アイキャッチ画像:ポンチョ
えっ、まだ9年しか着ていなかったの?

使うほどに、そのよさがわかってくる道具、ウエアと時々出合います。今回紹介する、パタゴニア/フーディニ・ジャケットが、まさにソレです。
2002年に前身モデルのドラゴンフライ・ジャケットを発売。そして2004年からフーディニ・ジャケットへとリニューアル。以来、ハイカーはもちろん、一気に人口が増えたトレイルランナー、さらにはクライマーやサイクリストからも指示を得て、パタゴニア史上最高傑作と称されているウィンドシェルです。

私は2015年以前にこのフーディニ・ジャケットを購入したように思っていましたが、タグを確認してみると2016年でした。登山、ランニング、サイクリング、さらには旅行や日常着として、あまりにも頻繁に着用していたので、もっと長期間愛用していたように感じていました。
私自身は9年しか使っていないフーディニ・ジャケットですが、パタゴニアでは20年以上ラインナップされている、まさに定番アイテムです。発売当初から完成度が高く、取り除くものがほとんどないデザインの為、変更は微細ですが進化し続けています。
例えば現行品は、素材がリサイクルナイロン100%、PFAS不使用のDAR加工、エアトレード・サーティファイドの工場で製造されるなど、アウトドア業界のなかで環境に配慮したモノづくりをリードする同社ならではのアップデートは色々と施されています。
耐風性を重視、通気しない素材を採用

その素材では、2011年に大きな変更がありました。それまで耐風性に加えて通気性を装備していましたが、ほぼ通気しない素材に。軽量コンパクトでしなやかな極薄素材であっても、冷風をしっかり抑えることを重視したそうです。
ところで通気性がないとウエア内はムレます。一方で、保温性は上がるので、通気性の高いウエアよりも冷えや寒さから身体を守ることができます。フーディニ・ジャケットのようなウィンドシェルを着用するのは、冷たい風を受けて身体が冷えを感じたときです。

だから通気性がなく保温性を持ったこのジャケットは、袖を通してフロントジッパーを上げると、さらに寒ければフードを被れば、薄い被膜のようなウエアながら、温かさを感じて、寒さに負けず前進する意欲をサポートしてくれるのです。
トレイルランニング等、心拍数が高く、汗をかなりかくアクティビティで使用して、暑かったり、ムレを感じたら、フロントジッパーを開ければかなり改善します。さらに暑ければ、サッと脱いで、バックパックのサイドポケット等に丸めて収納してしまえばよいのです。レインウエアとは異なり、暑くても着続けなければならない、理由はありません。
だから通気性はなくても、特段問題はないのです。

それでも通気性を重視。できる限り着っぱなしでいたいなら、パタゴニアでは耐風性と通気性、速乾性のバランスを備えたエアシェッド・プロ・プルオーバーが用意されているので、そちらを選ぶとよいです。着用する人によって体感温度は異なりますが、私の場合は、気温が10℃以下の春、秋のトレイルランニングで、エアシェッド・プロ・プルオーバーを着ています。
でも、心拍数を上げず、冷えを防ぐために汗も抑える必要のある寒冷期の登山では、最小の防寒着として、フーディニ・ジャケットが有効です。上の写真のように、フーディーのような中間着にレイヤリングすれば、気温が5℃近くでも適温を維持。幅広い期間、活躍してくれます。
シンプルさとソフトさが際立った一着

ところで、フーディニ・ジャケットや前回の「定番道具のモノ語り」で取り上げたモンテイン/ライトスピードジャケットの登場以来、同様の極薄ウィンドシェルを多くのブランドが開発しています。
例えば、モンベル/EXライトウインド パーカは56gで、フーディニ・ジャケットの約半分の軽さを誇っています。私はロードランニング用にEXライトウインド ジャケットも使っていて、半透明で透け透けの素材は、レース出場時にゼッケンが見えるので、重宝しています。反面、ツルツルして光沢のある素材感が、もう少し抑えられていたらよいのにと感じています。

その点で、フーディニ・ジャケットはリップストップナイロン製ながら、マットな色味とソフトな風合いが特長です。この素材感は、ウルトラライトなウィンドシェルのなかでは希少。それが、私が街から山まで、全方位で愛用している理由のひとつです。
空気のような軽さ、絶妙な動きやすさ

ソフトな素材は、着心地をよくしています。普通に着用したときに、ガサガサしません。汗に濡れても、ペタッと肌にはりつく感じが少ないです。
さらに素材の薄さは、フードをかぶった際に機能します。レインウエアのフードのように、周囲の音が聞こえにくくなることがありません。だから、レインウエアをウィンドシェル代わりに着るよりも、100gちょっとを装備にプラスして、ウィンドシェルを、そしてフーディニ・ジャケットを着るのです。

それに重量同様に着心地も軽く、シルエット、フィット感のよさから、大きく激しく動きても突っ張るところがほとんどないのです。「羽織る」という言葉、感じの通りの、フンワリとした絶妙な着心地です。
そしてその着心地は、動きやすさへと繋がっています。ストレッチ素材でなくても、身体のライン、動きにフィットしていれば、違和感なく、着て、動けるのです。
「よくできているなぁ」と、その完成度の高さに、着る度に感心しています。
シンプルだけれども適切な機能

とはいえウィンドシェルは、軽さを求めて、素材を薄くするだけでなく、機能を省略しがちです。
例えば、フードの調節機能。顔まわりにストレッチ素材を配して頭部にはなにもないモデルが案外多くあります。でも、季節によって被る帽子は変わり、風が強く吹いてきたら、フードのフィット感を変えて対応したいものです。
その点で、フーディニ・ジャケットは抜かりありません。鉢巻上にストレッチコードが配され、コードロックによって調節可能です。

裾もストレッチコードでフィット感を上げるモデルが多いのですが、フーディニ・ジャケットはフード同様にストレッチコード+コードロックで細かな調節ができます。
このフィット感の調節は、風の進入を防ぐだけでなく、ユルめてムレを排出することでも使えます。また背中が出ないようにラウンドしたシルエットは、フィット感を上げることで防寒性を高めてくれます。

袖口もストレッチコードだったり、伸縮素材不採用なモデルがある中で、フーディニ・ジャケットは、その中間。手首内側がギャザー、甲側が伸縮素材不採用で、フィット感を上げながら、軽量化を試みています。
この仕様により、袖をたくし上げやすく、グローブをした際にはフィット感を得られます。実によく考えられていて、細かなギミックに、パタゴニアらしさが感じられます。
私が「フーディニ・ジャケットが好きだなぁ」と思うのは、単に軽さだけを求めたウエアではないことがわかる、必要最低限でありながら、機能的なこれらの調節機能の装備にあります。
どこへ行くときにも、必携必着

ウィンドシェルは、軽いだけがその特長ではありません。近年は素材の進化によって、100g程度のレインジャケットが登場。ウィンドシェルの存在意義が怪しくなってきているという意見もあります。防水性があり、耐風性、軽量性を備えているのであれば、軽量なレインジャケット1枚で、どんなシーンにも対応できるからです。

でも、防水透湿膜のメンブレンを薄い生地で挟んだ素材は、薄く、軽くなったとしても、着心地の軽快さ、しなやかさに劣ります。かなりソフトになっていることは間違いありませんが、それでもウィンドシェルの方が軽く、しなやかです。そしてフーディニ・ジャケットは、その着心地のよさに秀でた一着。
そしてシンプルというのは、過不足なく、ちょうどいいこと。だから選ぶ、だから着たくなる。フーディニ・ジャケットは、そんなことを教えてくれるウエアです。
それでは皆さん、よい山旅を!
現行モデルはこちら
パタゴニア メンズ・フーディニ・ジャケット
サイズ | XS~XXL |
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重さ | 105 g (3.7 oz) |
素材 | 1.2オンス・リサイクル・ナイロン100%のリップストップ。有機フッ素化合物(PFC/PFAS)不使用のDWR(耐久性撥水)加工済み。無地はブルーサインの認証済み。フェアトレード・サーティファイドの工場で製造 |
現行のメンズ・フーディニ・ジャケットも、マットなカラーやソフトな着心地は変わりません。
パタゴニア ウィメンズ・フーディニ・ジャケット
サイズ | XXS~XL |
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重さ | 96 g (3.4 oz) |
素材 | 1.2オンス・リサイクル・ナイロン100%のリップストップ。有機フッ素化合物(PFC/PFAS)不使用のDWR(耐久性撥水)加工済み。無地はブルーサインの認証済み。フェアトレード・サーティファイドの工場で製造 |
ウィメンズ・フーディニ・ジャケットは、このStormy Mauveを含めて全6色展開。カラーの豊富さも魅力です。