本当に行けるの!? 最大の難所【第3吊り橋跡】

いくつかある伊藤新道の難所の中で、筆者の心にいちばん深く残っているのは、第3吊り橋跡です。
いや、筆者に限らず、その昔にここを通った登山者も同様だったに違いありません。なにしろ吊り橋跡の近くの岩には、赤いペンキで「引き返す勇気を 雨天時」という文字が書かれているのですから。
こんな場所、伊藤新道ではここだけです。


この場所を初見で通過するのは、難しいでしょう。水量が少なめのときであれば、ガイドさんなどが対岸にロープを渡し、それに沿って渡渉するほうが確実かもしれません。
しかし、このときのガイドの田村さん、そして筆者ともに、伊藤新道の経験者。一目では”行けそうにない”ように見える右岸ですが、この水流でもなんとか通れるのではないかと考えました。
それでも失敗すれば流される心配はあり、ちょっとドキドキしながら水の中に入っていきました。





本格的に沢登りをする人からすれば、大したことがない場所なのかもしれません。
しかし、ここは以前、体を濡らさずに歩ける道がついていた場所なのです。近日中に伊藤新道を本格的に復活させたいと考えている三俣山荘は、エキスパートだけではなく、一般的な登山者にもいずれは歩いてほしいと願っています。
それを考えると、この第3吊り橋跡はもっとラクに通過できる方法を見つけられるとよさそうでした。
沢が広がり、明るい雰囲気に。
【第4吊り橋跡】までくれば、少しは安心。

第3吊り橋の先は、これまでに比べれば、だいぶラクになります。伊藤新道がつけられた湯俣川の渓谷は下流ほど狭い場所が多く、上流のほうが広々としており、圧迫感が薄れるのがうれしいところです。
相対的に危険個所も少なく、ここからはいくらかリラックスして進んでいけるでしょう。



この後、第5吊り橋跡で湯俣川を右岸から左岸へ。これが最後の渡渉となり、「谷」のパートは終了します。そして、そこから先は湯俣川を離れ、「森」のパートに。”ほとんどの人が見たことがない槍ヶ岳の姿”など、これまでとはまったく違う景色が広がっています。
詳しくは、「後編」をご覧ください!