初めてのレインウェア、何をどんな基準で選べばいいの?
今年こそ登山を始めたい!そんな人にとって最初の関門が装備選び。特に「登山の三種の神器」と呼ばれるザック・登山靴・レインウェア(雨具)は、真っ先に揃える必要があるアイテムです。
中でもレインウェアは、ジャケット・パンツの2ピースから構成されるという点は各メーカーとも同じ。外見上はサイズや色くらいしか違いがなく、そのセレクト基準がわからない……という人も多いのではないでしょうか。
けれども「快適」な登山のためには、とても重要なアイテムなんです。
大切なのは「防水透湿性」
登山用のレインウェアと安価な雨具の大きな違いは「防水透湿性」の有無。登山という運動量の多いスポーツを行いながら着用するため
の両方を備えていないと、レインウェアの内側が高温多湿状態に。このため「防水透湿性」素材(メンブレンと呼ばれることもある)には“外側からの雨(水滴)”よりは小さく“内側からの蒸れ(水蒸気)”よりは大きい無数の穴が設けられています。
「防水透湿性」がない(低い)と不快なだけでなく身体が濡れた状態になってしまい、登山にとっての大きなリスクのひとつである「低体温症」の原因にも。
この「防水透湿性」を兼ね備えている素材の草分け的存在がGORE-TEX(ゴアテックス)。1970年代にテントで使用されたのをきっかけに、レインウェアだけでなく手袋・帽子・登山靴など様々なアイテムに採用されてきました。最近は各メーカーが独自開発した「防水透湿性」素材もあり、レインウェアに使用しているアイテムも多数登場しています。
初心者にとってはどの「防水透湿性」素材がどう違うかもよくわからず、余計にレインウェア選びが難しいと感じることもあるのではないでしょうか。
今回のセレクト基準は夏の高所登山が目標
これから登山を始める初心者に多いのが
というステップアップの過程。梅雨時の低山では、先にご紹介した「防水透湿性」が重要になります。加えて夏の高所登山では、雨が降っていなくてもレインウェアが活躍する場面が。
気温は標高が1000m上がるごとに約6℃低下、さらに風速1m/sごとに体感気温は1℃ずつ低下。すなわち標高が高く風も強い高山では、レインウェア(特にジャケット)が「ウィンドブレーカー」としても重宝する場面も出てくるのです。
そこで今回は各メーカー担当者に「防水透湿性」はもちろん「防風性」にも優れた、初心者にイチオシのアイテムを紹介してもらいました。
Columbia|SECOND HILL JACKT&RAIN PANTS
独自開発の防水透湿性素材「オムニテック」を使用したColumbia(コロンビア)のエントリーモデルのレインウェアがSECOND HILL(セカンドヒル)。
従来はジャケットのみのラインナップでしたが、2022シーズンから同機能を搭載したレインパンツも登場。上下セットアップでのセレクトが可能になりました。
担当者からのオススメポイント
セカンドヒルは表地と裏地で防水透湿性素材を挟んだ3層ウェアのベタ付きにくさと、裏側が保護プリントのみの2.5層ウェアの軽量性を両立した2.75層。裏側にマイクロビーズ加工を施して、汗をかいた時の不快感を低減しています。
背面のベンチレーションでウェア内側の蒸れも素早く放出可能ですよ。
karrimor|G-TX paclite plus jkt & pants
ザックのラインナップも豊富なkarrimor(カリマー)。レインウェアもザックの各ベルトと干渉しないよう、ポケットやベンチレーションの位置が工夫されています。
今回おすすめするG-TX paclite plus(G-TX パックライト プラス)も、不要な時にはしまえるジャケットのフードや、ザックを背負った時のずり上がりを防ぐパンツのウエストゴムなど、ザックとのコンビネーションが考えられた嬉しい工夫がたくさんです。
担当者からのオススメポイント
軽量・コンパクトが魅力の「GORE-TEX PACLITE® Plus」という防水透湿性素材を採用し、汎用性が高く手に取りやすいアイテム。今季同時発売のGORE-TEX performance素材のモデルより、低価格で購入可能です。
シンプルなデザインとソリッドなカラーリングなので、他のギアとのコーディネートもしやすいですよ。
MAMMUT|CLIMATE Rain -Suit AF
クライミング用品にも定評のあるMAMMUT(マムート)。CLIMATE Rain -Suit AF(クライメイトレインスーツ AF)は防水透湿性に加え耐久性も向上させた生地を使用しており、登山のステップアップ過程で長く使用できます。
シルエットはすっきり見えつつ、動きやすい適度なゆとりも確保。高さのある衿もとが冷えやすい首回りをしっかりとカバーしてくれます。
担当者からのオススメポイント
CLIMATE Rain -Suit AFは上下セットのレインウェア。パンツとのセットという事もあり、通常よりも丈を短めにして行動時の足の妨げが無いように設計されています。
防水透湿性素材にGORE-TEX PACLITE® Plusをチョイスしたことにより軽量で携行性もよく、インナーダウンなどを合わせれば冬の低山歩きぐらいまでは使えるのも特徴の一つです。
CLIMATE Rain -Suit AF Women|公式ページCLIMATE Rain -Suit AF Men|公式ページ
Millet|ティフォン50000ストレッチジャケット&ストレッチトレックパンツ
ウェア・ザックなど様々なアイテムを展開しトータルコーディネートも可能なMillet(ミレー)オススメのレインウェアは、独自開発の防水透湿性素材「TYPHON(ティフォン)」を使用。
適度なストレッチ性が備わった生地とスリムなシルエットながら動きやすさも計算された立体裁断で、レインウェアとは思えないしなやかな着心地が特徴です。
担当者からのオススメポイント
最大の特徴は透湿度50,000g/㎡/24h(*)の高い透湿性を持ち、あらゆる天候でも衣服内を常にドライに保つことができるという点です。
生地が柔らかく肌触りが良いため、レインウェアだけではなく、シーンに合わせてウィンドシェルやソフトシェルとしても使用できる着心地の良さもポイントですよ。
MIZUNO|ベルグテックEXストームセイバーVIレインスーツ
国産スポーツ用品メーカーのMIZUNO(ミズノ)。日本の雨を知り尽くした同社が独自開発した防水透湿性素材「ベルグテック」を使用したレインウェアが、ベルグテックEXストームセイバーVIレインスーツです。
雨の多いことで有名な屋久島在住の登山ガイド(屋久島公認ガイド)ともスポンサー契約を結び、日々着用されているアイテムでもあります。
担当者からのオススメポイント
初心者、初級者にも求めやすい価格でありながら、登山に必要とされる機能を高いレベルで備えた高品質のレインウエアです。
富士山、屋久島での着用率No.1(※)は、ハイコストパフォーマンスであることの証明。ベルグテックEXは、ベタつきにくく強度に優れた3層構造の防水透湿素材です。
mont-bell|ストームクルーザー ジャケット&パンツ
国産アウトドアブランド・mont-bell(モンベル)のオススメがストームクルーザー。そもそもストレスを感じるレインウェア着用シーンでの着心地を追求し続けてきたロングセラーモデルです。
すっきりとした無駄のないシルエットで、ウインドブレーカーや防寒着としても活躍します。
担当者からのオススメポイント
1982年の誕生から進化を続けてきた、モンベル・レインウエアのフラッグシップモデルがストームクルーザー。
第9世代となる現在のモデルは独自のカットパターンで今まで以上に防水性・軽量性・動きやすさを高めており、しなやかな着心地で初心者の方でも快適に着用できるでしょう。
THE NORTH FACE|Cloud Jacket&Pant
タウンユースでも人気の高いTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)が、登山初心者にオススメするレインウェアがCloud(クラウド)シリーズ。
GORE-TEX Paclite®を使用した2.5層構造で軽さと強さを両立したアイテム、ジャケット・パンツともに身体の動きにしっかり追従してくれます。
担当者からのオススメポイント
ややゆとりのあるシルエットで重ね着がしやすく、シーズンを問わず活用可能。
フードはヘルメットの上からでもかぶることができるサイズ感で、襟元で調節が可能なワンハンドアジャスターを採用しています。
パンツもインナーパンツとの摩擦を少なくして、脚上げがしやすいうえ、脚を上げても裾が上がりにくい工夫を施しています。
Patagonia|トレントシェル3L・ジャケット&パンツ
環境社会への取組みも先進的なPatagonia(パタゴニア)。トレントシェル3Lも製品1点ごとに工場の労働者へ賞与(プレミアム)が支払われる「フェアトレード・サーティファイド縫製製品」です。
ジャケットのフードはシンプルなコードとフックで収納可能、ジャケット本体も左サイドのポケットにコンパクトに収納することができます。
担当者からのオススメコメント
トレントシェル3Lは長期に渡って性能が持続するパタゴニア独自の規格・H2Noの基準を採用した高い防水透湿性をもつ素材。
また3層構造により汗をかいても肌にメンブレン(防水透湿性生地)が直接触れないためベタつきにくく、脇下のベンチレーションを使用することで梅雨や夏の時期もウェア内の熱や湿気をコントロールできます。
トレントシェル3L・ジャケット ウィメンズ|公式ページトレントシェル3L・パンツ ウィメンズ|公式ページトレントシェル3L・ジャケット メンズ|公式ページトレントシェル3L・パンツ メンズ|公式ページ
テンションが下り気味の雨の登山……気分がアガるセレクトを!
レインウェアを着ての雨の日の登山は山頂や稜線からの展望も期待できず、ついついテンションも下がりがち。けれども「雨の中で登山した」という経験や濡れ・寒さなどの肌感覚は、夏の高所登山に向けて貴重な財産になります。
そこで少しでもテンションを上げるためにおすすめなのが、ザック(ザックカバー)や登山靴とのカラーコーディネートの楽しみ。今回ご紹介したレインウェアも、特にジャケットには多彩なカラーバリエーションがあります。
お気に入りのコーディネートで歩けば、おのずと気持ちも前向きに。水の潤いでしっとりとした風情の草花や苔、幻想的な霧など、雨の日ならではの登山の醍醐味を発見できるかも知れませんよ。
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