今年はちょっと、本格的な登山がしたい!

一番あと回しにしてない?ヘルメット

・滑落や転倒時に頭を守る
・落石の際に頭を守る
の2つの役割があります。そのため、岩場が多い山にかんしては極力ヘルメットを着用することが望ましく、長野県は『ヘルメット着用推奨山域』というものを発表しています。アルプスなどのとりわけ標高が高く岩場が多い山域です。

長野県のみならず、その他の山でも滑落や落石の危険性が高い山ではヘルメットが必要になります。『その山へ行くにはヘルメットがあった方がいいかどうか』を、自身で調べて判断できるのが理想です。
ヘルメットは大きく分けると2種類ある

編集部(以下:編):今日はよろしくお願いします。早速なんですが、今年ヘルメットが必要とされる山域に行くことが決定して、初めて「自分の登山用ヘルメットを買おう!」という人は、お店に行くと様々なヘルメットがズラーっと並んでいて、どう選んでいいかわからないと思うのですが…。
もちろん頭の形に合う・合わないは前提として、何か選ぶ基準はあるのでしょうか?
植田さん:そうですね。まず、登山用ヘルメットは大きく分けると2種類にわかれます。1つは軽量なモデル。インモールドタイプ、とも言います。
このタイプは、200g台前半のものからありますね。およそバナナ2本分くらいです。

この日売り場にあったヘルメットで、200g台の軽量モデルは主に
・ブラックダイヤモンド ベクター(230g/240g)
・ペツル メテオ(220g/225g)
・カンプ スピード 2.0(268g)
・エーデルリッド シールドライト(220g)
・マムート ウォールライダー(220g)
・グリベル ステルス(200g)
などがありました。
編:へ~! そうやって考えるとめちゃくちゃ軽いですね。ちなみにもう1種類は?
植田さん:もう1種類は頑丈なタイプ。これらは主に、300g台がほとんどです。こちらはハイブリッドタイプ、などという言い方もします。この2つの何が違うかというと、“軽い部分の素材が多いか少ないか”、“固い部分が多いか少ないか”…まぁ、そのまんまなんですが(笑)
頑丈タイプは
・マムート スカイウォーカー2:380g
・エーデルリッド マディーロ:390g
・カンプ アーマー:355g
・ワイルドカントリー フュージョン:332g、370g
・グリベル サラマンダー:352g
などがありました。
編:うーん。これ、軽量か頑丈か、どういう基準で選べばいいんですか? どちらも大事な要素な気がします…。
植田さん:まず両方に共通して言えるのは、内側にEPS(発泡ポリスチレン)という素材を使用していて、外側のシェルの素材がそれぞれ異なります。それにより重さに違いが出るんですが、軽量タイプは衝撃を吸収してくれる一方、頑丈タイプは衝撃を拡散してくれる働きがあります。
植田さん:そうですね、最近みなさん、軽量なタイプを選びますね。持ち運ぶ時間・被っている時間が長ければ長いほど、やっぱり軽量なほうがいいと思います。200gと300gって、たった100gの差だけど、これって結構大きいんですよ。
編:100gというと…(スマホで調べる)あ、じゃがいも1個分くらいだそうです。
植田さん:「なんだ、それくらいか」って思うかもしれませんが、これはかなり大きい差だと思います。例えばクライミングの時は朝から晩まで、10時間以上被っていたりします。そうなると、頭って体の末端なので、この100gがじわじわ効いてくるんですよ。

植田さん:はい。登山中って、上を見上げながら登るって結構しんどいので、正面を見ながら登ってるとどうしても頭をぶつけたり、というリスクがでてきます。そういう時にもヘルメットを被っていると安心なので、やはり被っている時間が長いのであれば軽量タイプがいいと思いますよ。
ただ、持ち運びに気を使わないと、ぶつけてへこんじゃう事もあります。その点、頑丈なタイプは多少ガンガン岩にぶつけても、壊れにくいです。
編:お値段も差が出ますね。軽量タイプの方が、少し高い…。
植田さん:はい。軽量タイプはだいたい1万円超えで、頑丈タイプは1万円を切るものがほとんどです。最初に買う場合は予算の問題もあるので一概には言えませんが、これらを踏まえて商品を手に取ってみると良いと思いますよ。
下に何かかぶったほうがいいの?

植田さん:夏などは、ヘルメットの中のムレ対策や、汗止めの役割があります。汗が目に入らないようにする目的もあると思いますよ。あとは、ヘルメットを装着する時にいちいち帽子を脱ぐのが面倒なので、そのままインナーにもできる薄手のキャップを山行で使用している人もいます。
編:なるほど! たしかに、そのまま被れたら楽ちんですもんね。
植田さん:別に何か被らなくてはいけない、という決まりはないので、直に被ってもいいですよ。僕は直に被る派です。あとはモデルによってはパッド自体を別売りしているので、それだけを交換して使うのもアリかと思います。
『浮いて見えちゃう』はいったん置いておけ!

植田さん:頭の形によるので一概には言えませんが、モデルによっては深くかぶれるものもありますよ。
編:例えば、今売り場にあるものだとどのモデルでしょう?
植田さん:幅が広いもの、という意味ではKONGというブランドの「マウス」や、マムートの「ウォールライダー」なんかも比較的そうですよ。ただ、ヘルメットは後頭部を守るためなので、そこに少し余裕を持たせると、どうしてもそのような形になってしまう。そこはいったん置いておいて、色んなヘルメットを被ってみて、しっくりくるものを選ぶのが一番です。

植田さん:とりあえず、顎ひもと後ろをゆるめて、被りましょう。そのあと締めてみて、特にストレスがなければ、あとはご自身で被り心地を比較してみてください。おでこの出っ張ったところが当たる感覚が少しするなぁ、と思うと、それって長い時間山で被っていたら結構気になるんですよね。
編:さっきの重さの話と同じですね。
植田さん:そうです。大体2種類サイズ展開しているモデルが多いので、とにかく被りまくってください! あとは先ほど出てきた、ヘルメットの下に何か被るのであれば、その相性も大事なのでお店に持参頂くことをおすすめします。
安全のために、自分を守るギアは妥協せず!

・ヘルメットは大きくわけて『軽量』と『頑丈』の2種類ある
・長い時間被っていることを考えると、軽量タイプがおすすめ(予算と要相談)
・浮いて見える、はいったん置いておいてとにかく被りまくる! 自分の被り心地を最優先
以上がポイント。ヘルメットは実際に身に着けて長い登山を共にします。そのため、ストレスにならないよう自分にぴったりの理想のヘルメットに出会えるまで、お店で被りまくってみるのが◎! 命を守るものでもあるので、妥協せずにお店の人に相談してみましょう。
荒々しい岩場は、スリリングでアスレチックな感覚が味わえます。何より、ゴツゴツした岩場の多い山は見た目もかっこいい! 今年は今まで行けなかった山まで、足を伸ばしてみませんか? もちろん、その際はヘルメットを忘れずに!
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