「てんきとくらす」は当たる?当たらない? 担当者を突撃したらもっと根本的な発見があった!

2021/01/13 更新

登山者にお馴染みの天気予報サイトいえば『てんきとくらす』。SNSを見ていると、A~Cの判定に一喜一憂している登山者が多いよう。「てんくら当たった!」という人がいる一方で、「てんくら外れた…」という声も一部。実際のところどうなのか、担当者を直撃してみました。すると、知っているようで知らなかった『てんきとくらす』のあれこれが明らかに!


アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

「てんきとくらす」は当たる?当たらない?

登山に行く時の判断として最も気になるのが「天気」ではないでしょうか?

天気予報のサイトは数多くありますが、特に登山者にとって役に立つサイトと聞いて多くの方から名前が挙がるのが通称“てんくら”こと「てんきとくらす」。

気象に関する知識がなくても、登山に適しているかを示す登山指数を「A」〜「C」で出してくれるので、ひと目で登山時の天候をイメージすることができます。

提供:てんきとくらす
登山シーズンになるとSNS上でも「明日はてんくらがAだー♪」や「てんくらがC、行くか悩む・・・」といった投稿がちらほら。多くの人から支持されていることがわかります。

そんな「てんきとくらす」ですが、ごく一部のSNSなどでは「あまり当たらない!」「てんくらより他のサイトの方が当たる」などネガティブな声も……。

実際のところ、「てんきとくらす」ってどのくらいあてにしていいのでしょうか?

気になる疑問をズバリ担当者に直接聞いてみました!

「てんくら、はずれた」って声をたまに見るんですが……

てんきとくらすの登山指数
撮影:YAMA HACK編集部
とっても聞きづらい、そしてたいへん失礼な今回の企画。ですが、快く取材を受けてくださったのは「てんきとくらす」の登山情報を担当している日本気象株式会社の伊藤美紀さん。ご本人も気象予報士であり、たまに登山をしているとのこと。

ライター
青柳
てんきとくらすの登山指数、A~Cとシンプルなのでいつも重宝しています!

私も毎回チェックしているのですが、一方でSNSでは「てんくら、はずれた」って声をたまに見かけます。

このような声に対して率直にどのように考えていますか?
日本気象
伊藤さん
皆様のそのような声やご意見については、真摯に受け止めて予報精度の向上に向き合っていきたいと考えています

否定されると思っていたら、めちゃくちゃ丁寧に謝られてしまった……。
日本気象
伊藤さん
ただ、一つだけ気になっていることがありまして……「てんきとくらす」の出している登山指数がどのようなものか?についてはもしかすると誤解されている可能性があります。一度ここでご説明させていただいてもよろしいでしょうか。
ライター
青柳
誤解というと、どういうことでしょうか?

登山指数、正しく理解してますか?

日本気象
伊藤さん
てんきとくらすが出しているのは「登山指数が示す時間帯の山頂の天気」となります。

たとえば、登山口やルート上が雨で、山頂は雲の上で晴れと予想される場合、登山指数はAとなるんですよ。
ライター
青柳
アルプスなどの標高が高いエリアではありがちな天気ですね。

山頂は晴れているのに登山口に着いたときにどんよりしていて「Aだったのにー!」みたいなシチュエーションは想像できます。


出典:PIXTA/登山では麓がどんより曇り空でも、山頂付近は快晴ということも珍しくない
日本気象
伊藤さん
そうなのです!

その場合、登山指数は当たっているわけなのですが、山頂までの距離が長い山もありますし、その道のりの中ではずれたと思う方はいらっしゃるかもしれません。
ライター
青柳
たしかに・・・。
日本気象
伊藤さん
それともう一つ、週間天気の登山指数もだしていますが、これは朝9時時点の天気を出しているんです。

サイトでも掲載していますが、たとえば9時が晴れであれば、10時に雨が降ると予想されても「A」になるので注意してほしいなと思っています。
ライター
青柳
えーー!てっきりその日1日の天気を総合的に評価してAとかBにしていると思っていました……。
日本気象
伊藤さん
はい、実はそうなんです。ですが、私たちとしてもこういったわかりづらいところもあるのは把握しており、改善する予定で進めております。
ライター
青柳
おお、改善予定なのですね!ありがたいです。

ちなみに、風か雨が強い場合はB、Cとなっていますが、この差は具体的にどういうことでしょう?

BよりもCのほうが雨が降る確率が高いという理解でよいのでしょうか?
日本気象
伊藤さん
いえ、実はこれも違います!

BとCの違いは雨が降る確率ではなく、雨や風の強さの度合いによる差です。

弊社で設定した基準値以上の雨が降ると予想されればBかCのどちらかになるので、確実に雨が降るのがC、降る確率が少し低いものがBといったものではないんですよ。
ライター
青柳
そうなんですか!

なんとなく「Bならもしかしたら晴れるかも? Cなら確実に雨だろう……」という理解だったんですが違うんですね!

ちなみに、雷とかが予想される場合もCになるのでしょうか?
日本気象
伊藤さん
登山指数は降水量、風速、雲量などを総合的に考慮して判定されます。

ただ、それには局所的な発雷の可能性などは指数に入れていないのでご注意ください
ライター
青柳
なんと!それは意外です!

夏場のアルプスは特に雷なども多いのですが、てっきり入っているものだと思っていました。
日本気象
伊藤さん
実は今私が言ったことってすべて登山指数の説明の所に記載されているんですよ。

でも、まだまだ浸透されていないのが現状かと思います……。だからこそ、私たちもわかりやすく伝えていく必要があるなと思っています!
ライター
青柳
たしかに……よく見たらちゃんと書いてありますね。

なんとなく理解していた自分に反省……。

実際、登山指数は当たってるの・・・?

ライター
青柳
登山指数が示す時間や場所で、勘違いしていそうな人がいるのはなんとなくイメージできました。

でも、実際登山指数Aで山頂が晴れている、Cで風や雨が強い・・・とでている場合、その予想って当たっているんでしょうか?

他社サイトと比較して的中率ってどうなんでしょう?
日本気象
伊藤さん
それに関しては、正直申し上げると調査ができていないため実際のところは「わからない」というのが答えになりますね……。
ライター
青柳
といいますと?
日本気象
伊藤さん
「実際に登山指数の通りだったか?」というのは、その時間帯に山頂の天気を観測する必要がありますよね。つまり指数を出している時間帯に山頂に測定器を置いて観測する必要があるんです。

でも、山頂にそんな測定機を置くのはとても難しい……。
なので、全国の山の天気については弊社として的中率を出すことができず、比較すること自体が難しいんですよ。
ライター
青柳
たしかに、そういった機器を山頂で見たことないです。
複数の予報サイトを客観的に検証するのは難しそうですね。

では、てんきとくらすではどういった方法で登山指数を出しているのでしょうか?

他の気象会社の予報と結構違いが出るものなのでしょうか?
日本気象
伊藤さん
他社のことはわかりませんが、てんきとくらすは気象庁が公開しているデータをもとに、当社独自の数値計算によって登山指数を出しています。
ライター
青柳
天気図と睨めっこしながら人が出しているわけではないんですか?
日本気象
伊藤さん
数値計算に加えてそこまでできれば1番いいのかもしれませんが、実は数値計算による予報精度も機械学習によって常に向上しているんですよ。


日本気象さんから、特別に天気の予測をするときに使うデータを見せていただきました。

提供:日本気象株式会社/日本中の地点の気温や風向、風速などをすべてデータ化し、ピンポイントで山頂の天気を予測
ライター
青柳
たしかに、数日前から天気図をみて予想する登山者よりも数百倍精度が高そう。

当てづらい時期はある

ライター
青柳
これだけ細かな予報をされていても、実際には予報がしにくい時期はあるんでしょうか?




日本気象
伊藤さん
そうですね……ズバリ、あります!

梅雨など前線がある時と台風の時期がまさにそうですね。ほんのわずかな前線の位置の違いでまったく天気が違ってきますね。

ライター
青柳
梅雨や台風の時期って登山シーズンとも重複する部分がありますね。

この辺りはちょっと慎重になったほうがいいのかもしれませんね。

「てんきとくらす」で登山に行くべきか判断してOK?

ライター
青柳
細かなデータをもとに山頂天気の予測をしているのにはびっくりしました。

これなら「てんきとくらす」だけを見て登山に行くか判断しても良さそうですけど、どうでしょう?
日本気象
伊藤さん
それに関しては明確に「てんきとくらす」だけで判断しないでいただきたいです。
ライター
青柳
ダメなんですか?
日本気象
伊藤さん
もちろん、「てんきとくらす」の精度が特別低いとは考えていません。登山指数はあくまで登山しやすいかどうかの目安。

そもそも天気予報自体、的中率100%ではありませんし、有料天気予報であっても絶対ではないんですよ。

登山指数+ルート上の天気、気象庁のデータ、さらに一緒に登山する人の体力、経験を見て判断していただくのがよいかと思います
ライター
青柳
たしかに……。でも、てんきとくらすの登山指数がA~Cでかなりわかりやすい一方、気象庁や他の予報サイトをみて判断するのが難しいんですよね。

そもそも麓の天気予報も多いですし。自分が気象予報士なわけでもないですし。
日本気象
伊藤さん
実はそんな人におすすめの情報があるんです。


ライター
青柳
!!!

登山前に必ず確認してほしい「天気概況」と「雨雲レーダー」

日本気象
伊藤さん
登山に行く前は天気図を見るのが一番良いのですが、まずは気象庁が出している都道府県ごとの「天気概況」をぜひ読んでいただきたいですね。
ライター
青柳
はじめて聞きましたが、どんなものなんですか?


天気概況文
出典:気象庁
日本気象
伊藤さん
こんな感じで、各都道府県別の天気についてどのような動きがあるのか文章で説明しているんです。

単純に登山指数「A」や、「晴れのち曇り」などの予報もわかりやすいんですが、こちらの天気概況を読むことでその後の天気の変化を知ることができるんですよ。
ライター
青柳
文章で説明されていれば、理解も早そうですね!
日本気象
伊藤さん
ちなみに、登山指数では発雷の予測は含まれてないですが、天気概況では雷を含む細かな天気の変化についてしっかり触れられています

県全域の情報なので、登山指数と組み合わせてリスク回避の観点からこちらも見ておくのがオススメですね。
ライター
青柳
北アルプスなんかは長野県、岐阜県、富山県を一通り見ておくと天気の移り変わりがイメージしやすそう!
日本気象
伊藤さん
それともう一つ!気象庁から「雨雲レーダー」の情報が公開されています。

雨雲がどうやって流れているのかがわかりますし、予測が非常に困難な急な天候の変化も見ることができます


ライター
青柳
登山に行くかどうかだけじゃなく、登山中の天候の急変でも判断の材料になりそうですね。
日本気象
伊藤さん
てんきとくらすでも雨雲レーダーの情報を公開しているので一緒に見ていただけるとうれしいです。

登山道情報まで知りたいなら?

ライター
青柳
ほかに見てほしい情報はありますか?
日本気象
伊藤さん
月300円弱で有料にはなってしまうのですが……弊社の運営している「お天気ナゲータ」に掲載している山ごとの10日間天気予報はぜひ見てほしいですね。

天気だけでなく、登山の楽しみである眺めの良さがわかる「見晴らし予報」や「山の星空指数」、てんきとくらすではわからない「発雷情報」まで公開しています。


提供:日本気象株式会社
ライター
青柳
お天気ナビゲータのほうには詳しい予報や発雷確率も載っているんですね。
日本気象
伊藤さん
はい!実は標高1,000m以上の山の天気は“気象業務法”という法律によって山の天気予報を一般に公開することが禁じられているんです。
ライター
青柳
え!そういえば、この山頂の天気は降水確率●%…みたいなのは見たことがないかも。

ということは……それが理由で「てんきとくらす」では予報ではなく「指数」を出しているんですか?
日本気象
伊藤さん
まさに!そうなんです!

ただ、有料会員などクローズドな場では予報をしてもOKなんです。
ライター
青柳
なんと!だからお天気ナビゲータでは詳しく掲載しているのか・・・。

「てんきとくらす」と「お天気ナビゲータ」の精度には差があるんですか?
日本気象
伊藤さん
ありません。どちらも同じ精度ではあるんですが、「お天気ナビゲータ」のほうがより細かく、多くの情報がわかるイメージですね。

「てんきとくらす」でカバーできていない、登山ルート上の天気や3時間ごとの週間天気予報なども掲載しています。

山に行くかどうかは、複数の情報から判断して!

ライター
青柳
伊藤さんからは登山者に「てんきとくらす」をどういう風に使ってほしいですか?
日本気象
伊藤さん
登山指数は常に改善を続けながら精度を高めています。
しかし先ほどもお伝えしたように登山指数で見られる情報は一部であり、あくまで目安。

登れるか登れないかの判断は登山者の体力や経験値、目的によって変わるものです。
ライター
青柳
今回のお話を聞いて、自分から気象庁などさまざまな情報を積極的に見に行く自覚が生まれたような気がします。

同時に、自分が登山指数に依存しすぎていたんだなと気づかされました
日本気象
伊藤さん
そうですね…だからこそ、複数の天気情報を確認してほしいと思っています。細かく情報を集めれば判断の精度が上がります。

たとえば「昼過ぎから天気が悪くなるから今日はコースを短縮しよう」といった判断もできますよね。

そういった判断の手助けができればいいなといつも思っています

大切なのは、依存する予報サイトを絞り込むことではない

「てんきとくらす、当たらないんじゃない??」という一部でささやかれていたウワサからスタートした今回の取材企画。

本末転倒かもしれませんが、話していくなかで気づいたのは「このサイトは当たる・当たらない」の二元論の話はあまり意味をなさないということ。

日進月歩で技術革新している今、どのような気象会社でもいい加減な予想はまずないですし、予報精度は十分高いレベルにあります。

大切なのは複数の気象サービスの精度の差を見ながら自分が依存する予報サイトを絞り込むのではなく、複数の気象情報を多角的に取得し、自分自身の情報(体力や経験)から適切に判断する癖をつけることではないでしょうか。

登山指数はとてもわかりやすい指標ですが、今回教えていただいた雨雲レーダーや気象概況、お天気ナビゲータも理解しやすいものばかり。次の山に行くときはぜひ使ってみてくださいね。

日本気象株式会社|てんきとくらす日本気象株式会社|登山ナビ
気象庁|天気概況気象庁|レーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻)


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青柳 喬

2020年1月までYAMA HACKの2代目編集長。福岡県育ちで九州の山から日本アルプスの縦走、雪山登山まで様々な山を登ってきました。特にアルプスの長期縦走が大好きです。読者目線で分かりやすい、ためになる記事制作を心がけています。

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