オスプレー/エクリプス32

20年背負って、わかったこと。『オスプレー/エクリプス32』|定番道具のモノ語り#9

質実剛健、丈夫さが必要な機能である山道具。だからこそ発売から10年以上も経つ道具や、10年以上問題なく使い続けられる定番の山道具があります。そんな山道具の中から、ライターPONCHOが愛用してきたモノを紹介。今回は第9回、道具選びの基準を教えてくれた『オスプレー/エクリプス32』について。

目次

アイキャッチ画像:PONCHO

大型パックって、日本では大き過ぎではないか?

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO

私がアウトドアに興味を持ちはじめた90年代、バックパックというと容量80ℓくらいの大型パックが主流でした。その大きなパックを背負い、60~70年代に流行したバックパッキングに倣って国立公園やトレイルを徒歩旅行することが、カッコよく見えました。

登山ではなく、バックパッキング。
挑戦ではなく、山旅。
敗退という考えはなく、予定変更。

道具好きだった私も大型パックを背負い、そんな風に日本の山を歩いてみました。

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO

でも、米国のような1ヶ月以上もかかるロングトレイルではなく、長くても2泊3日の山旅。大型パックは大きく、大袈裟なスタイルに思えました。

ちょうどその頃、レイドゴロワーズというアドベンチャーレースに参加する選手の装備を見る機会がありました。

彼らは容量40ℓ、重量850gの超軽量パックに装備のすべてを詰め込み、大自然のなかを地図だけを頼りに、数日間、人力移動していました。

「バックパッキングや登山で使うバックパックの半分の大きさ、重さの装備で、大自然のなかを旅できるんだ!」

感心した私はすぐに彼らと同じパックを手に入れ、レースでもアドベンチャーでもなく、バックパッキングに使ってみました。

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO

とはいえ、テントもスリーピングバッグもマットもストーブもクッカーも、現在より1.5~2倍の大きさ、重さがあり、それを40ℓのコンパクトさに収納するためには、“割り切り”が必要でした。

テントはツェルトに、スリーピングバッグはインナーシーツかカバーのみ、ストーブの代わりに固形燃料のエスビット、クッカーはインスタントラーメンがつくれる最小のものに変更。

90年代後半、まだウルトラライトハイキングという言葉、スタイル、知恵を知らない時代。フレームレスでパッドだけを装備した超軽量バックパックにそれらの道具を収納して旅するスタイルは、ウルトラライト的であり、私にとっては最初のファストパッキングでした。それは夏限定の装備でしたが、40ℓの中型パックでも山旅は十分に可能だったのです。

そして、「山旅のテント泊では大型パックがマストというのは、真実ではなく、選択肢のひとつ」だということを身を持って学びました。

シンプルさよりも、ユニークさに魅かれたパック

割り切り装備でテント泊ハイクができた40ℓ超軽量バックパックは、たぶん現在でも高い評価を得るだろう、シンプルかつ機能的なものでした。でも、2~3年で、背負わなくなってしまいました。

元々レース用につくられたモノだからなのか、背負っていて旅感がない……、ワクワクしないんです。機能的には過不足ないものでしたが、実用一辺倒。

よく、道具を「シンプル イズ ベスト」と評しますが、シンプルなだけのものは、私にはベストと思えなかったのです。

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO(オスプレー/エクリプス32)

そして2001年、オスプレーの『エクリプス32』という小型パックを手に入れました。

このパックは“ストレートジャケット”というクッション材入りのサイドパネルを装備していて、スキーやスノーボードを装着できるバックカントリースポーツ用に開発されたバックパックをベースにしています。

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO(オスプレー/エクリプス32)

エクリプスでは、サイドポケットや背面長調節機能が追加され、バックカントリー向きから、ハイキングを含めた旅仕様にアップデートされていました。

それまで大型パックにしか装備されていなかった背面長調節機能が採用されたことは、特に魅力でした。

美しく、スマートに荷物を収納できる機能

そして私が道具選びにおいて、シンプルさよりもユニークさを重視するようになったのが、このバックパックを背負いはじめてからのことです。

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO

エクリプス32は、ストレートジャケットの間のフロントパネルを全開できる、パネルローディングタイプ。

スーツケースのように収納した荷物を見渡せ、迷うことなく使いたいものが取り出せます。そしてパッキングが下手でもサイドパネルが荷物の揺れを抑え、パッキングの凸凹も目立たなくしてくれます。

そもそも荷物を見渡せるので、よっぽどの整理ベタでもない限り、きちんとパッキングができてしまうんです。

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO

軽さを求めたシンプルなパックの多くが採用する、袋状のトップローディングタイプでは、そうはいきません。

ストレートジャケットは、パッキングが下手でも、誰でも美しく、スマートに見せてくれる包容力があります。

パック自体の形状はぼってりとしていて、決して美しく、スマートとは思えませんが、しかしユニークで個性的です。フツーじゃないんです。きっと、軽さを求めてデザインをしていたら、浮かばなかったアイデアだと思います。

しかしフツーじゃないデザインが災いしたのか、ウルトラライトの波が強かったからか、間もなく、エクリプス、そしてストレートジャケットはオスプレーのカタログからなくなりました。でも、バックパック史上唯一無二の機能とデザインは、今でも斬新です。

「メンテナンス=手入れ」は思い入れと比例して、道具が持つ力を高める

オスプレー/エクリプス32

撮影:PONCHO

あれから20年余り。ずっとこれひとつを背負ってきた訳ではありません。

振り返れば、容量30~50ℓのバックパック10モデルを使ってきました。でも、それらのほとんどは、10年持たずに劣化したり、壊れてしまいました。

20年持ったエクリプス32以外では、同じくオスプレーの『ヘリオス20』が23年、グレゴリーの軽量パックも15年経ちましたがもうギリギリ。他、10年使っているパックはあとひとつだけ。使えなくなったバックパックはすべて軽量化をウリにしたモデル。やはりそれらは耐久性が課題です。

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