登山道具はそろった! いざ、山に…

でもちょっと待って! 最後の仕上げに、意外と見落としがちなアイテムがあるんです。「山に行くならこれは持っていけ!」なアイテムとは、いったい何なのでしょうか? 今回は山道具のスペシャリスト、石井山専 新宿東口ビックロ店・山﨑さんにお話を伺ってきました。

山﨑さん:あります! ウェアや靴などを揃えたらもう登山に行けてしまうような感じがしますが、実は忘れてはならないのが小物などのアクセサリー類です。
ヘッドライトはレインウェアと同じくらい必須装備!

編:え? でも別に、泊まりじゃなければいらなくないですか?
山﨑さん:いえいえ、日帰りでも持っていってください。ヘッドライトはレインウェアと同じくらい必須アイテムです! 山って、夕方くらいには結構暗くなるんですよ。例えば森林限界を超えるような標高の高いところだと、ある程度日が沈んできても明るいんですけど…樹林帯に入ると光が遮られて割と早いうちから暗くなります。

山﨑さん:そう。そうしたら暗くなると心理的に焦っちゃって、判断力の低下につながることもあります。“使わない前提”で山に行っても、山頂がものすごい気持ちよくて、ゆっくりしすぎちゃうかもしれませんし…
編:た、たしかに。それは大いにあり得ますね。
山﨑さん:あとは山があるところって、街からは離れているエリアなので下山しても街灯が全然なくて真っ暗、ってこともあるんですよ。そうすると側溝に落ちて怪我、なんてこともあり得ます。
あと何よりも大事なのは、万が一道に迷ったとき、外部から発見されやすくなる。これが重要です。自分の身を守るために、日帰り登山でも持っていって頂きたいですね。
どれくらいの明るさのものを選べばいいの?

山﨑さん:実はここ最近、ヘッドライトはどのブランドもルーメン数(明るさ)を上げてきています。2~3年前までは、150ルーメンもあると結構ハイスペックと言われる位置づけで、日帰り登山だと70とか80とか、100ルーメン以下くらいのものが主流だったんですが、LEDが発達してきてより省電力で明るくできるようになったので、ベースが上がってきました。
編:はぁ~…技術の進歩は山道具にも恩恵をもたらしてたんですね!

あとは、例えば積極的に夜の道を歩くナイトハイクだったり、トレランで夜中も走ったりするような場合は250とか300とかさらに照射力の高いモデルがおすすめです。特に下りは遠くまで見通せた方がいいですし、ランナーって移動のスピードが速いから、早く情報を処理しなくちゃいけないので遠くまで照射できるものを選ぶことが多いです。
でも日帰り登山でその日のうちに帰るつもりであれば、そこまでルーメン数は高くなくていいと思いますよ。
編:ゆっくり歩くから、足元と周りを最低限照らせればいいという事ですね。
エントリーモデルはどれ?

山﨑さん:ペツルのティキナとか、ボタンが大きくて操作しやすいブラックダイヤモンドのコスモあたりが人気ですね。ペツルは衝撃テストなどもしているので丈夫だし、信頼度は高いですよ。

山﨑さん:ブラックダイヤモンドや一般的なヘッドライトは、例えば300ルーメンのヘッドライトだと、電池の残量に応じて最初は300ルーメンなんだけどそこからだんだん明るさが落ちていきます。
一方ペツルは乾電池以外に充電池を使えるモデルがあって、これを使うとずっと300ルーメンを保って、ある時スっと落ちる。コンスタントライティングというのですが、これが大きな特徴の違いですね。充電池を使えるモデルは他メーカーもあるんだけど、このコンスタントライティングはペツルの大きな特徴です。
そのうち山小屋にも泊まるなら、赤色灯付きがおすすめ

編:ほう。それはどうして?
山﨑さん:赤色って、夜間視力を保てるんです。瞳孔が開いた状態にできて、白色に比べてそんなに眩しくないから相部屋で他の人の迷惑になりにくいし、夜に外に出て星を見ようという時に、くっきり見やすかったりします。
編:へぇ! それは知りませんでした。そのうち泊まり登山もしたいなら大事なポイントですね。
山﨑さん:あと虫が寄ってきづらかったり、霧の中でも照らしやすかったりというメリットもあるんです。白色だと、霧の中は乱反射しちゃうので。全部のモデルについているわけじゃないので、そういったポイントもふまえて検討するといいと思いますよ。
まだまだある! 押さえておくべき大事な“小物”たち
靴下って、普通のやつじゃダメ?

山﨑さん:登山靴って、普通の運動靴に比べて固く作られているんですよね。なのでまずクッションの役割として登山用靴下を履いた方が良いです。それともう1つ重要な機能が汗処理。足って、頭、手の次くらいに汗をかく場所なんですよ。
編:体の末端は汗をかきやすい、ということですね。
山﨑さん:その通り。例えば靴が防水でも、普通の靴下だと自分の汗で内側から濡れてっちゃう。登山用の靴下というのはメリノウールを使用しているものが多くて、これが汗をしっかり吸水して蒸気に変換してくれます。それを靴の防水フィルムが持つ透湿性が逃がしてくれるんです。ウェアのレイヤリングの考え方と同じですね。

山﨑さん:いえ、色々機能は異なりますよ。テーピング効果、靴ずれ防止機能があるもの、化繊にウールを巻き付けて速乾性も持たせたものとか。でも最初の1足は、特別にあれこれ機能が付いていないスタンダードなものでいいと思います。使っていくうちに必要になってきたら、色々と機能が付随しているものを検討してみましょう。

グローブってあった方がいいの?

山﨑さん:そうですね。グローブには主に手の保護、日焼け防止、滑り防止といった役割があります。例えば転んじゃったときに手を付いて怪我しちゃうとか、結構あるんですよね。あとは山って手を洗える所が少ないので、あちこち掴んで手が汚れちゃったり、トレッキングポールのストラップが手首に擦れたり…。
編:確かに、登山中は枝とか岩とか無意識に色々触ってるかも。でも、それって軍手とかじゃダメなんですか?

特にこれから暖かくなってくる時期だと、こういう薄手の通気性が良いものがおすすめ。グローブは絶対なきゃいけないというものではないんですが、素手だと何を触って登るかわからないので1つ持っておくと重宝しますよ。
その他、あると便利なグッズは?


あるとないとじゃ大違い!

・ヘッドライトはレインウェアと同じくらい必須装備!
・日帰り登山は150ルーメンくらいのものがあればOK
・そのうち小屋泊をしたいなら、赤色灯付きヘッドライトを
・靴下は登山用が◎、軍手はNG
・日焼け対策も忘れずに!
以上がポイント。また、今回紹介したもの以外にも便利な登山グッズはたくさんあります。きっとお店で物色し始めると、楽しくなってアレもコレも欲しい!って思い始めてしまうので要注意!
登山のちょっとしたシーンでストレスを溜め込まないためには、小物使いがカギ。また、登山の回数を重ねる度に「ここでこういうアイテムがあったらいいな」というニーズが精査されていくはず! しっかりと準備をして、快適な登山を楽しんでくださいね。
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