3.世田山~笠松山(愛媛県)|瀬戸内海と石鎚山の間にある名低山

愛媛県今治市と西条市の市境にまたがる世田山(せたやま・339m)は、尾根伝いに笠松山(かさまつやま)まで歩くコースがとにかく最高です。ここからの眺めを初めて目にしたのは真冬のことで、青い瀬戸内海と白い石鎚連峰のコントラストに感動もひとしお。地図と照らし合わせながら地形や海岸線、そして町の様子を、時を忘れて眺めていました。やはり暮らしたことのない土地の風景は、とても興味深い!
世田山は、山頂に至る手前にある展望スポットがすばらしい。巨岩に乗って見渡すのは真っ白な石鎚連峰の展望で、かなり立派な山容です。むかし石鎚山に登ったなあとか、あっちの山はなんだろうとか、見慣れない風景から山座同定するのが楽しいんですよね。

笠松山は357mの山で、広島県の尾道市との境にある島々の眺めに秀でています。そう、自転車好きにはよく知られた「しまなみ海道」でつながる風光明媚な島々です。さっきあそこを渡って来たなあとか、ふもとの低い山並みはなんだろうとか、これまた見慣れない風景と地図を見比べるのが楽しい。笠松山の山頂には小さな観音堂があるので、隅っこに腰かけさせてもらいながら、ゆっくり過ごしてください。
世田山も笠松山も、かつては山城が築かれていました。地形的に見晴らしがよく、敵襲に備えるのに好立地だったのでしょう。南北朝時代から室町時代にかけて、戦の舞台ともなった低山なのです。山城ファンなら、どう守り、どう攻めるか。そんな視点で歩くのもまた、低山らしい楽しみ方です。
おすすめコース

コース概要
世田薬師バス停(10分)→世田薬師(60分)→世田山(30分)→笠松山(30分)→世田山(35分)→世田薬師(5分)→世田薬師バス停
4.黒髪山(佐賀県)|西日本最強の呼び声高いオールラウンド低山

国土の七割近くが山地である日本ですから、実態としては把握しきれないほど無数の低山が存在します。そんななかでも印象深い低山はいくつかあります。たとえば佐賀の黒髪山(くろかみやま)は、その筆頭候補から外れません。
佐賀県武雄市と有田町にまたがる黒髪山は、標高516mの低山です。肥前耶馬渓とも称される特異ないで立ちの山であり、その険しさは修験道の行場だったことをいまに伝えています。そこかしこにある岩場と鎖場はダイナミックで、全身を駆使して登るタイプの低山の楽しさに目覚める人も、きっと多いはず。

コースはいくつもあり、山中には岩屋があったり、滝があったり、巨岩に登ったりと、見どころ満載。しかも山頂からの大展望は一見する価値ありです。とくに冬はすっきりした大展望が期待できるとともに、九州の低山らしく早春の空気を先取りして味わえるのも嬉しいポイント。
植物もまた面白い。黒髪山カネコシダは、明治37年(1904年)にこの地で発見されたもので、のちに植物学者・牧野富太郎が発見者の金子保平から名をとって命名。国指定の天然記念物です。
ところで、珍しい山名の由来をひも解くと、諸説あるようです。イザナギノミコトが黄泉国から逃げ帰るときに投げた黒髪がここにきた神話説、神(カミ)の宿る座(クラ)が転訛してクロカミとなった信仰説など、さまざま。いずれにしても、自然美あり、植物あり、歴史あり、信仰あり、そして絶景ありのオールラウンドな低山。楽しくないわけがありません。
おすすめコース

技術的難易度: ★★★☆☆
・ハシゴ、くさり場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
凡例:グレーディング表
コース概要
竜門峡キャンプ場(60分)→見返峠(5分)→雌岩(35分)→黒髪山(5分)→蛇焼山(15分)→後の平(45分)→竜門峡キャンプ場
冬の低山で夏山に備える!

のんびり歩きたい冬の低山ですが、この季節の間に工夫して歩いておくことで、来たる夏山に向けた課題の洗い出しや効能を期待できます。たとえば、こんな具合に。
少し長めのコースで山行計画を立ててみる。長い距離を歩く習慣をつけることで、自分に合った休憩のとり方を把握でき、山歩きのペース配分を定着させることができます。持続的に運動をし続ける筋力と心拍のトレーニングにもなり、いいことだらけ。
少し重めの荷物を背負って歩いてみる。とくにテント泊縦走に向けたトレーニングには最適です。ぼくは大型のザックに20kg程度の荷物を詰め込んで、いわゆる郷土アルプスと呼ばれる低山の連なりを歩いたりします。足腰も強くなるし、加重を分散するパッキング術や、すみやかな荷物の出し入れの訓練にもなるし、いいことだらけ。
少し遠くの低山に出掛けてみる。まだ見ぬ風景と見知らぬ風土を求めて歩き旅をすることは、シンプルに楽しいものです。山頂にはこだわらず、ふもとの町や街道を歩くこともまた、めちゃめちゃ楽しい。旅心が磨かれて、教養も身に付き、いいことだらけ。
そんなわけで、低い山とはいっても得られるものはとても大きく、楽しみ方は自分次第です。より高いところを目指す垂直志向な登山者もいれば、より遠いところを求める水平志向のハイカーもいます。山の楽しみ方は、人それぞれ。自分は自分の山を歩く、それが一番ですね。
