【集まった読者の声】コロナ以降の登山で読者が感じたこと<データ編>

2020/07/27 更新

新型コロナウイルスの感染拡大は登山にも大きな影響を与えました。YAMA HACKでは2020年5月21日に記事で登山者からのアンケートを募集。今回の<データ編><回答編>の2回にわけ、このコロナ禍のなかで、登山者が何を考えていたか?また解決できる問題はあるのか?今後どうやって登山を再開すればいいのか?について取り上げたいと思います。


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コロナ禍で世の中が一変した、2020年春

コロナウイルス
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WHOによって新型コロナウイルスの感染が確認されたのは、2020年1月14日。約半年間、目まぐるしく状況が変わり、目の前で何が起こっているのかを把握することすらままならないまま、過ぎていったと感じます。当たり前だと思っていた日常が、月並みな言い方ですがまさに「一変」しました。

変化は三密ではないと思われた「登山」にも

3月ごろの政府による「3つの密を避ける」呼びかけでは、アウトドアは三密ではないから大丈夫」という楽観ムードもあったかと思います。

風向きが大きく変わったのは、緊急事態宣言が拡大されたあとの山岳四団体による声明発表前後

医療リソースの不足が懸念され始め、また要救助者がコロナウイルス陽性だったことを契機としたカナダの国立公園閉鎖のニュースなども山岳関係者のSNSなどでシェアされました。日本でも遭難のニュースと併せて、要救助者の感染状況も報じられました。
4/16全国に「緊急事態宣言」が拡大
4/20山岳四団体による登山自粛に関する共同声明発表
5/7山岳医療救助機構による「基本知識(計画と準備編)」資料公開
5/1439県で「緊急事態宣言」解除
5/24山岳医療救助機構による「登山実践編」資料公開
5/25全国の「緊急事態宣言」解除
山岳四団体による山岳スポーツ再開に向けてのガイドライン発表
6/19外出自粛の段階的緩和により県をまたぐ移動自粛の解除
 

一方で「緊急事態宣言」が出された4月16 日以降には、山岳医療救助機構team KOICAJ(コンサーベーション・アライアンス・ジャパン)といった登山やアウトドアに関わる団体から、自主的に登山再開に向けたガイドラインが発表されました。これは外出自粛が解けたあと、どのように感染を避けてアウトドア活動を行うかを示したものです。

登山者も世間も、意見がわかれた混沌期

混沌期
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YAMA HACKが読者のみなさんにアンケートをお願いする記事を公開したのは、5月21日。緊急事態宣言は解除されそうだけど、県をまたぐ移動自粛の解除はまだ出されていない時期です。

GWは自粛したけど夏山登山シーズンは登れるのだろうか?という期待を持ちながらも、報道では「県外ナンバー」に対する嫌がらせなどが報じられていました。また街でもマスク着用や手指消毒の必要性が認識されながらも、店舗は品切れ状態。

「いったいどうするのが適切なのか?」について、いろいろな意見が出され、判断も分かれ、情報は更新され、混沌とした状態だったことは、まだ記憶に新しいと思います。

そういった状況はいただいたアンケートのコメントにも表れていました。


※集計期間:2020年5月21日〜6月13日、総回答数:507
※以下アンケート結果の引用は原文ママ

「緊急事態宣言解除後に登山をしますか」への回答は?

読者アンケートグラフ約7割のひとが「登山をする(予定がある)」と答えています。

登山再開の判断基準としては、感染者数/山小屋の営業状況/登山道などアクセス状況/自治体のアナウンスが主に挙げられていました。また日帰りや自宅近郊など期間や距離を縮めるなどの声もありました。

一方で「しない」と答えたひとは、コロナウイルスがなくなったわけではないという感染リスクを考えての声が多くありました。

以下「ポストコロナ(緊急事態宣言解除後)の登山において、疑問や質問があれば自由にお書きください」という回答の中で、編集部で特に気になった「読者の声」をいくつかピックアップします。
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戸惑いや悩みも。登山者の声

戸惑いや悩みもあった、読者からの「率直な声」

登山再開の判断基準がわからない

・山岳協会などからの正式な登山再開の発信をする予定はありますか?

・解除後の登山再開は、後ろめたさがありますが、山岳関係の各団体は正式な許可を出して頂けるのでしょうか。

・現在「自粛のお願い」が出されていますが「自粛解除のお知らせ」は出されるのでしょうか?

これは登山自粛に関するお願いが出されたことに対して、出した関係各所は自粛解除も出してくれるのだろうか?という声になります。

「自粛のお願い」に対しての「お願いの解除」ではありませんが、政府の緊急事態宣言解除を受けて「ガイドライン」というかたちで、5月28日に山岳四団体からのアナウンスが出されました。「自粛のお願い」である以上、受け手に判断は委ねられてはいたのですが、モヤモヤ感があるのかもしれません。

・何の基準を持って登山の再開をすれば良いのか解らないです。

・国内がどの状態になれば登山を再開してよいのか判断ができない

・どの程度の感染状況になれば以前と同じように登山に行っていいのか

アンケートのタイミングが「緊急事態宣言」「県をまたぐ移動の自粛」が解除される前だったこともありますが、判断の基準に悩む声です。感染状況をはかる感染者数も「多い/少ない」の判断が難しく、「増加傾向/減少傾向」なども含めて、考える必要があります。

なぜ登山を自粛しないといけないのか?

・交通事故なので搬送される方と山での遭難事故の割合を比べると前者が圧倒的に多い。医療従事者の方のコロナ感染リスクは山の救助活動と日常生活での救助活動と変わらないように感じます。何故、登山自粛しないといけないのか理解できません。

この声には2つの要素(遭難事故の可能性と割合/医療従事者に対する感染リスクの可能性)があります。それに加えて、遭難者を受け入れる場所の医療リソースも関係してきます。リスクは0にできないけど確率として考えると極めて低い。一方で、一律に自粛というかたちで0に近づける判断にも理があります。とても難しい問題です。

山と言ってもいろいろあるのに……

・北海道の山では、人がすくなく三密にはならない状況が多いです。公園や堤防は人がわんさかいるなか、山がダメって矛盾しています。疑問。田舎とメジャー山と一緒にしないでほしい。ちゃんと北海道は、北海道で白黒はっきりつけてほしい。メジャー山と一緒にされて自粛といわれてるのもおかしい。

・登山は3密に該当しないな、と呑気に考えてました。しかし、滑落のニュースを見て初めて、想定外の事を考えて行動しないといけないと思い知らされました。とは言え、九州にはそんなに高い山もなく、山小屋のあるような山はほとんどない、低山ならお散歩感覚で登れる?と悶々としてます。ありですかね?

・里山であれば登っても問題ないのか?

全国からひとが集まる富士山の登山道ルート閉鎖のニュースは大々的に報じられましたが、そういった人気の山」と「地元のひとが登る地元の山とを、一律に見られることにモヤモヤが残っているようです。

受け入れ側の気持ちや地元の反応が気になる

・もちろん山には行きたくて行きたくて仕方ないですが、山小屋や、地元の方々が私達が来ることをどう思われているのか知りたいです。少しでも心配なら控えたいですし、こちらも、えいや!で行って、登りながらやっぱり大丈夫かな?と気を使いならがら登るのはやっぱり楽しくないです。普段以上に、地元の方や山小屋の方々への配慮が必要とだと思います。

・山域で働く人(特に小屋従業員、レスキューや遭対協の人達)の率直な意見が聞きたい。恐怖感とか、経済面とか。

・緊急事態宣言解除の後、いくら気をつけて登山をしていても、救助要請をせざる得なくなる場合のリスクはあります。そこで携わっていただく救助隊、山小屋の方々に迷惑は今まで以上になると思うのですが、それでも、登山はしてよいものなのか迷います。皆さんはどんな考えのもと、登山をしていこうと思っているのでしょうか。

この質問の背景には、まったくひとと接触せずに登山を完結するのは難しいということがあります。地元商店や山小屋の人々、万が一の際にはレスキューや遭対協にもお世話になるかもしれない。

地元にとっては「外から来たひと」であることを登山者自身が自覚していればこそ、気になってしまいます。

・マイカー利用(都内ナンバー)の登山につき、駐車場で他県ナンバーへの嫌がらせ等されてしまうんじゃないか?ちょっと気になるところではあります

・感染や人に迷惑をかけることも怖いですが、それ以上に「人の目」が怖くて、どう行動したらよいか判断ができません。

・登山悪みたいな方向ではなく、皆が前向きに考えて対策していく方向に早くならないものだろうか?

先の例の「山に関わるひとや地元のひとの反応」というよりは、「登山者自身に向けられる反応」を心配する声もありました。

アンケート締切後の6月19日に、県またぎの移動自粛の解除があったので、いまはこういった心配も緩和されているかもしれませんが、自粛時の各方面の反応を知っているだけに、今後再び感染者が増えてるような状況が起これば、心配要素として再び上がってくるかもしれません。

これまでの登山についても再考を

・山小屋での三密を防ぐのはなかなか難しいと思います。私は平日登山なので混み合った山にはあまり行きませんが土日の登山道の渋滞、小屋の2人で1つの布団とか…山にも登山者の入山人数平準化とか出来ればいいんでしょうかね?休日の関係上難しいとは思いますが…

・登山道の整備等、尽力頂いている方々支援の観点からすべての山で入山料を徴収

・入山制限とか入山料の徴収とかを考える良い機会だと思うのですが、どうですか?

・自然公園利用料の徴収化の現実性。登山道の整備や、し尿問題、休憩施設などを山小屋に頼れない環境にあるので、それを補完する団体や予算など、どのような解決策があるのか知りたい。

・リスク回避の為登山を控えるようになると登山道の整備も出来なくなり、人が歩かなくなると登山道も荒れてくるのではないかと不安になる。今まで山小屋関係者で整備してくださった登山道もあり、行政のサポートも必要になると思う。

「3密を避ける」というところから、ハイシーズンに集中する登山者数の問題にはじまり、登山道整備などを山小屋に依存している現状などを見直してはどうか、という声が登山者自身から出てきたのも印象的でした。

コロナウイルスの問題が、これまでの登山のあり方を考える一石を投じるかもしれません

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山小屋のことが心配……

山小屋のことが心配

・山小屋の運営はどの程度で赤字になるのか。

・山小屋を支援する方法は何がありますか。

・山小屋や観光地の方々の意見が聞きたい。できるだけ協力したいので。

・山小屋での密集を避けるために収容キャパを制限すると今までの料金体系では運営が厳しくなると思います。値上がりするのはやむなしですがどの程度の値上げが必要でしょうか?

「山小屋利用の可否や感染予防対策について知りたい」という声もありましたが、自粛による休業での山小屋の経営状態などを心配する声も多くありました。

登山者の山小屋を支援をしたい」という思いは、期せずして5月18日に立ち上がった「#山小屋支援プロジェクト」「山小屋エイド基金」という2つのクラウドファンディングの総額で、約1億3249万円(7月3日現在)というかたちに実ったのは、このコロナ禍のなかでは希望ある話題のひとつだと感じます。




すべてのかたのコメントを紹介できず抜粋にはなってしまいましたが、当初の企画趣旨であった「Q&A」で簡単に答えを出せないものが多かったと感じました。それはこのアンケートの集計期間が、自粛解除間近だったことや、登山だけでなく日常生活にもさまざまな影響が大きく出ていたことなどの要因があると思われます。

一方で、登山だけでなく、日常生活においてもいままで経験したことがない「外出自粛」という特異な状況下に置かれていたなかで、モヤモヤとした思い、不安、いらだちも含め、率直に寄せてもらった「生の声」は、登山業界やアウトドア業界にとっても今後貴重な資料になると考えています。

YAMA HACKとしては、みなさんの声を届けることで役立ててもらえる関係各所にはアンケート結果をシェアしていきたいと思います。こちらよりお問い合わせください。

お問い合わせ|法人の方

100%正解はない。登山を続けるため考え続けよう

登山を続けるために
出典:PIXTA
おそらく、アンケートに回答してくれたかただけでなく、いまこの記事を読んでいるひともあぁ、そういうふうに感じてたかもと思うことはあるのではないでしょうか?

県をまたぐ移動自粛が解除されたいま、「山に行く」ということの移動的制約はなくなったかもしれません。でもコロナウイルスは消滅したわけではなく、依然として感染者は毎日報告されています。そして、例年と大きく異なり、富士山や南アルプスといった一部山域では登山道の閉鎖なども行われ、実質的な「登山不可」となっているところもあります。

情報はつねにアップデートされ、状況は随時変わり、山行計画の変更を余儀なくされることが、コロナ以降の登山です。あらゆる情報を収集し、複合的かつ客観的に判断する。そして考え続ける。

次回の<回答編>ではみなさんの質問から、考えるためのヒントを導き出してくれるものを取り上げて見たいと思います。


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YAMA HACK編集部 村岡

YAMA HACK運営&記事編集担当。スキー好きが嵩じて北アルプス山麓に移住し、まんまと夏山登山にもはまる。アクティビティとしての登山の楽しみとともに、ライフスタイルとしての「山暮らし」についても発信していきます。

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