ただ速いだけじゃない!? 「スピードハイク」の奥義とは?

驚異的な速さで山に登る人は、スピードハイクを楽しむ上でどんな工夫をしているのでしょうか。「計画段階」「行動中」「装備面」「体力面」で教えてもらいました。通常の登山でも活かせる工夫が、きっとあるはず!
計画段階での工夫は?
①自身のハイクレベルを正確に把握する
最も重要なことは“自分の登山レベル、体力を知ること”。無謀なチャレンジは絶対にしてはいけません。
そのためには、山と高原地図に記載されている標準コースタイムと比較し、直近のハイク実績にて、“何割程度で歩けているか”を確認することが良いでしょう。歩行技術は経験により上がりますが、体力は上がることもあれば下がることもあるので、”直近”の実績でみるというのがポイントです。
また、自分が“何時間なら歩き続けられるか”を知り、予期せぬ不調のリスクを加味した立計をすること。山頂での滞在時間や行動食の補給、ウエアの着脱も含めて計算します。
少しずつチャレンジし、徐々にレベルを上げていくことが、安全登山の観点から重要です。
②ポイントごとに目標タイムを記入した地図を用意

登山地図はマスター地図の持参に加え、ハイク主要エリア部のみのカラーコピーをとります。マスター地図はザックの中へ、コピー地図には各ポイントごとに目標設定としているタイムを記入し、すぐに取り出せる場所へ。
そうすることで、ハイク中に計画に対しどの程度で歩けているかをすぐに確認することができます。
行動中の工夫は?
①エネルギー摂取&ウォーミングアップ

通常の登山と同様に朝食をしっかりとり、きちんとウォーミングアップを行います。夜中にスタートするナイトハイクだったとしても、これからエネルギーになる炭水化物をメインに摂取します。
②スタートはゆっくり、徐々にペースアップ
いきなり飛ばすと故障やケガの原因に。また、身体の隅々までエネルギーが行きわたっていないうちにハイペースで歩くと、疲労が早くきてしまいます。
➂トレッキングポールの使用がおすすめ
両脚だけへの負担軽減となり、リズムに乗ると“四足歩行”が楽なことを体感できます。
④とにかく疲れないペースで歩くこと
疲労を感じて休憩を取ると、ハイク開始直後は楽ですが、それもほんの束の間、休憩前より脚が重い……なんて経験をしたことはありませんか?
一般的にはこまめな休憩をとることとされていますが、休憩後のリカバリに余分な筋力と体力を必要とし、せっかく筋細胞に届けた酸素をまた届けなくてはいけなくなるため、効率が悪い面もあります。これを繰り返しては非効率なため、「休憩を取らなくても良いペース」で歩き続けています。
ただし、それは”十分な基礎体力”と”自分の体力・筋力を把握し、自身のイーブンペースを理解していること”が大前提。初めのうちは中々つかめないため、「とにかく疲れないペースで歩くこと」を意識すると良いでしょう。
登りの失速、後半の失速は意外に大きいもの。いつもよりゆっくりを意識して歩いたら、いつもより早く山頂に到着した!なんてこともあるんです。
ちなみに、疲労による休憩はしませんが、景勝地や小屋などのポイントに到着した際は、そこでの風景や会話を楽しむための時間はとります。
⑤行動食や水分の摂取は小まめに

行動食と水分は少量ずつ小まめにとります。ただし、都度ザックを下して座っていたら、前述の休憩同様に非効率。飴やチョコ、ナッツ等をすぐに取り出せる場所に入れておき、数秒程度の立ち止まりで口に放り込んだら、また歩き出します。
ナッツなどでエネルギー不足を補えないと感じた場合は、そうなる前におにぎりなどの炭水化物をメインに摂取。パワージェル系は即効性があるので、エネルギー補給におすすめです。
登山中は、ナトリウムやマグネシウムの不足が脚のつりを誘発することがあるので、水分はスポーツ飲料をとり、お茶などを飲みたい場合も必ず交互に摂取。塩飴などを積極的に摂取するのもの◎です。足攣り対策・予防には漢方薬の「芍薬甘草湯」も有効とされています。
足のこむら返りや、手指の攣(つ)った状態に芍薬甘草湯は短時間で効果を発揮します。なんと効果発現時間で平均6分と言われています。効果持続時間は、4~6時間。ジョギングやハイキングやトレッキングに行かれる方は、是非に1包常備して頂くと宜しいかと思います。無論水分補給や塩分などミネラルの補給をこまめにしておくことは前提条件であることはあたりまえのことですが。
⑥漫然と歩かず、疲れない歩き方を見つけること
歩き方のコツは、大きく分けて4つあります。
・太もも裏と臀部(おしり)の筋肉を意識
ふくらはぎの様な小さい筋肉を使い過ぎるとすぐに疲弊するためです。また、太ももの前面ばかり使うと、大腿四頭筋の外側広筋や内側広筋の痙攣などを引き起こすこともあるので、なるべく、臀部~太もも裏(ハムストリング)を意識し登ります。
・足の置き方
足への衝撃は蓄積疲労となりますので、“ドンドン”ではなく、“ポンポン”と静かに足を置くのがおすすめ。
・細かく刻んで登る
筋力が備わっていないうちは、大きな脚上げは避け、細かく刻んで登るのが◎。筋力が伴ってきたら、徐々に脚上げを大きくしていきます。
・下りではフォアフット
下山時は、つま先から先に置く“フォアフット”という歩き方ができると、膝への負担が少なく、かつ後ろ方向へのスリップが防げるので安定します。
ただし、ハイカットの登山靴では足首が固定されるため、足裏全体を地面につく“フラットフッティング”での着地になりますが、それでもかかと着地より随分と安定します。
続いて、「装備」と「体力面」での工夫をご紹介!