノロジー」には、3種類のそれぞれ特性が異なるファブリックスがラインナップ。部分に合わせて組み合わせて使用することもでき、いずれも極限の環境下で、最大限のパフォーマンスが発揮できるよう開発されています。
▼GORE-TEX PRO テクノロジーの詳細についてはコチラを確認
しかし、「従来のGORE-TEX テクノロジーと比較して、どこがどう違うの…?」という本音も漏れてしまいがち。店頭での外見やカタログ上のスペックだけで判断するのは難しいですよね。
そこで今回は、その違いについて徹底検証!
・GORE-TEX PRO テクノロジーの特性を活かして開発した、「ハイブリッド ライエル ジャケット/パンツ」
・従来のGORE-TEX テクノロジーを使用した、「All Mountainジャケット/パンツ」
この2点を実際に雪山でのフィールドテストをしながら、魅力・特徴について紹介していきます。
雪山登山で実感!「ハイブリッド ライエル」の新感覚の着心地
ハードシェルの機能がもっとも発揮されるシチュエーションが雪山登山。そこで今回は、雪の積もる群馬県・上州武尊山で検証。川場スキー場からの往復ルート上には剣ヶ峰山をはじめ複数のピークが存在する山です。
天候は時おり晴れ間から日が差し込む高曇り。気温は氷点下8℃〜氷点下2℃程度で風もほとんどなく、雪山登山としては比較的暖かいコンディションでした。
「All Mountain」で登山〜腰付近に若干のストレスが発生〜
まずは、従来のGORE-TEX テクノロジーを使用した「All Mountain」を着用して登山。このウェアは以前も筆者が別のフィールドテストで着用したものであり、おなじみの着心地です。
All Mountainも十分なスペックを持ったウェアであり、登山は快適に進行。唯一気になったのは、特に上半身が前傾しがちな急登で、ロープやアバランチギアなどで重くなったザックの底部と腰が干渉することにより起こる、以下の事象です。
・パンツがずり落ちそうになる
・ジャケットがめくれ上がりそうになる
これは「All Mountain」に限らず従来のハードシェルであれば起こり得るものであり、ザックが軽量な場合や急登での姿勢次第では発生しません。
とは言え身体の動きが激しいシチュエーションでは、若干のストレスを感じました。
ではいよいよ、この着用感をベースにハイブリッドライエルジャケット&パンツを試してみます。
ハイブリッド ライエルシリーズに衣替え!着用時から実感する使いやすさ
山頂で「All Mountain」を脱ぎ、「ハイブリッド ライエル」に着替えます。この着用時から、使いやすさを実感。まずはパンツから。
All Mountainパンツは太もも上部までしか開きませんが、ハイブリッド ライエルパンツは両サイドにあるジッパーが全て開くため、登山靴だけでなくアイゼンを装着したままでも着用することができます。
サイドが全部開くハイブリッド ライエルパンツですが、両サイドのジッパーを閉めると、上部(ウェスト)はマジックテープで調節しながら固定可能。下部(足元)はボタンで固定できるため、動いている間に開いてしまう…なんてことも心配もなさそうです。
また、足元にも違いが。All Mountain」パンツは足元が一重構造なので別途ゲイターが必要ですが、ハイブリッド ライエルパンツの足元は二重構造になっているため、内側をゲイターとして使用可能。とかく必要アイテムが増えがちな雪山登山において、嬉しい機能ですね。
さらにハイブリッド ライエルパンツには取り外し可能なサスペンダーも。All Mountainパンツにはサスペンダーは付いていません。
このサスペンダーにより、激しい動きでもパンツがずり落ちそうになることなく、より体にフィットしてくれます。
続いてジャケット。
ハイブリッド ライエルジャケットは、足元と同様、腰周りも二重構造に。
All Mountainジャケット着用時に感じた、”ザック底部との干渉でジャケットがめくれ上がる事象”だけでなく、地吹雪のような状況でもジャケット内部への雪の侵入を防いでくれます。
「ハイブリッド ライエル」で登山〜しなやかでストレッチ性に富んだ着心地〜
さあ、「ハイブリッド ライエル」を着用して登山を再開しましょう。
ここで実感したのが、圧倒的な“しなやかさ”。今回比較検証したAll Mountainに限らず、従来のハードシェルはそれなりの厚みと固さがあるため、肘や膝を動かした時に“ゴワつき”や“ガサつき”を感じるのが当然でした。
しかし「ハイブリッド ライエル」では、その感触はほぼゼロ。着心地は従来のソフトシェルに近いと表現しても過言ではありません。
急斜面での登降では、膝を深く屈伸させてのアイゼンワークが必要です。従来のハードシェルでは、パンツの太もも部分の内側や後側の生地が、“伸びきって突っ張る”感覚がありましたが、ストレッチ性に富んだハイブリッド ライエルパンツでは、そのストレスを感じることがありませんでした。
この感覚の差はジャケットでも同様。
急斜面の登降ではピッケルのピック部分を斜面に刺しての行動が必要になり、肘を深く曲げ伸ばしする動作も必要になります。ここでも、ハイブリッド ライエルのしなやかでストレッチ性に富んだ着心地は、ストレスのない上半身の動きに貢献。
アイスクライミングのように上半身の動きがさらに激しいシチェーションでも、その持ち味を発揮してくれるでしょう。
また、動きやすさだけでなく耐寒性・快適性においても、その実力を感じました。
今回ハイブリッド ライエルを着用しての登山は、午後の時間帯。陽が傾き始め雲も多くなった天候でしたが、寒さを感じることはありませんでした。
取材終盤は、リフトの運行終了時間が迫り少し急ぎ足になってしまいましたが…、比較的激しい行動にもしっかり追従。ジャケットの二重構造・パンツのサスペンダーのおかげで、All Mountainで感じた腰付近のストレスもなく、無事にフィールドテストを終了することができたのです。
他にもある嬉しい工夫!「ハイブリッド ライエル」シリーズの使いやすさ
雪山フィールドテストではおもに”着用時”に感じた使いやすさをご紹介しましたが、それ以外にも「ハイブリッド ライエル」には快適かつアクティブな登山のための嬉しい工夫がたくさん!
頭から足元まで、順番に見ていきましょう。