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【緊急レポート】異例の少雪!山から雪景色が消える前に私たちができること(2ページ目)

冬に雪がないということは……登山シーズンにも影響大

夏の白馬大雪渓

出典:PIXTA(白馬大雪渓)

冬に雪が降らないということは、スキー、スノーボードだけに留まらず、これからの登山シーズンへのさまざまな影響が予想されます。

まず頭に浮かぶのは、雪渓の大幅な減少です。山肌や谷間に残る雪渓のサイズは、ハイシーズンの降雪量に大きく左右されます。厳冬期にまとまって降った雪が根雪となるわけです。

雪渓が小さくなれば、それだけ夏山の水場が減ることになります。穂高岳の涸沢のように、山小屋やテント指定地の水場には、雪渓の雪解け水を水源としているところも少なくありません。また、登山道の水場も水量が減ったり、早い時期に枯れてしまうところも出てくるでしょう。

北アルプス黒部源流

撮影:編集部(北アルプス黒部源流)

「白馬大雪渓」のような夏山登山ルートの行方も気になるところです。例年、雪渓は秋が近づくにつれサイズが全体的に減少し、厚みが減ったり、クレバスが開いたりと、登山道としては非常に危険な状態になります。この夏はそうした時期がかなり早まることが現実味を帯びてきました。

人間だけでなく、動物などの生態系にも影響が

熊出没注意

出典:PIXTA

さらに、全国的に懸念されているのは生態系への影響です。しばらく前から北アルプスの稜線近くでイノシシが目撃されるようになっています。サルやシカ、クマの生息域にも変化があるといいます。稜線に咲く高山植物やハイマツに隠された雷鳥の卵は、彼らにとって格好の餌です。里山に生息する野生動物が高山に出没するようになったは理由は、生態系の変化などいくつか考えられるようですが、山岳地帯の気温上昇も無縁ではないでしょう。高山の寒さがやわらげば、稜線付近でも行動しやすくなるはずですから。

北アルプスの麓、白馬村が動き出した!

こうした気候変動の問題に対して、全国の山岳エリアのなかでもいち早く動き始めたのが、長野県北部の白馬村です。北アルプス後立山連峰の麓に位置し、標高3,000m近い山々が屏風のように連なる山岳景観で知られるこの村は、夏は登山基地として、冬はスキーエリアとしての歴史も古く、1998年には長野冬季オリンピックの開催地にもなりました。

HAKUBA-VALLEY概要

最近では、ダイナミックな地形と豊富なパウダースノーが世界中に知られるところになり、毎年、海外から多くのスキーヤー、スノーボーダーを集めています。また、隣り合う大町市、小谷村を含めた3市村に位置する大小10スキー場が「HAKUBA VALLEY」の名の下で提携することで、国際的な山岳リゾートとしての足場を築きつつあります。

未来を担う白馬高校の生徒たちが先導役に

グローバル気象マーチ

提供:facebook/Hakuba SDGs Lab

そうした観光に重きを置いた自然豊かな村で、最初にアクションを起こしたのは、地元白馬高校に通う高校生を中心とした有志たちでした。それが2019年9月20日に開催された「グローバル気候マーチin白馬」です。

これはスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんの活動に共感する人たちによる「グローバル気候マーチ」に呼応するもの。国連気候変動サミットに向けての気候変動対策を求めたメッセージとして世界181カ国で760万人が参加し、日本でも全国27カ所で5000人以上が参加したといわれています。

当日の白馬ではマーチを企画した高校生を先頭に、子どもから大人までの約120名が村内を行進。途中、白馬村役場では、出迎えた職員や議員、村長らを前にメッセージを伝え、白馬村として気候非常事態宣言を行うことを求めた署名を白馬村村長に手渡しました。
白馬高校の生徒から署名を渡す

提供:facebook/Hakuba SDGs Lab

それから3カ月後の昨年12月に、白馬村は「気候非常事態宣言」を表明します。

「白馬村気候非常事態宣言」からの抜粋

1 「気候非常事態宣言」により、村民ともに白馬村から積極的に気候変動の危機に向き合い、他自治体の取り組む模範となります。
2 2050年における再生可能エネルギー自給率100%を目指します。
3 森林の適正な管理による温室効果ガスの排出抑制に取り組むこと等により、良質な自然循環を守ります。
4 四季を肌で感じることができるライフサイクルや、四季を通じたアクティビティの価値観を、村民一人ひとりが大切にします。
5 世界水準のスノーリゾートを目指すために、白馬の良質な「パウダースノー」を守ります。

白馬村の気候非常事態宣言は、国内の自治体としては3番目にあたるもので、長崎県壱岐市が日本で初めて気候非常事態宣言を採択してから、わずか2カ月半ほどのこと。同じ月には長野県も続き、現在では2県、7市町村に広がっています。なぜ、白馬村は国内の山岳エリアでもいち早くアクションを起こしたのでしょうか。

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