20年背負って、わかったこと。『オスプレー/エクリプス32』|定番道具のモノ語り#9

2021/06/01 更新

質実剛健、丈夫さが必要な機能である山道具。だからこそ発売から10年以上も経つ道具や、10年以上問題なく使い続けられる定番の山道具があります。そんな山道具の中から、ライターPONCHOが愛用してきたモノを紹介。今回は第9回、道具選びの基準を教えてくれた『オスプレー/エクリプス32』について。

アイキャッチ画像:PONCHO

大型パックって、日本では大き過ぎではないか?

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
私がアウトドアに興味を持ちはじめた90年代、バックパックというと容量80ℓくらいの大型パックが主流でした。その大きなパックを背負い、60~70年代に流行したバックパッキングに倣って国立公園やトレイルを徒歩旅行することが、カッコよく見えました。

登山ではなく、バックパッキング。
挑戦ではなく、山旅。
敗退という考えはなく、予定変更。

道具好きだった私も大型パックを背負い、そんな風に日本の山を歩いてみました。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
でも、米国のような1ヶ月以上もかかるロングトレイルではなく、長くても2泊3日の山旅。大型パックは大きく、大袈裟なスタイルに思えました。

ちょうどその頃、レイドゴロワーズというアドベンチャーレースに参加する選手の装備を見る機会がありました。

彼らは容量40ℓ、重量850gの超軽量パックに装備のすべてを詰め込み、大自然のなかを地図だけを頼りに、数日間、人力移動していました。

「バックパッキングや登山で使うバックパックの半分の大きさ、重さの装備で、大自然のなかを旅できるんだ!」

感心した私はすぐに彼らと同じパックを手に入れ、レースでもアドベンチャーでもなく、バックパッキングに使ってみました。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
とはいえ、テントもスリーピングバッグもマットもストーブもクッカーも、現在より1.5~2倍の大きさ、重さがあり、それを40ℓのコンパクトさに収納するためには、“割り切り”が必要でした。

テントはツェルトに、スリーピングバッグはインナーシーツかカバーのみ、ストーブの代わりに固形燃料のエスビット、クッカーはインスタントラーメンがつくれる最小のものに変更。

90年代後半、まだウルトラライトハイキングという言葉、スタイル、知恵を知らない時代。フレームレスでパッドだけを装備した超軽量バックパックにそれらの道具を収納して旅するスタイルは、ウルトラライト的であり、私にとっては最初のファストパッキングでした。それは夏限定の装備でしたが、40ℓの中型パックでも山旅は十分に可能だったのです。

そして、「山旅のテント泊では大型パックがマストというのは、真実ではなく、選択肢のひとつ」だということを身を持って学びました。

シンプルさよりも、ユニークさに魅かれたパック

割り切り装備でテント泊ハイクができた40ℓ超軽量バックパックは、たぶん現在でも高い評価を得るだろう、シンプルかつ機能的なものでした。でも、2~3年で、背負わなくなってしまいました。

元々レース用につくられたモノだからなのか、背負っていて旅感がない……、ワクワクしないんです。機能的には過不足ないものでしたが、実用一辺倒。

よく、道具を「シンプル イズ ベスト」と評しますが、シンプルなだけのものは、私にはベストと思えなかったのです。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO(オスプレー/エクリプス32)
そして2001年、オスプレーの『エクリプス32』という小型パックを手に入れました。

このパックは“ストレートジャケット”というクッション材入りのサイドパネルを装備していて、スキーやスノーボードを装着できるバックカントリースポーツ用に開発されたバックパックをベースにしています。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO(オスプレー/エクリプス32)
エクリプスでは、サイドポケットや背面長調節機能が追加され、バックカントリー向きから、ハイキングを含めた旅仕様にアップデートされていました。

それまで大型パックにしか装備されていなかった背面長調節機能が採用されたことは、特に魅力でした。

美しく、スマートに荷物を収納できる機能

そして私が道具選びにおいて、シンプルさよりもユニークさを重視するようになったのが、このバックパックを背負いはじめてからのことです。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
エクリプス32は、ストレートジャケットの間のフロントパネルを全開できる、パネルローディングタイプ。

スーツケースのように収納した荷物を見渡せ、迷うことなく使いたいものが取り出せます。そしてパッキングが下手でもサイドパネルが荷物の揺れを抑え、パッキングの凸凹も目立たなくしてくれます。

そもそも荷物を見渡せるので、よっぽどの整理ベタでもない限り、きちんとパッキングができてしまうんです。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
軽さを求めたシンプルなパックの多くが採用する、袋状のトップローディングタイプでは、そうはいきません。

ストレートジャケットは、パッキングが下手でも、誰でも美しく、スマートに見せてくれる包容力があります。

パック自体の形状はぼってりとしていて、決して美しく、スマートとは思えませんが、しかしユニークで個性的です。フツーじゃないんです。きっと、軽さを求めてデザインをしていたら、浮かばなかったアイデアだと思います。

しかしフツーじゃないデザインが災いしたのか、ウルトラライトの波が強かったからか、間もなく、エクリプス、そしてストレートジャケットはオスプレーのカタログからなくなりました。でも、バックパック史上唯一無二の機能とデザインは、今でも斬新です。

「メンテナンス=手入れ」は思い入れと比例して、道具が持つ力を高める

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
あれから20年余り。ずっとこれひとつを背負ってきた訳ではありません。

振り返れば、容量30~50ℓのバックパック10モデルを使ってきました。でも、それらのほとんどは、10年持たずに劣化したり、壊れてしまいました。

20年持ったエクリプス32以外では、同じくオスプレーの『ヘリオス20』が23年、グレゴリーの軽量パックも15年経ちましたがもうギリギリ。他、10年使っているパックはあとひとつだけ。使えなくなったバックパックはすべて軽量化をウリにしたモデル。やはりそれらは耐久性が課題です。


長く使うためには自分で修理

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
「かなり懐かしいのを背負ってますね!」
「私も以前は背負ってました。でも経年劣化して、もう随分前に手放しました」

使いはじめて15年を越えたエクリプス32を背負って山旅していると、そんなことを言われるようになりました。

今から5~6年前なら、まだエクリプス32を背負っているハイカーを目にしたけれど、最近はまるで見かけません。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
2000年頃に発売されたバックパックは、10~15年も経つといろいろなところにダメージが出てきたのでしょう。私のエクリプス32も、そうでした。

サイドポケットのゴムが伸びてしまい、しばらく安全ピンで短く留めて使っていましたが、つい最近ゴムを入れて伸縮性を復活させました。

オスプレーの輸入元のロストアローに聞いてみると、発売から8年が経ったバックパックは、経年劣化で生地の強度が落ちるため、修理不能と判断される可能性があるそうです。

それならば、自分で修理して使い続けるしかありません。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
ポケットの伸縮性を取り戻したエクリプス32は、不思議なくらいに背負う気分が一新しました。

背負い心地にはなにも関係していない箇所の修理なのに、背負い心地が変わったように思えるから不思議です。気分の問題なんだとは思いますが、修理前とは違う感覚なのは、間違いありません。

でも、もしかしたら人間の感覚はとても鋭敏なので、小さな変化を捉えることができるのかもしれません。

カスタムすることでさらに愛着が湧く

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO(ウエストベルトは、実は純正ではありません)
私が’99年頃に発売された、ストレートジャケットを装備したオスプレーの小型パック『ヘリオス20』も現役で使っているというの前述の通り。

日常使い用で、デイパックのようにウエストベルトを外して使っています。あるとき、外したそのウエストベルトを押し入れで見つけ、エクリプス32のウエストベルトと同じ構造だと気が付きました。それはエクリプス32よりも薄く、運動性に長けたもの。

そこで試しに付け替えてみると、背負い心地が大幅にアップ! 以来、ヘリオス20のウエストベルトをエクリプス32に装着して使うことにしました。またショルダーやウエストベルトにポケットを装備していないので、ショルダーベルトポーチやフロントバッグも追加装着して、使い勝手を上げています。

そうして自分なりに修理やカスタムをすると、道具への思い入れが深まるのは、よくあること。このパックもそうです。

メンテナンスのことを、日本語では「手入れ」と表現しますが、道具は使う人が手を入れることで、思い入れと比例するように道具が持つ力が増すのではないかとも感じています。だから手入れは、大事なんだと思います。

そして、道具を想う。長いトモダチと新しいモノと

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
私がバックパッキングに出合った’90年代中頃、雑誌で見かけた某バックパッカーは、15年背負ったというザ・ノース・フェイスの大型パック、グラミチのショーツにパタゴニアのキャプリーンのタイツを合わせ、シューズはナイキACGのローカットシューズを履いていました。

古いモノでもそのよさを理解し、長く付き合う道具への想いがあって、しかし新しい考えを積極的に取り入れる柔軟性を持ったスタイルで、カッコいいと思いました。

そしていつか私も、長く使った道具と新しい道具とをバランスよく活用できるバックパッカーになりたいと思いました。

オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
当時何度も読み返した『バックパッキング教書』にはこんな一文があります。
 

初めて揃えたバックパッキングの道具が、完璧だったなんてことは、まず、ありえないことなのだ。自分で判断してよい道具が選べるようになるためには、やっぱり時間と経験が必要なんだ。ましてや、自分自身の個人的な要求や好みにあったものが、どんなものかをわかるようになるには・・・・・・。

1982年 晶文社 シェリダン アンダーソン 『バックパッキング教書』 11Pより引用

 

バックパッキングの道具をいろいろと使い続けて約30年。そしてエクリプス32を背負って約20年。
 
今、10年、20年と使い込んだ道具が増えてきて、自分自身とともに、道具の気持ちがわかるようになり、会話ができるようになってきました。
 
オスプレー/エクリプス32
撮影:PONCHO
エクリプス32なら、肩が痛くなったらそろそろ休憩。キレイにパッキングできないのは、装備を欲張り過ぎ。パックが揺れだしたら、急ぎすぎ……などなど。長く旅を共にしたトモダチのような道具だからこその会話です。

新しい道具とだって、会話はできます。でも付き合いが短いがゆえに、加減がわからなくてご機嫌を損ねることもある。だから旅道具、山道具が新しいモノばかりのうちは、苦労するのです。だから新しい道具を多く使う山旅では、長いトモダチのエクリプス32にそれらを収納して、バランスを取って旅するのです。

それでは皆さん、よい山旅を!

 

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オスプレー/エクリプス32
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ポンチョ

低山好き、道具好き、写真好きライター。登山、ランニング、自転車、キャンプ、旅をテーマに雑誌、WEBで企画、執筆。低山ハイクとヨガをMixしたツアー・イベント『ちょい山CLUB』を妻と共に主催する山の案内人。

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