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寒さを防ぐインサーレーションの必要性

山は標高が上がるほど涼しくなり、特に朝晩は保温着が欲しくなるほど冷え込むことも珍しくありません。これは、うだるような暑さが身に応える真夏日であっても同じこと。そこで必要になるウェアが“インサレーション”です。
インサレーション(insulation)は断熱や断熱材を意味する英語で、登山では防寒着や保温着を指して使われます。身近なものでいうとダウンジャケットが当てはまり、最近は、行動中に着ることを前提とした“アクティブインサレーション”というジャンルのウェアも登場しています。
たとえば、北アルプスに泊りがけで登る計画があったとします。もし、インサレーションを持っていなかったら、山小屋に泊まる場合も日没を過ぎると気温が下がり、寒さを感じることになるでしょう。さらに夜明け前に出発しようものなら、寒さで身体が震えて動きがぎこちなくなってしまうはずです。
なんとも珍しい「半袖インサレーション」を発見!

撮影:筆者
インサレーションは登山の必須アイテムということもあり、各メーカーからリリースされていて、市場に並ぶ種類も豊富。そんな中にあって、異色を放つインサレーションを見つけました。
それが、<アクシーズクイン・エレメンツ>からリリースされている「オクタの半袖カーディガン」。軽さと保温性のバランスに優れる特殊繊維“オクタ”から作られる生地を使い、とても軽量で柔らかな着心地が特徴の一着です。

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肌面を見てみると、生地が細かく起毛している様子がわかります。この一本一本が特殊繊維オクタで、8本の突起が放射線状に飛び出るタコ足型と呼ばれる断面をもつ構造が特徴です。とても軽量でありながら、一つひとつの突起が空気を溜め込むことで優れた保温性を発揮するため、多くのアクティブインサレーションに採用されています。
そんな性能に定評のある素材を使い、一見するととても性能が高そうに思えるこちらのウェア。でも、半袖のインサレーションってどうなんでしょう?
ベストとの違いを広報担当者に直撃取材!

撮影:筆者
半袖インサレーションの利点を掴みきれない理由のひとつに、ベストの存在があります。たとえば、重ね着だけを考えると袖がないベストのほうがかさ張りにくく、なんだかレイヤリングしやすそう。そう考えると、インサレーションが半袖であるメリットはないのでは?
いくら考えても答えは出ないので、単刀直入にブランドの広報担当者に半袖であることの特徴を聞いてみました。
ーー長袖ではなく、ベストでもなく、あえて半袖にした理由は?
アクシーズクイン・エレメンツ広報担当 田中 洸さん
ユニークな半袖のデザインは、脇下にある大きな血管を温めることにより効率的に体幹を温めることができます。
また、袖があることで汗のかきやすい脇下の汗の処理もすばやくなります。
ーー長袖にも同じことが言えるのでは? 半袖にしかない利点はある?
アクシーズクイン・エレメンツ広報担当 田中 洸さん
長袖でも同じ効果が得られますが、やはり袖が長くなるぶん保温力があり過ぎてしまいます。長袖でもベストでもなく、この半袖という形がアクシーズクインの“ちょうどいい”を体現しているんです。
サンプルを試着して着心地をチェックしてみたら、まさに……!

撮影:筆者
開発担当者から回答は得られたものの、実際に着てみないと本当の良さはわかりません。ということで、サンプルを借りてさっそく試着。着心地を屋外で確かめてみました。
すると、確かに脇下が温められて、体温がじんわり上昇している感じがあります。普段、筆者はベストを愛用していますが、この感覚は初めての体験。ただ、長袖じゃないので脱ぎたくなるほど体が温まるわけでもなく、まさに“ちょうどいい”保温性です。
半袖インサレーションにこんなメリットがあったとは……。目からウロコが落ちる思いとは、まさにこういうことをいうのでしょう。
ダブルファスナーで暖かさを細かくコントロールできる

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さらに、「オクタの半袖カーディガン」のいいところは、フロントにダブルファスナーが使われていること。写真のように下から開けると大量の空気をウェア中に取り込むことができ、熱や湿気の換気が可能。使われている生地はもともと大きな編み目で通気性に優れていますが、ダブルファスナーがあることで、さらに細かく体感温度をコントロールできるようになっています。
丸襟だから山シャツなどにも合せやすい

撮影:筆者
襟がラウンドネックになっている点も「オクタの半袖カーディガン」の特徴です。首周りが包まれるジップアップタイプのほうが保温性は高まりますが、逆に窮屈に感じる方もいるでしょう。その点、丸首タイプはストレスを感じにくく、襟がついている山シャツとの相性も◎。フーディタイプのTシャツやウィンドシェルなどと組み合わせる使い方もおすすめです。
“ちょうどいい”半袖インサレーションも夏山の候補に

撮影:筆者
今回は半袖インサレーションの特徴を、アクシーズクイン・エレメンツの「オクタの半袖カーディガン」にフォーカスして紹介しました。
ベストだとちょっと寒く感じるけど、長袖を着るほどではない。そんな、歯がゆいレイヤリングの微調整に難儀した覚えがある人は、半袖インサレーションを試してみてはいかがでしょう? きっと、羽織ってみるだけで“ちょうどいい”の意味を理解することができるはずです。
ちなみに、半袖インサレーションは数こそ少ないですが、ダウンや化繊綿を封入するタイプもリリースされています。保温素材の特徴も踏まえて、ベストな一枚を見つけてください。
アクシーズクインエレメント オクタの半袖カーディガン(ユニセックス)
カラー | ミズイロ、ハイイロ、マンゴ、スミイロ |
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サイズ | 一、二、三、四、五 |
重量 | 131g |
素材 | 帝人Octa 98g/m²(ポリエステル100%) |