チタン、深型、小型クッカーだけが正解ではないんです!
デイハイク、山小屋泊、テント泊登山で、食事をする際にあると便利、いやマストアイテムといえるのが、クッカーとストーブ。今回は、そのクッカーの話です。
クッカーは、中にストーブや燃料、カトラリーを収納しやすい軽量コンパクトな深型が主流。アルミ製よりチタン製の方が軽くて人気です。フリーズドライや即席麺、コーヒーやお茶を飲むための湯沸かしがメインなら、それが正解です。
素早く湯沸かししたいなら高効率ストーブ
また、ジェットボイルやMSRのウィンドバーナーといったクッカー一体型で熱効率のよいストーブという選択肢もあり。深型クッカーよりも重量はありますが、素早く湯を沸かせ、高所でなかなか湯が沸かないストレスを軽減できるでしょう。
山の食事は簡単でいい。お湯を注ぐだけですぐに食べられるものがいい。そういうハイカー、そういう状況であれば、高効率ストーブに限ります。
でも、深さのあるクッカーは調理がしにくい……
もし山の気持いい場所で、あたたかくて美味しい料理をつくって食べたいと思ったら、深型クッカー、高効率ストーブのどちらも、調理がとてもしにくい……。どちらも深さがあるので、山用の短い箸やカトラリーで調理をしようとすると、縁に手が当たって、ヤケドの危険性も高いんです。
そこで活躍するのが浅型クッカー
浅く、広口なので、とにかく調理がしやすい。それにストーブの火が当たる底面積が広いので、深型に比べて燃料のロスが少ない。材料にも熱が入りやすいので、失敗も少ない。それに深型クッカーと比べると重心が低く、ストーブのゴトクの上での安定性が高いので、調理中に倒したり、ゴトクから落下させてしまう心配もありません。
だから湯沸かしだけでなく、山で調理もしたいハイカーが選ぶべきクッカーは浅型なのです!
山に持って行きたくなる!おすすめの浅型クッカーはこの3モデル
①トランギア/ツンドラ3ミニ ブラックバージョン
②スノーピーク/ヤエン クッカー 1000
浅型、調理しやすい広口ながら軽量。クッカーとフライパン、フタ、ハンドルのセットです。フタには湯切り穴、クッカーには湯切り口が備わり、焦げつき防止のフッ素加工が施され、手の込んだ料理も問題なくこなせそうな仕様。
③MSR/セラミック2ポットセット
パッキング時の要!スタッキング性能は?
カセットボンベ(CB缶)を使用するストーブ「ソト/レギュレーターストーブ ST-310」と、アウトドア缶(OD缶)を使用するシングルバーナー「ソト/マイクロレギュレーターストーブ SOD-300S(以下、シングルバーナー)」を用いて、スタッキングのしやすさをチェックしました。
①「ツンドラ3ミニ」は小さいけれど、ストーブ&ガス缶収納可能!
今回集めたクッカーのなかで「トランギア/ツンドラ3ミニ」はもっともコンパクトですが、収納サイズがやや大きめの「レギュレーターストーブ ST-310」の本体を、内部に収納できました。でも、ハンドルを入れるとフタがやや浮きます……。
シングルバーナーの場合は、一番小さいガス缶であるパワーガス105(以下、105缶)も一緒に収納できます。
ちなみに「トランギア/ケトル0.6ℓ」も収まり、ケトルのなかにはシングルバーナーとハンドルも入れられるので、2人以上の山メシづくりで、かなり使い勝手がよくなります。
②「ヤエンクッカー1000」は、フタを下に置いて専用袋に入れると収納力アップ
「スノーピーク/ヤエンクッカー1000」は、105缶を収納してフタをすると、浮いてしまうのが欠点……なのですが、フタをクッカーの下に敷いて、フライパンをクッカーに載せてスタッキングすると高さが出て、収納性アップ! このまま専用収納袋に入れられます。
同様の方法で、「レギュレーターストーブ ST-310」本体の他にカトラリーやフォールディングお玉も収納可能。
シングルバーナーでなら、105缶、その上にシェラカップを載せて収納できます。これは贅沢ソロメシセットになりそう!
「ケトル0.6ℓ」も入るので、こちらもケトル内にシングルバーナーを入れて2人用山メシ充実セットの完成です。
もしかしたら、「ヤエンクッカー1000」に「トランギア/ツンドラ3ミニ」が入るのではないかと思い試してみたら、ぴったり!2人以上のハイク時の食事で、火に掛けられる食器として「ツンドラ3ミニ」を併用するのもいいかもしれません!
③「セラミック2ポットセット」は、他の浅型クッカーとスタッキングするのもあり!
「MSR/セラミック2ポットセット」はクッカーサイズが大きめなので、「レギュレーターストーブ ST-310」を収納してもかなり余裕です。
シングルなバーナーと、105缶より大きな250缶も一緒に収納できます。2人での縦走や、料理充実ハイクに持って行きたくなる大きさです。
「トランギア/ツンドラ3ミニ」のフライパンを小クッカーの底に合わせてみると、これがぴったり! このまま大クッカー内に収納できました。MSRにはフライパンがセットされていないので、この組み合わせはありです!!
また、「スノーピーク/ヤエンクッカー」に「トランギア/ツンドラ3ミニ」が入るなら、同じく広口の「セラミック2ポットセット」の大クッカーにも入るのではと思ったら、余裕で収納できました。ちょっと隙間があるので、保護布を敷けば問題なし!
調理時の安定感はどうだろう?
①「ツンドラ3ミニ」は、小型ストーブとの相性よし!
「トランギア/ツンドラ3ミニ」のクッカーの直径は約15cm。底面はそれよりやや小さめです。3種類のストーブいずれも安定感あり。ハンドルを外して火に掛けられるので、バランスもいいです。
②「ヤエンクッカー1000」も、小型ストーブで調理しやすい!
クッカーの底の直径約14cmの「スノーピーク/ヤエンクッカー1000」。小型ストーブのいずれも安定して調理可能です。
③「セラミック2ポットセット」は、ゴトク径の小さなストーブだと少し不安
容量2.5リットルの大クッカーは、その容量の割に直径は抑えられた17.4cm。ゴトク上に載せても不安定さは感じないけれど、アミカス(左下)のように径が小さなストーブだと中心を取るのに、少し心配を感じる部分もあります。でも、慣れれば問題なし!
湯沸かしは、どれが一番速いのか?
クッカーにフタをして、水500mlが沸騰するまでの時間を計測しました。ストーブは「ソト/マイクロレギュレーターストーブSOD-300S」を最大火力にて使用。
①「ツンドラ3ミニ」は、2分58秒10
②「ヤエンクッカー1000」は、2分49秒32
③「セラミック2ポットセット」は、2分26秒98
早くおいしく炊飯できるのは? アルファー米を炊いてみた!
お湯を入れて戻すアルファー米。実は、水を入れてクッカーで炊いてもいいんです! その方がお湯を入れて戻すより早く炊けます。
そこで、3つのクッカーで違いが出るか、試してみました。量は1合、水は倍量の2合。火に掛けてスプーンでかき混ぜ、重さを感じたら火を止め、3分程蒸らしました。
①「ツンドラ3ミニ」は、ちょっと時間が掛かりました

②「ヤエンクッカー1000」は、おいしく炊けました!

③「セラミック2ポットセット」は、ちょっとやわらかめ
セラミック2ポットセットは、クッカーの大きさに対して米の量が少なかったのか、私が早めに混ぜるのを止めてしまったからか、ちょっとやわらかめ。でも焦げつき防止のコーティングの性能は高く、張りつきもまったくなし。焼き物の調理時にも期待できます! 火にかけた時間は約4分くらい。
焦げつきにくいのは? 油なし、少量の水で目玉焼きづくり!
今回集めたクッカーは、それぞれ焦げつき防止加工が施されています。その性能の違いを知りたくて、油の代わりに少量の水を入れて目玉焼きをつくって、焦げ加減を検証してみました!
①「ツンドラ3ミニ」は、ちょっと注意が必要
ちょっとだけフタを取るタイミングが遅かったせいで、焦げが出てしまいました……。
フライ返しで焦げをこそぎ落とし、お湯を入れてペーパーで少し擦ったら、焦げはほとんどなくなりました。
ですが、フライパンはかなり薄いアルミ素材なので、焼き物、炒めものをする際には、ちょっと注意が必要です。また、火にかけたままハンドルを握っていると熱くなってくるので、ハンドルを放して冷やしたり、手ぬぐいなどを持って握る必要があります。
②「ヤエンクッカー1000」は、うれしい焦げつかなさ
こちらも一瞬、タイミングが遅かったのか、ちょっと焦げ発生。
でも、お湯を入れてペーパーで拭き取るとこの通り! これくらいの焦げつき防止性能があれば、安心して調理ができます!
③「セラミック2ポットセット」は、次元の違う高性能を誇る
「セラミック2ポットセット」は、、小クッカーにフタをして目玉焼きを調理。フライ返しで目玉焼きをはがすと、かなりすんなりとはがれました。
そして、ペーパーで拭き取ると、何事もなかったようにスッキリ! 家庭用の鍋かと思うくらいに完璧な性能です。
山メシの定番、カレーをつくったらどうなるのだろうか?
ご飯を炊いて、目玉焼きもつくったので、ささっとカレーもつくってみることにしました。刻んだ野菜を炒めて、水を入れて煮込み、カレールーを入れて、トッピングだけ変えてみました。火力調整が難しい煮込み料理、さて結果は?
①「ツンドラ3ミニ」は、火加減弱めで!
クッカーが薄手なので、焦げつかないように中火~弱火で調理。それでも1人分のカレーがわずか15分で完成。火加減を弱めにすれば、焦げつかず、問題なく美味しく調理ができることがわかりました!
②「ヤエンクッカー1000」は、深さと広さのバランスよし!
野菜を炒め、煮込みながらかき混ぜてわかったのは、「ヤエンクッカー1000」は、山用スプーンやフォークで調理がしやすい形状だということ。火にかけたままでもハンドルが熱くならず、安心です。焦げつきにくいフライパンでベーコンを焼いて、チーズをのせてフタをして1分。ベーコンチーズカレーが美味くできました!
③「セラミック2ポットセット」は、ほぼ家感覚で調理可能
目玉焼きテストで焦げつかないことがわかったので、バターでチキンを炒めて、野菜を入れて煮込み、仕上げにミックスナッツとパセリをあしらってみました。自宅で調理する時と変わらず調理ができる安心から、調理のアイデアがふくらみます!
甲乙つけがたい!目的に応じて選んでみて
今回取り上げた浅型クッカー3モデルは、深型クッカーと比べれば、いずれもかなり調理がしやすいと感じるものでした。
最後に、実際に使ってみて感じた印象をまとめておきます!
①「トランギア/ツンドラ3ミニブラックバージョン」は、湯沸かし+ちょい料理
薄手のアルミ製ゆえに、強火で調理をすると焦げつきます。特に集中炎のストーブは注意が必要。でも火加減を調節しながら調理することに慣れれば、問題ありません。
クッカー2つ、フライパンのセットで364gという軽さは、調理好きの強い味方になってくれそうです。収納袋も標準装備されています。
トランギア/ツンドラ3ミニブラックバージョンの詳細はこちら
②「スノーピーク/ヤエンクッカー1000」は、ソロ山メシの定番決定!
ストレスなく山で調理がしたいなら、このクッカーくらいの大きさがちょうどよいと感じました。フライパンもソロ~2人分の調理をするならなんとかなる大きさ。
使いやすさに納得して、私は購入しました。寒い時期の山で、ひとり鍋するにもぴったりです。収納袋も標準装備しています。
スノーピーク/ヤエンクッカー1000の詳細はこちら
③「MSR/セラミック2ポットセット」は、カップル&少人数料理にいいです!
ソロで使うなら、同セラミックシリーズのセラミックソロポットがよさそうです。でも、2~3人用で、友人やパートナー、子供の分の調理もするなら、このセットの性能を越えるクッカーはなかなか見当たらないでしょう。
フライパンは付いていませんが、別売であります。でもクッカー自体が広口なので、深さのあるフライパンとしても使えます。収納袋は付いていません。