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天然素材が見直される今こそ着たい、ウールの『エベレストセータ』|定番道具のモノ語り#8(2ページ目)

固定観念は、山の楽しみ方の幅を狭くする

エベレストセーを着て山を歩く筆者

撮影:PONCHO

フリースの軽量性、保温性の高さを、それまで雑誌などでたくさん書いてきて、天然素材よりも化繊の方がアウトドアでは機能的であるように喧伝していましたが、実はウールのセーターを着てハイキングをしたことがなかったのです。

当時の私は今よりももっと新しモノ好きで、ウールなんて時代遅れ、山シャツやセーターを着るのはオジサンくさいなどと思い込んでいました。今、振り返ると、反省しかありません……。

手袋を装着

撮影:PONCHO

果たして、いざウールのセーターを着て山を歩いてみれば、機能的にも充分、気分的に実に心地よいものでした。

新しければよいモノで、古いモノはイマイチという固定観念は、楽しみ方の幅を狭めることを、この『エベレストセーター』に教わりました。

アウトドアウエア特有の派手なカラーとは真逆の自然な色合いは、ゆっくりと山を味わうのにちょうどよいものでした。フリースと比較すれば吸湿速乾性は劣りますが、使用する状況を間違わなければ、ウールのセーターでも問題ない。いやむしろ低山ハイクでは、普段着的な肩の力の抜けた感じが、ぴったりでした。

セーターを着て低山ハイク
間もなく、私はトレイルランニングやファストパッキングのような、より運動性の高い山のアクティビティに傾倒していったので、この『エベレストセーター』を着てハイキングすることがなくなりました。

でも、年齢もまさにオジサンになり、山の楽しみ方が若い頃に比べてさらに多様になったことで、そして地球環境への負荷が少ないウールを見直したいと考えるようになり、この冬、そしてまだ寒い春の山で『エベレストセーター』を再び着ています。

ただのセーターではなく、山に合ったセーター

山仕様のセーター

撮影:PONCHO

『エベレストセーター』は、スコットランド北部の厳しい自然環境で着続けられたシェットランドセーターをベースに、エドモンド・ヒラリー卿からの要望を具現化しているので、山仕様のセーターになっています。

一本の糸を首元のリブから編みはじめ、肩、袖、胴、裾と縫い目をなくしたフルシームレス仕上げになっています。袖と胴は編む方向を変え、だから動きやすく、身体をやさしく包み込むような着心地と保温性を備えています。

縫い目が無いセーター

撮影:PONCHO

脇下のアームホールを見れば、フルシームレス仕上げならではの、編む方向を袖から胴体に流れるように編んでいることがわかります。袖と胴体を別々に編んでいると、この脇下に縫い目ができるのです。でも、『エベレストセーター』は縫い目がありません。

着心地は、フリースよりも格段に上

着心地が良いもの

撮影:PONCHO

丸めると、フリースジャケットよりもコンパクトです。Mサイズ相当のこのセーターの重量は310g。ちなみにパタゴニアのR1プルオーバーが332gです。運動性、吸湿速乾性はR1の方が上です。でも手持ちのR1とこの『エベレストセーター』の着心地を比べると、軽さを感じるのは『エベレストセーター』の方です。

ストレスがなく、着ているというより、羽織っている感覚。これは、ざっくりと編まれているからこその着心地の軽さなのではないかと、想像しています。

レトロなスタイルが流行っている今、セーターもありです!

セーターを着ている筆者

撮影:PONCHO

90年代的な、ちょっとレトロを感じるアウトドアファッションが流行っている現在、それをさらに飛び越えて、ウールのセーター+チェックの山シャツスタイルで、山歩きをしてみるのもいいかもしれません!

その際注意したいのが、合わせるシャツの素材。コットン製ではなく、ウールや吸汗速乾性を持った化繊混紡のシャツを選んで、汗冷えで体調不良にならないようにしてください。

選ぶべきセーターは、もちろん『エベレストセーター』です。久しぶりにこのセーターを着直した私も着心地のよさ、動きやすさに改めて驚きましたが、これまでセーターを着て山歩きをしたことがない人は、きっと新鮮な気分で山を楽しめると思います。

しかし残念ながら、『エベレストセーター』は編み手の高齢化で2016年で生産終了してしまったそうです。残っていた在庫を一部店舗で少しだけ販売している他は、フリマアプリ等で販売されている古着を見つけるしかないようです。旧き良きモノは、買って応援しないと、二度と手に入らないものになってしまうんですね……。稀少な『エベレストセーター』、是非見つけてください!

それでは皆さん、よい山旅を!

Anderson & Co

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