集まったのは今回の研修に声掛けをしてくれたPRチームの鰐渕さんのほか、日本でのブランディングを先頭で担っているプロモーションチームと、ザ・ノース・フェイスのOBである太田さんと伊藤さんを含め現在はガイドとして活動している3名。

ザ・ノース・フェイス プロモーションチームのメンバーにお伺いしました
ザ・ノース・フェイスブランドを背負い、誰よりも考えてきた錚々たるメンツ。
男だらけの夜の山小屋で聞いた、ブランドにかける思いと本音はいったいどんなものだったのでしょう?
聞き手:YAMA HACK編集部 青柳喬・草替萌波
そもそも、一般的にザ・ノース・フェイスのイメージって?
インタビューの前にまずお見せしたいのが、YAMA HACKのInstagramフォロワーに聞いた2つの質問の結果です。
①「ザ・ノース・フェイス」って、ガチ登山ブランド?おしゃれブランド?
②「ザ・ノース・フェイス」の人たちに聞いてみたい事

作成:YAMA HACK編集部
6000人以上の読者から得られた結果は、なんと78%が「オシャレブランド」のイメージ。一般よりも登山をしているYAMA HACKのフォロワーでこの数値。実際にはもっと多いと予想できます。
個別にいただいた質問の内容も
「社員の人は登山するんですか?」
「ガチ登山とオシャレ路線、どっちに行きたいんですか?」
「社員の人はオシャレとガチ登山、どっちのブランドだと思っているんですか?」
といったものがちらほら。

撮影:YAMA HACK編集部(これには一同興味津々!)
やっぱそういう風に見られてるかぁ~。
まぁ実際にファッションブランドとコラボとかしてるからそういう風に思われるのはしょうがない部分もあるかもしれませんね。
ここまでダイレクトな意見が集まってるのはスゴい…。
実はほかのブランドのアンケートだと、ここまで「
本当に山登ってるの?」という質問は多くないんです。
ファッションのイメージが強いだけにそういう印象を持たれているかもしれません。
個人的な憶測で恐縮ですが、登山だけでは市場規模が小さいので、ファッションの方にも手を伸ばさざるを得ないのかな…というある種の葛藤があるんじゃないかなと思っているのですが。
いや、そうじゃないんですよ。
僕らが目標としているのは“機能を日常化する”ってことなんです。
登山ウェアってハイスペックじゃないですか。それを日常に落とし込んだら、日常でも快適に過ごせるだろうと思っていて。
あくまでも、アウトドアで培ってきたノウハウを街着に落としてるだけなので。だから、ファッションありきで話が独り歩きさせるようなことはないですね。

撮影:YAMA HACK編集部
なるほど。
でも、とはいえ、事実として売り上げベースで見たらファッション系のお客さんの方が上なのでは・・・?
ほぼ全部とは言わないですが、実際に割合が多いのは事実です。そもそもアウトドア人口が少ないので、これはしょうがないですね。アウトドアが盛んな他国であれば少しは違うんでしょうけど。
ただ、だからといってその流れに迎合していくつもりは全くないですね。
購入されたお客様がそれをどう使うかは僕たちでは指定できませんからね。完全に登山用のウェアをファッションとして着る方もいる。もちろん、
ファッションとして着るのがNGだなんて全く思っていません!でも、お客様が購入するシーンにおいては、その商品がどういうものなのかをきちんと伝えることが大切だと思うんですよね。それができてないと「このジャケットはストリートでもイケますよ」くらいしか言えなくなっちゃうので。

撮影:YAMA HACK編集部
もともと、ファッション向けに作ったわけじゃなかったのですが、それを「ファッションとしても使える」と広まったわけだしね。僕らもそこを否定することはできない。
だからこそ自分たちは「ガチ登山ブランドでありたい」ですね。
でも、最近はファッションブランドともよくコラボしていると思いますが、それはどういう目的でやってるんですか?
ありがたいことに「ザ・ノース・フェイスは売れてる」とか「人気」って言ってくれる方は多いけど、
コアなファッションに興味がある人にはまだまだザ・ノース・フェイスのことを知らないと思うんです。
ブランドは知ってても、機能的な部分とか、そういうところを知らない人たちに僕らがリーチするのは難しい。
だから、そういったファッションブランドとコラボすることでブランドそのものや本質的な機能性をリーチするためにやってますね。
登山者以外にも広く知ってもらうため、という感じでしょうか?
登山者以外というか・・・最近で言うと、ビームス様とのコラボとかがいい例なんですけど、もともと次世代を担う方々にリーチしたいということで始めたんですよ。
アウトドアに触れていない次世代を担う方々を、山に連れていきたい

まだアウトドアに触れていない次の世代を担う方々をアウトドアフィールドに呼び込むことを一つの目的としてやってるんです。
ビームス様のブランドファンの方々が、私たちがアウトドアに触れてをやってほしいと思っている方々とマッチしているんですよね。
だから、ビームス様のお客様もザ・ノース・フェイスをアプローチして、「それ、アウトドアフィールドでも使えるんだよ」っていうことに気づいてもらう流れが一番いいと思って始めたんです。
確かに、若い人に知ってもらうにはビームスとのコラボはうってつけな気がしますね。
ただ、商品を作るだけだと「コラボアイテムが出た」だけになっちゃうので、それを
連動させて受け皿となるイベントをやってます。
多くの方々に「みなさんの使っているザ・ノース・フェイスの服はそのままアウトドアで使えるんですよ」って気づいてもらいたいんですよ。
たしかに、「ファッション用に買ってみたけど実はそれ、山でも使えるんだよ」という商品を出しているのって、よく考えたら本当にすごいことだと思いました。
これまでは登山なら登山用、街なら街用として販売されてたものが、どっちで着ても機能的でおしゃれって最高じゃないですか。何着も買わなくていいわけですし。
そういう文化を作ってここまで来ていることが驚きです。

撮影:YAMA HACK編集部
手前味噌ですが、それをずっと狙ってきましたからね。あとは、お客様が参加するイベントですね。
年中いろんなイベントやってますよ。今年の冬は
スノーマウンテンというイベントをやりました。
スノーシューやクロスカントリーの体験ツアーをやったんですけど、「行ってみたら凄く楽しい!」っていう声をたくさん頂いたんですよ。
ただ、「参加したら絶対に楽しんでもらえる」というのは自信があるけど、来てもらうまでがやっぱり難しいですね。
行ったことがないから距離のイメージすらよくわからず、わざわざ行くのもねぇ・・・って感じで腰が重くなってしまうんですかね。
それはあると思います。今は20人とか30人の小規模でやってますが、地道に口コミで広がっていけばいいなと思ってます。
大規模なイベントをしたり、たくさんの人を山へ向かわせるイベントをやったりはしないんですか?
どうしても大きなイベントだと、その分一人一人が見えなくなっちゃうんですよね。3000人のイベントやったとして、終わったときに僕らが参加者の顔を全員覚えてるかっていうと無理なわけで。それは本当にいいことなのか?って不安になる。
逆に大きなブランドだからこそ、小さなこともしっかりやっていくってのが大事なんじゃないかなと思っています。
良質な関係性を作っていくにはむしろ小さい規模のほうが効果的ってことですね。

撮影:YAMA HACK編集部
人数の話が出たけど、自分もガイドでたくさんのお客さんと会ってきたけど、仮に一年間ガイドをしたとしてもせいぜい200人、実際には50人弱くらい。
冷静に考えると、意外と少ないんですね・・・!ガイドを依頼するのはみんな違う人ですか?リピーターもいたりするんでしょうか?
色んな人がいてとてもありがたいことだけど、その中でも一定数は何回もガイドをお願いしに来てくれる人がいるんだよね。
「上田さんに会いたい」「上田さんと山に行きたい」っていう人がいるんだろうね。お客様とちゃんと関係を作っていくってのはそういうことなんだろうね。それはもちろん我々の活動も一緒。
Q:社員は登山をしているの?