ナチュラル系 トレッキングブーツ

足指を自由に動かせるってキモチいい!ナチュラル系「トレッキングブーツ」レビュー

カカトとつま先の高さの差が少なく、足指を自由に動かせるワイドで自然な形状。足が持つチカラを引き出すナチュラル系トレッキングブーツが、最近増えています。裸足感覚でありながら山でケガをしないためのサポート機能、防水透湿機能を装備したミッドカットモデル3足をフィールドで試してみました!

目次

アイキャッチ画像:PONCHO

足が本来持つチカラを引き出す“ナチュラル系”トレッキングブーツ

登山靴

撮影:PONCHO

登山中に、ランニング用のサンダルで走るランナーを見かけたことはありませんか?

あれは2009年に発売されアメリカでベストセラーとなった書籍『BORN TO RUN』に登場する、古タイヤの切れ端に紐を通した簡素なサンダルでトレイルレースを走るメキシコのタラウマラ族に影響を受けたもの。

「barefoot=裸足に近いスタイルで走る方が、足が本来備えている力を発揮でき、さらにはケガを予防できるとする考え」に基づいて作られた、いわゆるベアフットサンダルです。

間もなく、裸足感覚を残しつつ、岩や木に足をぶつけてケガをしないようなベアフットシューズが登場し、多くのトレイルランナーが愛用。さらに近年はトレッキングブーツにも、足を最低限サポートしながら裸足感覚で足指を動かせるモデルが登場してきています。

そんな自然な足の動きを可能にするトレッキングブーツが、“ナチュラル系”トレッキングブーツです。

一般的なトレッキングブーツとはココが違う!

登山者

撮影:PONCHO
ナチュラル系トレッキングブーツと一般的なトレッキングブーツの違いは大きく3つ。

 

①ドロップが低い

カカトとつま先の高さの差を「ドロップ」と呼びます。一般的なトレッキングブーツは、カカトが高くつま先へと傾斜。ドロップは10~15mm程あり、筋力の弱いハイカーでも前への推進力を得やすくしています。一方のナチュラル系は概ねドロップが0~6mm。裸足で地面に立ち、裸足で歩く感覚に近づけています。

 

②つま先がルーミー

一般的なトレッキングブーツは、ブレを防ぐという目的で足指を両サイドから締め付けるようなタイトなものが主流。ナチュラル系は、つま先部分がゆったり広々。足指を自在に、そして地面を掴むように動かせ、安定した歩行を促進します。

 

③足裏感覚を重視

厚く硬いアウトソールを装備し、舗装路などではぎこちない歩き方になってしまうこともあるトレッキングブーツ。ソフトなソールのモデルもありますが、ナチュラル系の中にはクッションとなるミッドソールも薄くし、トレイルの凸凹をダイレクトに感じるモデルもあります。これは足裏にあるセンサーを活性化し、凸凹に対応した歩行を可能にするためです。

“ナチュラル系”の何がよいのか?

登山道を歩く人

撮影:PONCHO

筆者は、ナチュラル系トレッキングブーツよりも、もっと裸足感覚に近いベアフットシューズを10年近く愛用しています。

その経験からナチュラル系とベアフットシューズを比べると、ベアフットシューズはソールが薄く、慣れないと長時間歩行はひどく疲れます。凸凹したトレイルでは、足ツボマッサージを受けているような苦行状態になることも。

一方ナチュラル系は、薄いソールのものは硬めのプレートを使用しており、突き上げを軽減。またクッションをしっかり装備したモデルもあり、自然な歩行ができるのに長時間歩行にも対応。ペラペラなソールのベアフットシューズと、ゴツいソールの一般的なトレッキングブーツの間に位置するシューズです。

登山靴を履いて歩く人

撮影:PONCHO

そしてナチュラル系は、サポート性がありながら、、足指を自在に動かせる裸足のような感覚がとてもキモチがいい!!のです。

さらに、足指が動かせると、足を踏み出した感覚、足裏を移動する重心、使われている筋肉の動きに敏感になれます。

そうすると、足をドスンと踏み出していることに気が付いたり、重心の位置によって足の動きが変わることがわかったり、疲れにくい歩き方を想像するようになるから不思議です。

登山靴 足元
冒頭で、「barefoot=裸足に近いスタイルで走る方が、足が本来備えている力を発揮でき、さらにはケガを予防できるとする考え」と紹介しましたが、裸足だから足の力を発揮でき、ケガを予防できるのではありません。

ダイレクトに地面と接触する裸足だから、ケガをしないような動き方、動かし方を考えたり、想像したり、工夫することで、足の機能を知り、ケガをしにくく、疲れにくい、野山に対応した歩き方を身に付けられるのです。

つまり、普段、頑丈なトレッキングブーツに守られて雑になっていた足の使い方を、裸足に近い繊細な使い方に戻すのが、ナチュラル系トレッキングブーツのよいところです。

ナチュラル系トレッキングブーツ3足を履き比べてみた!

最近ではナチュラル系トレッキングブーツが増えてきていますが、山歩きでの履き心地が気になるところ。そこで今回は、代表的な3ブランドのブーツを実際に履いてみました。

試したのはこの3足

[左]ロックライト286GTX [右]エクスカージョン [中]トレイルベンチャーWP

撮影:PONCHO[左]ロックライト286GTX[右]エクスカージョン[中]トレイルベンチャーWP
【1】イノヴェイト/ロックライト286GTX

【2】ゼロシューズ/エクスカージョン
【3】トポアスレティック/トレイルベンチャーWP

 

選んだポイント(3モデル共通)
■ナチュラル系の証、裸足感覚で歩けるゼロドロップ~ロードロップ

 

■冬の低山で寒くなく、トレッキングブーツの基本機能である防水透湿素材採用

 

■山を歩くのにローカットだと不安というハイカーも納得のミッドカット仕様

 

総評から言ってしまうと、三者三様、それぞれにまったく違う性格で、どれも履いていて楽しい!一般的なトレッキングブーツにも、ベアフットシューズにもない、“新しい履き心地”を備えていました。

【1】裸足感覚一歩手前を具現化「ロックライト286GTX」

ロックライト286GTX

撮影:PONCHO
イノヴェイト/ロックライト286GTX CD 

価格:¥20,900(税込み)
ドロップ:6mm
重量:300g(27.5㎝実測値)

 

「クッションの効いた硬いアウトソールのトレッキングブーツから、いきなり裸足感覚のブーツへと変えてしまうと、ストレスの方が大きい」 そう考えたイノヴェイトは、裸足感覚の一歩手前、裸足感覚へと近づけるモデルを用意。

 

このトレッキングブーツもそのひとつで、薄いアウトソールで地面の凸凹を感じますが、カカト部分にはクッションを備え、着地のダイレクト感を緩和してくれます。

トレランで人気のブランドらしさも感じる

ロックライト286GTX アウトソール

撮影:PONCHO

深さ6mmあるラグは、土をよく掴み、濡れた路面でも安心感がありました。今回試した3モデル中でもっとも柔らかいソールですが、グリップが効いて歩きやさは◎。トレイルランニングシューズで知られるブランドだけに、長時間移動に必要な機能性をしっかりと捉えていると感じました。

ロックライト286GTX シューホール

撮影:PONCHO

シューホールはフック等を採用せず、小さな穴のみ。履き口もやや狭く、着脱に手こずる反面、一度シューレースを締め込むと、緩みにくく、細かなフィット感の調節も可能。シューレースは細いのでよく締まり、ほどける可能性が低いのも好感です。

ロックライト286GTX フロント部分

撮影:PONCHO

甲高に対応した新しい木型を採用したそうですが、ワイズはやや細め。10km以上履いて歩いてもアッパーに足が包まれている感覚があって、横ブレしません。ワイズは細いけれども、痛みが出るようなこともありませんでした。

なによりルックスが細身でクール。カラーもシック。山っぽくないトレッキングブーツを探している人にも、強くおすすめです!

イノヴェイト ロックライト286GTX CD

サイズ:25~29cm
重量:約286g(27.0cm)
ソール厚:前足部7mm、踵部13mm 、ドロップ6mm、スタッド6mm

inov-8|ROCLITE 286 GTX CD U

【2】軽い履き心地とダイレクト感がユニーク「エクスカージョン」

エクスカージョン

撮影:PONCHO
ゼロシューズ/エクスカージョン

価格:¥20,680(税込み)
ドロップ:0mm
重量:350g(27.5㎝実測値)

 

「身体を上手に使う」ことを意識できるようになるシューズが、ブランドのコンセプト。

 

ソールは5mmと薄く、カカトとつま先の高さが同じゼロドロップ。クッションは装備されず、しかし硬めにセットされたアウトソールが、地面からの凸凹とした突き上げを和らげてくれます。

 

でも、歩行感はゴツゴツと硬いんです。硬い薄い板を足裏に付けて歩いている感じですが、慣れると足裏感覚が強まります。そして足さばきが軽くなります。不思議な履き心地です。

自然とソフトな歩き方に!

エクスカージョン アウトソール

撮影:PONCHO

ラグの高さは4mm。このラグパターン以上に、アウトソールの素材がグリップ力を生んでいるように感じます。薄くクッションのないアウトソールなので、自然と歩幅が狭まり、ソフトな着地に。そうして、足裏全体をしっかりと使うようになり、グリップの効く歩き方になっていきます。

エクスカージョン シューホール

撮影:PONCHO

シューホールの上2つは金属製のフック。太いシューレースは締め込みやすく、ほどきやすく、しかしゆるむこともありませんでした。ただし上2つのフックの位置が近く、太いシューレースを回すのが少し煩わしく感じました。

履き口にクッションはほとんどありませんが、ベロには厚めのクッションを採用。締め込みの圧力を分散してくれます。

エクスカージョン サイド部分

撮影:PONCHO

つま先部分は丸みを帯びてワイド。足指の自由度は、かなり高いです。シューレースと連動したサイドとカカト部分のストラップが効果的で、ほとんどクッションのない履き口周辺のフィット性を上げています。

アッパーの素材はやや硬く、足指の付け根部分に配された補強素材の当たりがやや気になりますが、履いていると馴染んできて気にならなくなります。

なにより裸足感覚を体験したいハイカーは、コレに限ります!

ゼロシューズ エクスカージョン

サイズ:25~28cm
重量:約340g(27.0cm)
ソール厚:9.0mm(ベース5mm+ラグ4mm)

ゼロシューズ レディース・エクスカージョン

サイズ:22.5~25cm
重量:約272g(24cm)
ソール厚:9.0mm(ベース5mm+ラグ4mm)

XERO SHOES|XCURSIN</aXERO SHOES|W’s XCURSIN

【3】極上のクッションとロードロップを融合「トレイルベンチャーWP」

トレイルベンチャーWP

撮影:PONCHO
トポアスレティック/トレイルベンチャーWP

価格:¥24,200(税込み)
ドロップ:5mm
重量:380g(27㎝実測値)

 

先に紹介したイノヴェイトとゼロシューズの後に、この「トレイルベンチャーWP」を履くと、まるで厚底シューズを履いているようなクッション性を感じます。実際、カカトの厚さは30mmもあり、その感覚は間違っていませんでした。それれはフワフワとした地面を歩いているように感じる程。

 

それもそのはず、採用される同社オリジナルの「ZipFoam」は、クッション材として多くのシューズに採用される従来のEVAに比べて、はるかに弾力性が高いそう。しかもシューズを履きつぶす最後まで、その弾力性は失われないものだそうです。

アウトソールはメガグリップで安心

トレイルベンチャーWP アウトソール

撮影:PONCHO

アウトソールは、ビブラムのメガグリップを採用。ワイドなブーツ形状と相まって、グリップ力は秀逸そのものです。

ただアウトソール厚底で歩行感のフワフワに対して硬め。しかもワイドなソールだからか、岩場等の場所で最初はバランスの取りにくさを感じました。慣れれば問題ないのですが、慣らし履きは必要そうです。

トレイルベンチャーWP シューホール

撮影:PONCHO

シューホールはループと金属製のフックを採用。上から2段目のフックは、締め込んだシューレースを甲部分でロックすることが可能。この機能はかなり効果的で、歩行中にレースがゆるむこともなく、好みの締め込み加減に調整することができます。

ブーツ全体にeVent社の防水透湿素材

撮影:PONCHO

今回は雨の中のテストはできませんでしたが、ブーツ全体にeVent社の防水透湿素材のインナーブーティーを備えた構造で、雨の日の快適性も高そうです。

厚底なので足裏感覚は少ないですが、ゆったりとルーミーなつま先で足指の自在感は最高。さらにロードロップ+厚底といった構成は、これからの時代のトレッキングブーツの方向性を示しているようにも思えました。

ナチュラル系の最初の一足に、ピッタリです。

トポアスレティック トレイルベンチャーWP

サイズ:26~28.5cm
重量:約380g(27cm)
ソール厚:30mm (かかと) 、25mm (つま先)

topo athletic|TRAILVENTURE WP

膝や腰が痛いというハイカーも試してみて!

ナチュラル系トレッキングブーツで歩く

撮影:PONCHO

ベアフットシューズも、このナチュラル系トレッキングブーツも、最初から違和感なく履ける人はほとんどいません。

なぜなら、これまで履いていたシューズ、ブーツでは使っていなかった筋肉や感覚を刺激、これまでとは異なる身体の使い方が求められるからです。だから足慣らし、身体慣らしのため、低山や街から履きはじめるのがよいです。

そうして足と身体と対話しながら歩いていれば、膝や腰の痛みが軽くなるかもしれません。

barefoot=裸足に近いスタイルで歩く利点は、ケガの予防、痛みの軽減にあるのですから。

 

それでは皆さん、よい山旅を!