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フリース・ウエアには、高山仕様と街向けあり。その違いは?

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登山の行動着、保温着として欠かせないアイテムのフリース・ウエア。でもよく調べてみると、アウトドア企業のフリースウエアは、「テクニカルフリース」と「カジュアルフリース」の2つに分かれています。
テクニカルフリースは、保温性に加えて通気性、速乾性、伸縮性、軽量性、耐久性、コンパクト性等、寒い季節の山での行動に求められる機能を網羅して装備。ハイエンドモデルなら、本格的なアルパイン・クライミングにも対応しています。
冬の低山なら、カジュアルフリースだって問題ない……はず

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一方のカジュアルフリースは、昔ながらのフリースウエアといった趣。保温性、速乾性を備え、着心地のよさも充分。伸縮性や軽量性、コンパクト性は重視されていませんが、街から里山や低山をフィールドとした、ソフトなアウトドア・アクティビティ向きに作られています。
しかし、そもそもフリースウエアは、1970年代に以前に多くのクライマーが愛用していたウール素材のウエアに代わるものとして、ハードな山岳環境下でも機能するように開発されたものです。

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だから、カジュアルフリースとはいえ、アウトドアブランドのフリースウエアであれば、フィット感もよく、冬の高山などハードなシーンでなければ、アウトドアの使用に対応したものといえるでしょう。
「でも、本当?」 「街で着ているフリース・ジャケットで、山に登れるの?」という声もよく聞くことから、気温0度、小雪の舞う筑波山でテストをしてきました。
使用したのは、パタゴニアの『メンズ・レトロ・パイル・ジャケット』と『メンズ・クラシック・レトロX・ベスト』です。(テスト実施は2021年冬)
そもそもフリースって、どんなウエア?

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さて、テスト結果の前に、もう少しフリースウエアについて深掘り。どんなウエアなのかを解説しましょう。
フリースウエアの開発を最初に手掛けたのは、アウトドア企業の<パタゴニア>です。創業者のイヴォン・シュイナードは、山岳地帯でなにをどう着るべきかという問題について考えていました。
1977年、北大西洋の漁師が着ていたパイルセーターにヒントを得た、水を含まず、濡れても保温性があるポリエステルを素材とした『パイルジャケット』がはじまりです。
しかし、当時のパイル素材は毛玉ができやすいという問題点がありました。

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その問題を解決したのが、1979年に開発された『バンティング』、そして1985年に登場した『シンチラ・フリース』です。
『シンチラ』は毛玉のできにくい両面起毛の素材で、それまで保温着の定番だったウールやパイル素材以上に肌ざわりがよく、まさに万能保温ウェアといえます。
間もなく、パタゴニアに限らず、多くのアウトドアメーカー、そしてファッションメーカーがフリース・ウエアを発売。世界中の人の定番保温ウエアとなりました。
石油由来の素材からリサイクル素材へ

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1993年には、パタゴニアは廃棄されたペットボトルをリサイクルした『シンチラ』を開発・販売。紙や電気の使用量を減らしたり、リサイクル素材からウェアを作ったりするだけでなく、環境の理念を掲げ外の世界に出ていき、環境問題の解決に努力しています。
近年のパタゴニアのフリース製品を見ると、多くが“リサイクル・ポリエステル”をベースにつくられ、それはハイスペックなテクニカルフリースにも使用されています。
ちなみに今回テストで使用したパタゴニア『メンズ・レトロ・パイル・ジャケット』は、リサイクル・ポリエステル100%、『メンズ・クラシック・レトロX・ベスト』は、同50%を使用しています。
さて、次は冬の低山でのテスト結果について!
『レトロ・パイル・ジャケット』には、カジュアルさを越えた機能性あり

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メンズ・レトロ・パイル・ジャケット
先に解説した、パタゴニアのフリースウエアの原点が『パイルジャケット』。その現代版が、この『レトロ・パイル・ジャケット』です。しっかりめの厚さと両面起毛された素材は、袖を通すと、その保温性の高さにすぐに気がつきます。
パイル状でも動きやすい

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商品名の通り、モコモコとしたパイル状のフリースなので、着心地はゴワゴワしているのかと思いきや、とてもソフト。このソフトな着心地は、そのまま動きやすさにつながっています。低山ハイキングレベルの運動であれば、充分な着心地です。

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フィット感は、パタゴニアではレギュラーフィットに分類されています。中肉中背の筆者にとっては、適度なフィット感でした。生地に少しだけ伸縮性があり、また腕まわりは動かしやすいラグランスリーブを採用。上半身を大きく動かしても、変なツッパリは感じません。

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カラダにフィットしていないフリースジャケットだと、バックパックを背負った時にゴワつく背中側も、程よくフィット。いわゆる本当のカジュアルフリースだと、ココにゴワつきやヨレが出て、長時間のハイク時にストレスを感じたりしますが、これは問題なし!
カジュアルフリースゆえの仕様もあり

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ハンドポケットは身頃下部の左右に2つ。位置は、バックパックのウエストベルトと干渉します。この辺が、カジュアルフリースに分類される理由でしょう。しかし下1/3が重なる程度なので、ポケットがまったく使えないという状態ではありません。

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フロントジッパーの内側に、風の侵入を防ぐフラップはなし。また顎下へのジッパーの当たり抑えるガレージと呼ぶフラップもなし。例えば氷点下で着用する場合には、ネックウォーマーを装着して、冷たさから保護する必要がありそうです。
旧モデルで問題となった毛抜けも改善されている模様

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今回は、3~4時間着用してハイクをしました。このパイルジャケット、日本に入荷した2019年製の製品では一部にフリース繊維が抜けやすいものがあったようですが、2020年以降のモデルでは毛抜けのひどさは感じませんでした。
ショルダーベルトにほんの少し抜けた毛が付いていましたが、それくらいは最初の着用の際には、あるだろうと思えるレベルです。
アウターシェルとの相性もよし!

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カラダのラインにフィットしたデザインなので、アウターシェルを上からレイヤリングしてもゴワつかず、動きを邪魔する感じはありません。アウターシェル自体が細身だと、パイルジャケットに厚みがあるので窮屈さが出るかもしれませんが、それはアウターシェルの問題。
途中、少し風が吹いている場所でアウターシェルを重ねると、温かさはさらに増し、気温0度でも冷えを感じることはありませんでした。
普段使いもできて、山でも有効。コレは欲しい!

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テスト前は、パイル状の起毛素材で動きにくいのでは?と思っていましたが、実際に着用して山を登ってみると、マイナス面はほとんど感じられず、スムーズに動けました。デザインもテクニカルフリースのようにスポーティではないので、街着でも浮くことはなく、活躍の場が多いフリースジャケットでしょう。

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テスト当日は、小雪も混じる天候。厚手のウール素材のインナーシャツにこの『レトロ・パイル・ジャケット』をレイヤリングしただけで、寒さを感じることもなし。秋、冬、そして早春の低山にちょうどよい保温着です。
価格は約2万円と、フリース・ジャケットとしては高価ですが、街でも低山でも使え、着心地もよし! このジャケット、欲しくなりました。
