『アプローチシューズ』って何?
ハイキングシューズ、ランニングシューズ、クライミングシューズ…登山に関する靴も多くの分類がされていますが、その中でもアプローチシューズという言葉を聞いたことはありますか?
クライマーご用達の靴
アプローチシューズは、クライマーが岩場に向かう(アプローチする)間に履く靴のこと。目的の岩場は山の中にあることが多いため、街中から登山口へのアクセス~軽登山、さらには簡単なクライミングまでこなせるように適度な剛性とグリップ力を備えています。機能としては、スニーカーと登山靴の中間にあたると言えるでしょう。
そんなアプローチシューズは、一見ニッチな靴のように思いますが、実は汎用性が高く密かに愛用者が多いんです!
アプローチシューズ=高機能なスニーカー!?
グリップはお墨付き!
岩場までの道のりは基本的にオフロードです。アプローチシューズは登山靴と同様グリップが良く、未舗装の道でも滑りにくくなっているのが特徴。また、そのまま簡単なクライミングまでこなせるように爪先が岩場をつかみやすいように設計されている製品もあります。
ソールを見れば一目瞭然。登山靴は岩や土などのあらゆる不整地をしっかり掴めるよう、溝が深くなっています。
それに比べて真ん中のアプローチシューズは一見ツルっとしているように見えますが、写真のものはクライミングシューズの定番ブランド・FIVE TENが独自に展開しているSTEALTHソールが採用されており、接地面の摩擦によるグリップは抜群。メーカーによっては、左の登山靴と同じビブラムソールを用いているものもあります。
右の普段履き用スニーカーは溝も浅く、ソール自体のグリップも高くありません。濡れたマンホールの上で滑ったことのある方も、少なくないのでは?
ローカットがほとんど! 登山靴より気軽に履ける
登山ほど長時間歩くわけではないのでローカットのアイテムがほとんど。基本的にはクライミングのための岩場までを目的地としているためです。長時間歩く場合は疲労も蓄積しますから、捻り防止の意味を込めて足首部分をサポートする登山靴をお勧めします。
登山靴ほど硬くない、でもスニーカーよりはしっかりしてる
アプローチシューズの多くは、悪路を歩くために適度な剛性を備えています。しかし、長時間の歩行や足元の堅いガレ場を歩くことは想定していないため、登山靴ほどのアッパーの硬さはありません。写真のように、歩行の屈曲に追従してくれる点もポイント。スニーカーよりもしっかりしていて、本格的な登山靴よりも柔らかく軽いのが特徴です。
つまり…岩場だけじゃもったいない!
本来のニッチな用途とは裏腹に、スニーカーだと不安だけど、登山靴となるとヘビーかも…そんな時に活躍する“ちょうどイイ”靴なのです。普段よりもライトな低山ハイキング、登山旅行での下山後の街歩きなど、とりあえず1足持っておくと便利な汎用性の高いアイテムと言えます。
ハイキングシューズとはどう違うんだ?
ここで浮かんでくる疑問。ハイキングシューズとはどう違うの? どっちを選んでもいいの?ということ。そこで、実際にどんな人がどんな目的で買いにくるのか、山道具店の店員さんに聞いてみました! 答えてくれるのは、Mt.石井スポーツの清水さんです。
Q.ハイキングシューズとあまり大差ないように思えるけど、 どういう目的でアプローチシューズを買っていく人が多いの?
清水さん
なるほど。結構使えるシーンは広そうです。やはり目的も様々に、マルチに使えるんですね。
清水さん
トレランはじめ軽い靴は剛性に掛けるものもあるため、
つまり、足を『支える』という機能はないものと思った方がよさそう。脚力にある程度自信がある人向けということですね。
Q.使う目的やシチュエーションが違うだけで、ハイキングシューズ、トレランシューズ、アプローチシューズってすごく似てると思うんですが…
清水さん
ハイキングやトレッキングが目的で不整地を歩くのであれば、基本的にはミドルカットやハイカットが安全性の観点ではお勧めできます。
先ほどの話にも通じますね。足首周りがあるかないか、は歩行のサポートにおいて重要な役割を意味します。自身の脚力を考えたうえで、軽さやサポート力などを吟味して選びましょう。
Q.アプローチシューズでちょっとしたハイキングや低山とかに行く人、け っこういますよね?
清水さん
ある程度経験値が必要になってくるということのよう。ランニングシューズとも違うんですよね?
清水さん
ご自身でローカットで行けるのか?
確証がなく「いけるでしょ!」と判断するのは早計。アプローチシューズは、ある程度登山経験を積んで判断ができる人の選択肢としてはアリ!ということがわかりました。
街中⇔山で使いやすいのが一番の魅力!
ハイキングシューズやランニングシューズはデザインが「いかにも!」な感じで街中だと履きにくいこともありますよね?アプローチシューズはハイテクスニーカーのような見た目で、街中でも違和感なし。硬すぎないため舗装路でも歩きやすく、下山後の街歩きや、ちょっとしたお出かけにも活躍してくれます。
アプローチシューズはちょっとしたハイキングにもピッタリ。低山登山のときに、いつもの登山靴だとオーバースペックだと感じることも多いでしょう。下山後に登山仲間と食事に行くなんてときにも便利です。
どこに売ってるの?
アプローチシューズは、登山用品店や物販をしているクライミングジムなどで販売しています。もちろんネット通販でも買えますが、なるべく試着をするのがおすすめ。安全・快適な歩行のためにフィッティングは重要ですし、いつもの登山靴とは履き心地が異なるので、初めての場合は店員さんと相談しながら慎重に選びましょう。
定番アプローチシューズ3大ブランド!
最近では多くのメーカーがアプローチシューズを販売していますが、中でも歴史ある3つの定番ブランドとおすすめ製品を紹介します。
FIVE TEN(ファイブテン)
ファイブテンは、クライマーであるチャールズ・コールが1985年に創業したアメリカのアウトドア靴ブランドです。世界最強ソールとも言われた「ステルスラバー」や元祖アプローチシューズ「ガイドテニー」などを世に送り出してきた業界のリーディングカンパニー。
高い性能と確かな実績で昔から多くのファンを持ちますが、2011年にアディダスに買収され、2019年春からは、新たなブランド<adidas | Five Ten (アディダス ファイブテン)>として、アディダスとファイブテンの伝統と技術を融合させたラインナップが展開されています。
▼おすすめはコレ!
軽量ながら機能的なアプローチシューズです。クッション性と反発性を両立するBOOSTミッドソールにより、軽登山でも安心して歩けます。街履きしやすいデザインも◎。
LA SPORTIVA(スポルティバ)
スポルティバは創業90年の歴史を誇るイタリアの老舗登山靴メーカーです。自然豊かなドロミテ山麓に工場を持ち、製品は全て熟練した職人による自社生産を貫いています。ISO9001、ISO14001の認証を取得した環境保護に対する姿勢も特徴。卓越した技術力とイタリアらしい洗練されたデザインで、世界中の山岳ガイドもその製品を愛用しています。
▼おすすめはコレ!
岩場までのアプローチからデイハイキングまで幅広く使える汎用性の高い一足です。シューレースがかかとまで包み込むように繋がっており、ヒールのホールド感は抜群。斜めに接地するように設計されたビブラムソールが高い衝撃吸収性とグリップ力を実現しています。
SCARPA(スカルパ)
社名のスカルパはイタリア語で「靴」を意味します。靴製造のトップブランドが集まるモンテベルーナのアゾロ村で1938年の創業以来、妥協なき製品作りを続けています。日本では特にクライミングシューズに定評があるブランドとして多くの愛用者がいます。
▼おすすめはコレ!
スニーカーライクなシンプルで洗練されたデザインのアプローチシューズ。抜群のグリップ力を誇るビブラムのスティッキーソールは、滑りやすい岩場で威力を発揮します。アッパーのスエードが撥水加工されているのも嬉しいポイント。
これ一足でどこにでも。アプローチシューズでもっと身軽な登山ライフを!
岩場までのアプローチを目的をしたアプローチシューズですが、登山に慣れている人なら想像以上に幅広いレベルの山行で活躍してくれます。メインで使う登山靴に加えてもう一足欲しい…という買い足しの選択肢としても最適。一度その便利さを実感すると手放せなくなりますよ。