長く使うためには自分で修理
「かなり懐かしいのを背負ってますね!」
「私も以前は背負ってました。でも経年劣化して、もう随分前に手放しました」
使いはじめて15年を越えたエクリプス32を背負って山旅していると、そんなことを言われるようになりました。
今から5~6年前なら、まだエクリプス32を背負っているハイカーを目にしたけれど、最近はまるで見かけません。
2000年頃に発売されたバックパックは、10~15年も経つといろいろなところにダメージが出てきたのでしょう。私のエクリプス32も、そうでした。
サイドポケットのゴムが伸びてしまい、しばらく安全ピンで短く留めて使っていましたが、つい最近ゴムを入れて伸縮性を復活させました。
オスプレーの輸入元のロストアローに聞いてみると、発売から8年が経ったバックパックは、経年劣化で生地の強度が落ちるため、修理不能と判断される可能性があるそうです。
それならば、自分で修理して使い続けるしかありません。
ポケットの伸縮性を取り戻したエクリプス32は、不思議なくらいに背負う気分が一新しました。
背負い心地にはなにも関係していない箇所の修理なのに、背負い心地が変わったように思えるから不思議です。気分の問題なんだとは思いますが、修理前とは違う感覚なのは、間違いありません。
でも、もしかしたら人間の感覚はとても鋭敏なので、小さな変化を捉えることができるのかもしれません。
カスタムすることでさらに愛着が湧く
私が’99年頃に発売された、ストレートジャケットを装備したオスプレーの小型パック『ヘリオス20』も現役で使っているというの前述の通り。
日常使い用で、デイパックのようにウエストベルトを外して使っています。あるとき、外したそのウエストベルトを押し入れで見つけ、エクリプス32のウエストベルトと同じ構造だと気が付きました。それはエクリプス32よりも薄く、運動性に長けたもの。
そこで試しに付け替えてみると、背負い心地が大幅にアップ! 以来、ヘリオス20のウエストベルトをエクリプス32に装着して使うことにしました。またショルダーやウエストベルトにポケットを装備していないので、ショルダーベルトポーチやフロントバッグも追加装着して、使い勝手を上げています。
そうして自分なりに修理やカスタムをすると、道具への思い入れが深まるのは、よくあること。このパックもそうです。
メンテナンスのことを、日本語では「手入れ」と表現しますが、道具は使う人が手を入れることで、思い入れと比例するように道具が持つ力が増すのではないかとも感じています。だから手入れは、大事なんだと思います。
そして、道具を想う。長いトモダチと新しいモノと
私がバックパッキングに出合った’90年代中頃、雑誌で見かけた某バックパッカーは、15年背負ったというザ・ノース・フェイスの大型パック、グラミチのショーツにパタゴニアのキャプリーンのタイツを合わせ、シューズはナイキACGのローカットシューズを履いていました。
古いモノでもそのよさを理解し、長く付き合う道具への想いがあって、しかし新しい考えを積極的に取り入れる柔軟性を持ったスタイルで、カッコいいと思いました。
そしていつか私も、長く使った道具と新しい道具とをバランスよく活用できるバックパッカーになりたいと思いました。
初めて揃えたバックパッキングの道具が、完璧だったなんてことは、まず、ありえないことなのだ。自分で判断してよい道具が選べるようになるためには、やっぱり時間と経験が必要なんだ。ましてや、自分自身の個人的な要求や好みにあったものが、どんなものかをわかるようになるには・・・・・・。

エクリプス32なら、肩が痛くなったらそろそろ休憩。キレイにパッキングできないのは、装備を欲張り過ぎ。パックが揺れだしたら、急ぎすぎ……などなど。長く旅を共にしたトモダチのような道具だからこその会話です。
新しい道具とだって、会話はできます。でも付き合いが短いがゆえに、加減がわからなくてご機嫌を損ねることもある。だから旅道具、山道具が新しいモノばかりのうちは、苦労するのです。だから新しい道具を多く使う山旅では、長いトモダチのエクリプス32にそれらを収納して、バランスを取って旅するのです。
それでは皆さん、よい山旅を!